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#闇バイト
るしゅ
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土橋真二郎
215
『警察に行くな』
震えた字だった。
走り書き。
急いで書いたような文字。
俺は紙を握りしめたまま倉庫を出た。
振り返る。
さっきの女の子はもういない。
参加者も次々と帰っていく。
まるで何事もなかったみたいに。
俺は紙をポケットへ押し込んだ。
考える。
どういう意味だ。
警察は最後の頼みじゃないのか。
なのに。
「行くな」
……なぜ。
午後六時。
駅前。
コインロッカー三一七番。
人通りは多い。
学生。
会社員。
買い物帰りの家族。
誰も俺なんか見ていない。
それでも。
見られている気がした。
暗証番号を入力する。
ガチャ。
ロッカーが開く。
中には黒い紙袋が入っていた。
持ち上げる。
軽い。
まただ。
妙に軽い。
俺は周囲を見回す。
誰もいない。
紙袋を抱えたまま帰宅した。
部屋に入る。
玄関の鍵を閉める。
チェーンも掛ける。
深呼吸。
スマホを見る。
新しい通知。
【開封してください】
俺は紙袋を見る。
嫌な予感しかしない。
でも。
逆らえない。
ゆっくり口を開く。
中には。
小さな箱。
その中には。
スマートフォンが一台。
電源は入っていた。
画面にはロックが掛かっていない。
ホーム画面には。
アプリが一つだけ。
『記録』
俺は恐る恐る開いた。
動画一覧が表示される。
一本。
二本。
三本。
一番上の日付は昨日。
再生した。
映像が始まる。
薄暗い部屋。
固定カメラ。
椅子。
そこへ。
誰かが連れてこられる。
俯いた男。
見覚えがあった。
昨日。
教育映像に映っていた男だった。
映像の中で男は何度も言っていた。
「すみません」
「もうしません」
「家族には……」
そこで映像は終わった。
俺は慌てて閉じた。
心臓が暴れている。
これは何だ。
誰が撮った。
何のために。
その時だった。
コンコン。
玄関をノックする音。
身体が固まる。
時計を見る。
午後七時四十分。
こんな時間に誰だ。
「神谷さん」
女性の声だった。
「宅配便です」
俺はドアスコープを覗く。
配達員。
制服も着ている。
普通の宅配業者に見える。
でも。
その瞬間。
スマホが震えた。
例のアカウントから。
【絶対に玄関を開けないでください】
俺は息を止めた。
どういうことだ。
宅配業者なのか。
違うのか。
外では女性が言う。
「お荷物です」
俺はドアノブに手を掛けたまま動けない。
開ければいいのか。
開けちゃいけないのか。
どっちなんだ。
静寂。
数秒後。
足音が遠ざかっていく。
そして。
スマホに最後の通知が届いた。
【正しい選択です】
俺はその場に座り込んだ。
安心した。
……はずだった。
玄関の郵便受けから。
一枚の紙が音もなく滑り込んできた。
恐る恐る拾う。
そこには。
赤いペンで。
たった一行だけ。
**『そのスマホを見続けると、次はあなたです。』**
俺は反射的に部屋の奥を見る。
さっきまで机の上に置いていたはずのスマートフォン。
そこには……
なかった。
(第十七話へ続く)
コメント
1件
「正しい選択」と言われてホッとした直後に、スマホが消えてるの、本当に背筋が冷えました……。あの『そのスマホを見続けると、次はあなたです』の一文、ぞわっとする不気味さがある。しかも、「宅配業者」が来たタイミングで「開けるな」の通知が来る絶妙な流れ、製作者側が主人公の行動を全部見てる感じがして、何より恐ろしかったです。16話、見事な引きでした。続きが気になりすぎます!