テラーノベル
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部室に流れていた張り詰めた空気を和らげるように、信愛は柔らかく微笑んだ。
「まず名前を教えてくれる?」
男子生徒は小さく頷き、緊張した面持ちのまま答える。
「は、はい・・僕は一年の浦添朝陽と言います」
「浦添くんね」
信愛は優しく頷くと、自分の胸に手を添えた。
「私は白縫信愛」
続いて茜が笑顔で手を挙げる。
「私は菅生茜」
さくらも軽く会釈する。
「私は花牟礼さくら」
最後に焔垂が親指で自分を指した。
「俺は八乙女焔垂、みんな2年だ」
朝陽は恐縮したように頭を下げた。
「は、はい・・よろしくお願いします」
信愛は改めて朝陽へ向き直る。
「で、ポスターを見て来たって事は
心霊現象に悩んでるって事でいいの?」
朝陽は少し考え込むように視線を落とした。
「まあ、心霊現象かどうか
定かじゃ無いんですけど・・・」
一度言葉を区切ると、小さく息を吸う。
「最近、夜中になると女性の声が
聞こえてきて、全然眠れなくて・・・」
「女性の声ね・・・」
信愛は腕を組みながら静かに頷く。
すると茜が興味津々といった様子で身を乗り出した。
「その女性は何て言ってるの?」
朝陽は困ったように眉を寄せる。
「何に対して言ってるかは
全然分からないんですけど・・・」
少しだけ目を伏せ、小さな声で続けた。
「『私は朝陽を愛していた』」
部室の空気がわずかに静まる。
朝陽はさらに言葉を重ねた。
「『私はやってない』」
そして最後に、どこか切実な響きを帯びた声で呟く。
「『信じて』って・・・そればかりを口にするんです」
信愛は考え込むように目を閉じた。
「うー・・・ん」
やがてゆっくりと口を開く。
「それだけじゃ霊の仕業かどうか判断できないね」
少し間を置き、朝陽を見つめた。
「けど、その女性は浦添くんの
名前を口にしてるんだね?」
「は、はい・・・」
朝陽は力なく頷く。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
信愛はさらに質問を続ける。
「なら知り合いとかかな?
知り合いの中に亡くなった人は居る?」
朝陽は腕を組み、記憶を辿るように天井を見上げた。
「亡くなった人・・・」
しばらく考えた末、小さく首を振る。
「うー・・・ん、特に思い当たらないです」
「そっか・・・」
信愛は静かに相槌を打った。
すると朝陽は、少し迷いながらも続ける。
「でも、その女性の声を聞くと──」
言葉を探すように視線を泳がせる。
「何と言ったらいいか分かりませんけど・・
不思議と心が休まる気分なって・・・」
頬をわずかに微笑みながら呟いた。
「優しく抱きしめられてる様な気分になるんです」
「なるほどね・・・」
信愛は真剣な表情で頷く。
その横で茜が新たな疑問を口にした。
「てか朝陽くんは家族と住んでるんだよね?」
「は、はい・・・」
「僕と母の二人暮らしです」
「他の家族はその声について何か言ってないの?」
その質問に、朝陽の表情が曇る。
「それが・・・」
言い淀む朝陽を見て、信愛が優しく声を掛けた。
「ん?どうかした?」
朝陽は覚悟を決めたように顔を上げる。
「その女性の声は、どうやら
僕にしか聞こえてないっぽくて」
「浦添くんにだけ聞こえる女性の声か」
信愛は静かに呟き、しばらく考え込んだ。
やがて朝陽が不安そうな表情で尋ねる。
「これってやっぱり霊なんですかね?」
信愛はすぐには答えず、慎重に言葉を選んだ。
「うー・・・ん、そうだな・・・
霊が特定の人間にメッセージを
伝えるって事はよくある話だけど」
信愛真っ直ぐ朝陽を見つめる。
「今の会話だけじゃ霊の仕業だと断言は出来ないかな」
茜が腕を組みながら朝陽へ視線を向けた。
「なら直接現場を見てみたら?それが早く無い?」
茜の提案に、信愛も納得したように微笑んだ。
「まあ、確かにそれが手っ取り早いよね」
すると、さくらが静かに口を開く。
「その声の主が霊なら、信愛に視える筈だし」
焔垂も腕を組んだまま頷いた。
「確かにそれが確実だよな」
朝陽は不思議そうな表情で首を傾げる。
「あの・・・白縫先輩なら視えるって
それどう言う意味ですか?」
信愛は照れくさそうに頭を掻きながら笑った。
「あ、私ね、霊感があって霊視ができるの」
その一言に、朝陽の目が大きく見開かれる。
「えー!?本当ですか!?」
驚きはそのまま感動へと変わっていく。
「同じ学校にこんな凄い人が
居たなんて感動ですっ!」
その純粋な反応に、信愛は思わず吹き出した。
「ふふふ、大袈裟だよ」
笑みを浮かべたまま、信愛は話を本題へ戻す。
「なら現場を見てみたいから
近いうちに浦添くんの家に行ってもいいかな?」
朝陽は迷うことなく力強く頷いた。
「は、はい!」
「いつなら都合いいかな?」
信愛の問いかけに朝陽は少し考える。
「そうですね・・今週の土曜とか大丈夫ですかね?
あ、でも、休みの日にわざわざ来てもらうのは」
「ふふふ、気にしなくていいよ」
信愛は朝陽の謙虚さに微笑む。
「あ、ありがとうございます」
朝陽は照れたように頭を下げる。
「私は土曜は予定ないからいいけど
みんなは?土曜予定入れてある?」
信愛の問いかけに3人は首を横に振る。
「大丈夫、予定ないから!」
「なら決まりね、土曜日に浦添くん家に集合ね」
コメント
1件
**はる。だわ。** うわ、新キャラ・朝陽くん登場! しかも「愛してた」「やってない」「信じて」って、なんか重めのワード連発で一気に引き込まれたわ。本人には覚えがないけど、声聞くと安心するってのもミステリーすぎる。信愛先輩が霊視できるって明かしたシーン、朝陽くんの「感動ですっ!」がめっちゃ純粋で笑った。土曜の現場調査、どうなるんだろう。次話も楽しみにしてる🔥