【第6話・孵化①】
『びぃ』
莉乃の耳に届いたそれは新しい命から発せられた産声。
蹴破った『卵』の殻とほぼ同じ大きさの身体。
色白の肌色で大きな大豆の様な見た目の胴体。
その体にやたらと細い蛙の脚がくっついている。
(可愛い……でも、頭もないし目もない)
(口は多分……身体の先に小さく付いているあれかな?)
莉乃はもちろん、優秀な弟の英人ですら見た事がない未知の生物。
『びぃ……』
もう一度、鳴いた。
口の上の小さい穴をパカパカと何度か動かしたあと、くるりと向きを変え、莉乃の方を向いた。
そして震えながら右脚を一歩前に出した。
もしも他人が見たら全く可愛くない*****
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