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「ほら早く!!!」
言われるがまま、私達は教室から脱出したが、クローバーの女が簡単に逃がしてくれるわけはない。
植物の触手がこちらに伸びてくる。
「きゃあっ!!!」
春子が掴まれる。
「あっ…!!春子!!」
私は立ち止まって助けに行こうとしたが、それより早く仮面の人物が走る。
「その子を離せ悪党が!!!」
何も無いところから巨大な弓を生み出し、クローバーの女の目を貫く。
間違いない、仮面の人物は能力者だ。
「がぁっ…!」
クローバーの女が悶えた時、触手が春子から離れた。
私は春子の手を取って走り出した。
しかし、代わりに仮面の人物に能力による鎖が巻かれていた。
クローバーの女のデバフだ。
「逃がしませんよ。」
目がすっかり治っていた、再生が早すぎる。
「あのっ…!」
「早く行って!!私は戦えるから!」
「奈緒ちゃん行こっ…!死んじゃうよ!」
「っ…」
「早く行け!!!」
仮面の人物が戦闘態勢を整えながら言う。
私は春子を連れて走った。
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私達7人は、学校の近くの商店街の路地に入った。
逃げている間、いくつも死体を見た。
ぐちゃぐちゃに切り裂かれていたり、潰されていたり、中には人同士で殺しあったり自殺した死体もあった。
生存者なんて一人もいなかった。
「ゔっ…ゔおぇえ…」
香織が嘔吐する。
全員疲れ切っていて能力を出す気力も無い。
「あそこに入ろう、まず休まないと何も始まらない」
内田さんが薬局を指さす。
全員で中に入るとやはり人はなく、静かだった。
春子の腕には触手によってできた切り傷があった。
愛菜によって傷は完全に治った。
「こんなことになるなんて…」
愛菜が弱々しく言う。
悠真が何かを思い出したかのように口を開いた。
「叶太、お前あの教室で訳の分からねぇこと言ってたな、どういうことだ。」
「…俺もよく分かってない、ただ分かるのは、俺は身に覚えのない記憶を…誰かの記憶を受け継いでることは確かだ。」
悠真がさらに詰める。
「言えよ、知ってること全部。テメェに何か分からなくても記憶を継いでるのは事実なんだろ!?」
「…分かった、分かったから今は休ませてくれ。頭も回らない…突然の出来事で疲れてるのは皆同じだろ、とにかく今は安静にしていたい。」
叶太が奥の部屋へ入っていった。
「チッ…くそっ…」
悠真も肩で息をするほど疲れていた。
「…….」
仮面の人物…あれは誰だったのか。
彼らに太刀打ちできるほど強力な能力を持っていた。
この世界にはもっと強力な能力者がいるとすれば、勝ち目はある…?
いや、それが見つからなきゃ意味がない。
私は仮面の人物を犠牲に助かってしまったことに落ち込んだ。
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数時間経って、私達は集まった。
話し合いのため。
香織が初めに口を開く。
「それで、あんたの話を聞かないといけないんだから、早く話して 」
「あぁ」
叶太は話し始めた。
「俺の能力は速度を操る能力だ。受けた能力の進む速さを操れる。全員が能力に目覚めたあの日、俺は誰かの記憶を見た。そこは…明らかに地球ではなくて、どこか…全く違う世界だった。」
全く違う世界…。
「…記憶の中に、あのスペードの男がいた。俺は…いや、俺の能力を持った奴は、スペードの男の指示を聞いて動いていた。多分部下だ。」
「つまり、速度の能力を持っていた人間のか過去を見れたってことね。じゃあ香織と悠真に聞くけど、あなた達は見たの?」
「俺もねぇ」
「私も」
「というか、春子と内田と奈緒はなんで生かされたんだ?能力持ってないんだろ?」
「わかんないよっ…そんなの」
「私もさっぱり。」
「私は、能力者の能力情報を読めるの。だから、あの日から香織や悠真や愛菜の能力は知ってたよ。弱点も。」
「そうだったのか!?」
「じゃあやっぱり、放火を邪魔してきたのはあんたってわけね」
私は黙って頷く。
「はぁ…もう、今はいいわ。それどころじゃない。 」
私はある言葉を思い出す。
「保護型…」
「なに?」
「スペードの男は、保護型って言ってたの。内田さんと春子は保護型って言うのに該当するってこと。それが何かは分からないけど…。」
「…なるほどね」
内田さんは嫌そうに返事をした。
「ところで、奈緒は能力を読めるんだよな?あいつらの能力を読めたりしたのか?」
叶太が質問したので、私は答えた。
「クローバーの女は超補助っていう能力。治癒やバフ、デバフとか、攻撃とかじゃなくて補助に特化してるみたい。補助能力なら多分、ほとんど使えるんだと思う。愛菜の上位互換のようなもの。スペードの男は、パーフェクトガーディアン。全攻撃を受け流せるって書いてた。悠真の上位互換と思えばいい。ダイヤの男の子は魔力総体。これは読めなかったけど…多分、魔力であれば大抵使えるってことだと思う…」
「なにそれ…勝ち目ないじゃん…」
愛菜がそう言うと、内田さんがなにかに気づいた。
「仮面の人は?あの人相当強かったみたいだけど」
「あっ…」
逃げることに夢中で読めなかった。
「ごめん、見てない…」
「そう…まぁしょうがない。とりあえずあの人のお陰で命拾いした。」
会話が落ち着いたところで私の目に激痛が走った。
「あ゛ぁっ…!!!」
「奈緒!?どうしたの!?」
春子と愛菜が心配して駆け寄ってくる。
「愛菜何とかして!」
「無理だよ…外傷じゃないからっ」
2人が言い合ってるうちに目の痛みが和らぐ。
「うぅ…もう大丈夫…」
「怖がらせんなよ…」
叶太を見たとき、異変に気がついた。
「…情報が…」
情報が増えている。
『前身混沌に属す』
「なんか見えたのか?」
悠真が聞く。
悠真を見ても情報が増えている。
『前身天界に属す』
「な…なにこれ…」
何が何だか分からない。
とにかく情報の共有をしなくては。
「見れる情報が増えてる…叶太は『前身混沌に属す』、悠真は『前身天界に属す』って…」
「は?前世の話みたいなこと言うのね」
香織を見る。
『前身大地界に属す』。
大地界…
「私達じゃ何も分からない…皆とりあえずもうここから離れるべきだと思う。」
愛菜がボソボソと言う。
「あ?なに…」
「静かにっ…!」
ギィィイ…..
なにかの鳴き声。
こちらに近づいている。
ギ…キィイ…
全員で息を潜める。
薬局のドアのガラスから外の様子を見る。
なにかの影が見える。
ギィィイ…
「…!!!!」
化け物だ。
前身がどす黒く、長い手足の先には長い爪が生えている。
頭から生えた管のような先に口が付いていて、腹に目がついている。
首あたりにハートのタトゥー…。
「ぅっ…!」
恐怖で悠真が声を出してしまった。
まずい。
ギィィイイイ゛ィイイィア゛アァアアァァァア゛!!!!!!
気づかれた…!
「走って!!」
奥の事務室の裏口から出る。
ギィアァア゛ィイァア!!!!!!
手足と爪を駆使して建物から建物へと移っていく。
早すぎる…。
香織が火を出して攻撃する。
ギィィイアアァイア……!!!
多少悶えたが、すぐに戻ってくる。
「はぁっ…!?もう無理じゃん!!! 」
とにかく全員で走っていたとき、商店街から離れて大きめの道路に出た。
するとやつは地面に降り、追いかけてきた。
「…!」
ただ追いかけてくるだけなら私達の方が早い!!
「皆!アレは足が遅い!!だから足を止めないでずっと走ってどうにか撒こう!」
「あぁ!くそっ…わかったよ!」
後ろを振り返ってそう言った悠真の横から、何かが突っ込んできた。
「…え?」
もう1匹、隠れていた。
ザシュッ!!
悠真の背中を爪で切り裂く。
「あ゛がっ…!!!」
悠真がよろめいた。
「あっ…!!香織!援護して!!!」
「無理に決まってるでしょ!!!1人くらい犠牲にならないと私まで死ぬじゃない!」
「はぁ…!?」
香織に腹が立ったが、そんな場合では無い。
私は近くにあった木の棒で悠真を切り裂いた化け物の腹の目を突く。
ギエェエェエ!!!!
すぐに再生してしまう。
化け物が悶えているうちに悠真を連れて走る。
「ちょっと我慢してねっ…」
悠真は既に虫の息で、早くどこかで愛菜に治してもらわないと死んでしまうかもしれない。
走っていると、後ろから赤い光が出たと同時に不気味な音がした。
ギュオォォオォ…….
後ろを向くと、化け物が能力を使おうとしていた。
「やばいっ…!!」
このままでは避けられない!!!
ギュォォオオォ…
パアアァァアンッッ!!!!
赤い玉がこちらに飛んでくる。
あれを受けたら間違いなく死ぬ!
もう赤い光は、すぐそこに来ていた。
その時だった。
ギァアアァ!!!!!
赤い玉が化け物に跳ね返っていた。
私はすぐ悠真を見た。
「はぁ…はぁ゛っ…あぶね…っ」
悠真が跳ね返してくれたのだ。
しかしこの体の状態で能力を使うのは体に負担が大きすぎるはずだ。
化け物が追いかけてこないうちに走り、何とか撒くことができた。
5人は走った先の神社で待っていた。
「愛菜っ…お願い…まだ生きてるの!」
「う、うんっ」
愛菜が悠真の体に手を当て、能力を使う。
「うっ…」
致命傷を治すのだから、愛菜にも負担がかかる。
悠真は何とか助かったが、愛菜はしばらく行動ができなくなってしまった。
愛菜と悠真を休ませたとき、香織が弱々しく言った。
「なんとか助かって良かったわ…」
「…」
パチンッ!!
香織に平手打ちをした。
「いっ…なにすんのよ!」
「なにすんのよじゃないよ!!香織が援護してくれたらここまで酷い状態にならなかったよ!!!」
初めて香織に対して怒った。
空気を読むばかりしていた私の怒る姿に香織は少し動揺していた。
「自分が助かるばかり考えないでよ!少ない生存者協力しないといけないし、悠真は私たちの中で唯一の防御能力なんだよ!」
香織が黙る。
「それに大事な仲間を見捨てて助かるなんて…!」
「ちょっと、もうやめて、奴らが来たら困る。」
内田さんが仲裁する。
「奈緒の言うことは分かる。あの状況は香織にしか打開できなかった。運良く化け物が能力使ってくれたお陰で何とかなったけど、あのまま追いかけられてたら確実に奈緒と悠真は死んでた。」
香織がばつ悪そうに目を逸らす。
「でも奈緒、香織も怖かったんだよ。確かに良くないことだったかもしれないけど、誰もが奈緒のように勇気があると思わないで。あまり責めないであげて、現に奈緒以外はもう手遅れだと思ってそのまま逃げたの。 」
内田さんにそう言われてハッとした。
そりゃそうだ。
あんな化け物に追いかけられたら、怖かったに決まってる。
「…香織、ごめん」
「…私も…ごめん」
ザッ、ザッ
「足音だ…」
今見つかったら悠真と愛菜を助けられない!
もうダメだ。
俯いて見つからないことをただ祈っていた。
「あ!よかった、無傷とまではいかないけど、全員無事だったんだね」
「あっ…!!」
「死んだかと思った?」
仮面の人物が柱から顔を覗かせていた。
コメント
1件
まあ、奈緒が香織に平手打ちしたシーン、胸にきましたね…!今まで空気読んでばかりだった彼女が、初めて「仲間を大事にしなよ」って怒ったのが本当に勇気あるなって。内田さんのフォローもあって最終的に謝り合えたのも良かった。それにしても仮面の人が生きてて本当に良かった…!次回も気になります!
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