テラーノベル
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机の上にあったはずだ。
さっきまで。
間違いなく。
俺は立ち上がる。
机の下を見る。
床を見る。
ソファの隙間。
キッチン。
バッグの中。
ない。
どこにもない。
「なんで……」
自分でも分かるくらい声が震えていた。
玄関の鍵は閉まっている。
チェーンも掛けたままだ。
窓も閉まっている。
誰も入れるはずがない。
なのに。
スマホだけが消えていた。
夢でも見てるのかと思った。
頬をつねる。
痛い。
現実だった。
その時。
ピロン。
俺のスマホが鳴る。
例のアカウント。
【余計な物は回収しました】
息が止まる。
回収。
やっぱり。
誰かが部屋にいたのか。
それとも最初から……。
考えれば考えるほど分からなくなる。
翌朝。
ほとんど眠れないまま家を出た。
母さんの病院へ向かう。
顔を見たかった。
ただ、それだけだった。
病室の前で深呼吸をする。
ドアを開ける。
「悠真」
母さんが笑った。
その笑顔を見た瞬間。
力が抜けた。
「ちゃんと食べてる?」
「まぁね」
嘘だった。
最近まともに食べていない。
「顔色悪いよ」
母さんは心配そうに俺を見る。
いつもそうだ。
自分の身体の方が大変なのに。
俺のことばかり。
「大丈夫」
そう言って笑う。
下手くそな笑顔だったと思う。
母さんにはバレていただろう。
帰り際。
母さんが俺を呼び止めた。
「悠真」
振り返る。
「変な人にはついて行っちゃダメだからね」
一瞬。
心臓が止まった。
「……急にどうしたの?」
母さんは少し困ったように笑う。
「昨日ね」
「病室の前に知らない男の人が立ってたの」
全身から血の気が引いた。
「看護師さんが声を掛けたら、すぐ帰ったんだけど」
俺は笑えなかった。
言葉も出ない。
昨日。
俺は病院には来ていない。
じゃあ。
その男は誰だ。
病院を出る。
外は雨だった。
傘も差さず歩く。
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
母さんまで。
巻き込まれてる。
その時。
ポケットの中でスマホが震えた。
【本日の案件は中止です】
初めて見る通知だった。
中止?
理由は書かれていない。
代わりに。
その下へ新しい文章が表示される。
【参加者番号42がルール違反を確認】
42。
どこかで見た番号。
俺は思い出す。
倉庫で表示されていた参加者一覧。
42。
あの帽子を深くかぶった女の子だった。
俺は立ち止まる。
雨が強くなる。
そして最後の通知。
【処分を開始します】
画面を見たまま。
俺は動けなかった。
「処分」って……。
どういう意味なんだよ。
(第十八話へ続く)
コメント
1件
最後の「処分」って言葉、すごく重かったです…。スマホが消えた時点でゾッとしたのに、まさかお母さんの病院の前に男が立ってたなんて。悠真くんが誰を信じていいのか分からなくなる気持ち、痛いほど伝わってきました。雨の中、傘も差さずに歩くシーンが目に浮かんで胸が苦しいです。次が待ち遠しいです…!
#闇バイト
るしゅ
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土橋真二郎
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