「合わないって、私にはこんなの……」
ゆるゆると首を振り、アミの手に服を返す。
「どうしてよ? 美都はスラッてしてるし、こういうワンピースとか綺麗に着こなせると思うけど」
「そんな、こと……」布地のパステルブルーの色合いが、ミコのイメージカラーを連想させる。だからこそ、自分には可愛すぎて似合わない気がして、ためらいしかなかった。
「絶対に合うから。美都が着たら、すごく可愛いと思うよ」
「可愛い……の?」
その言葉に、敏感に反応してしまう自分がいる。
「うん、可愛い!」
アミは即答で返して、「あんたが買わないなら、私が買ってあげるから」と、もう一度その服を私の胸に押し当てた。
「……。……そこまで言うなら、買うよ」
押し当てられたワンピースを両腕に抱えると、リネンの柔らかな風合いが肌に伝わった。
──帰宅をして、買ったワンピースを袋から取り出すと、全身を映す姿見の前で合わせてみた。
似合うかな……私に。身体に当てて、くるっと回ってみると、ワンピースの裾がふわりと舞った。
可愛いな……。
──矢代チーフも、そんな風に思ってくれるかな?
服をぎゅっと抱きしめて、鏡の前にしゃがみ込む。
いつか、このワンピースを着て、二人で歩きたい──。
ふとした瞬間によぎる想いに、私ったらいつの間に彼のことばっかり考えるようになっちゃったんだろうと思う。
仄かに火照る顔を、ワンピースにぽふっとうずめると、抑えられない恋心が胸を込み上げるのを感じた……。
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