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藤子は大きなルイヴィトンのスーツケースをひきずってアパートの階段から降りた
外に出て、駅までタクシーを拾おうとしたら、歩道をふさぐように駐車してあるガンメタのマセラティを見つけた、そしてハッとした、文也がマセラティに寄り掛かって自分を待っていた
思わず驚いて脚を止めた、どうして家が分かったんだろう?彼はすっきりとしたデニムの半袖シャツに白のダメージジーンズを履いていた、とっても素敵だ
木の下に立っているので木陰が上手く早朝の夏の日差しを遮っている、途端に胸がときめき、鼓動が跳ね上る
「空港で待ち合わせしてたから、ここで会えるとは思っていなかったわ」
彼はスーツケースを引きずって歩いてくる藤子を見つめていた
「車で空港まで行こうと思ってね、どうせなら藤子ちゃんも乗せて行こうと思って、面倒なヤツだと思われてないといいんだけど」
絶対に彼を面倒なヤツなんて思っていない、藤子は彼に歩み寄った
「ここに立っていたなら暑かったでしょう?いつ私が降りてくるかわからないのに?」
優しい声で言う、文也は自分の車を示した
「実はついさっき着いた所なんだ、君がそのバカでかいスーツケースを引きずってアパートの階段を下りてくるのが見えた、たしか1泊じゃなかった?家出でもする気?」
文也がブハハっとスーツケースを藤子から受け取って笑った、文也が解除ボタンを押すと、マセラティのハザードランプが点滅した、文也は藤子の手を取って、その車高の高い車に乗せ、シートベルトのバックルを止めてくれた
途端に、心地良い冷房の冷たい空気が藤子を包んだ
―ああ・・・涼しい―
座席にゆったりと沈み込み、手入れの効いた革の匂いを嗅いだ、運転席の小型飛行機さながらに計器がいっぱいついた、ダッシュボードや大きなルームミラーを眺める、エアコンの通風孔は自動で左右に動いている
彼がトランクに藤子のスーツケースを乗せて運転席に座ると、その長い脚と長身でシートがいっぱいになった
助手席の前に随分余裕のある藤子は、シートに座り直してエンジンをかけて運転する彼をうっとりと見つめた、まっすぐ前を見ながら視線はあちこちのミラーを見渡している
「空港についたら―」
「あん、こっち向かないで、まっすぐ前を見て、運転してる横顔が素敵だから見ていたいの」
藤子は滑らかなイタリア製の皮張りのシートに膝をついて、文也をじっと見て言った
ブハッ「なんだそれ」
「こっち見ちゃダメだってば」
「ハイハイ」
彼はフロントガラスの向こうを見つめ、ほほ笑んでいる
―うーん運転している彼は素敵だ、なんだかこの旅行が楽しくなってきた―
.:・.。. .。.:・
大韓航空機の通路を挟んだ窓際に、藤子を案内すると、文也の緊張はにわかに高まった
ゆうべはよく眠れなかった、彼女の夢を見ては汗にまみれて胸を高鳴らせて目を覚ます、朝方までその繰り返しだった
入国申請書と検疫事前入力のQコードを入力しながら、横に座る彼女を見る・・・今日の彼女はいつものオフィスの服装じゃなく、リゾート仕様でとても可愛い
白のワンピースに可愛い麦わら帽子、三つ編みをしている髪の中で金色の輪っかのピアスが覗いている、素足に厚底サンダルを履いたその先から、見え隠れしている桜色の爪は、手と同じ色でとてもかわいらしかった
彼女がシートに腰を下ろす時にほのかに甘い香りが漂った、文也は体をそちらへ傾けてもっと深くそれを吸い込みたかった、もちろんそんなことはしなかったが、これでは先が思いやられる
コメント
1件
第44話、読みました!文也さんのサプライズお迎え、かっこよすぎますよ…!マセラティに寄りかかって待ってる姿、もう完璧な王子様じゃないですか。藤子さんが「運転してる横顔が素敵だから見ていたい」って言うシーン、すごくときめきました。あと、機内での文也さんの「香りをもっと吸い込みたいけど我慢」って心情、CEOなのに純情で可愛すぎます。旅行編、とても楽しみです!