数ある夢の一つ。
これは、何者でもない夢。
夢の管理人はどこにいったんだよ。サボってる……いや、そんなことはいいんだ。
今宵、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎のは怜夜の夢。
さぁ、楽しんで?
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俺___怜夜の姿を見た人間が、びくりと肩を揺らした。
そして一目散に逃げ出す。
「ば、化け物ォォ!!!」と、叫びながら。
……化け物、ね。よっぽど人間の方が化け物やけどなぁ。
『あーあ、逃げられんのに…バカやなぁw』
「……言い方悪」
『えぇ?w』
「はぁ……」
『ま、仕事はよ終わらそうぜ!』
「……黒羽呼ぶんやった」
『つれないこと言わんのー!』
黒い翼をばさりとばたかせてターゲットを追う。蒼羽も黒く重い翼を羽ばたかせ付いてくる。
まぁ、そんなに速度出さなくてもいいし、なんなら緩く走っていけば追いつくんやけどね。
お空飛ぶのはたのしーよ()
…っと、追いついたわ。意外に逃げ足が早かったなぁ、あれか?火事場は馬鹿だ、とかなんとか……
『ねー蒼羽。火事場のなんたらってなんやっけ?』
「……火事場の馬鹿力」
『あー!!そんなんそんなん!』
軽い雑談を交わしながらもターゲットとの距離をつめる。
「ひっ、く、くんな!」
『は?知らんよ。俺は仕事を全うするのみ』
「……運命には抗えない」
『ひゅ〜♪かっこいい事言うやん!』
「い、いやだ!!おれは、おれはまだ…!?」
『お前の命乞いなんて聞きたないわ…じゃあな』
ヒュンッ グサッッ‼︎
手に持つ鎌を勢いよく振る。
鎌の半分ほどが深々と突き刺さりターゲットは血を吐いて倒れた。ターゲットの体からぽわりと出てきた魂との繋がりを切断する。
『あーあ、鎌汚れたんやけど…うわ、きったねぇ血』
「……せやね」
『てか、間違えて刺しちゃったw』
「…間違えた?」
『そーそー、間違い間違い!』
んふふ、本当は魂との繋がりを斬るだけやけど…まあええか。
飛んでっちゃう前に魂は鎌に回収してっと。
放置してたら悪霊になってた〜とかあるからね。面倒やけど。
てかそこまで俺らの管轄なんか??
……知らんけど面倒やしええわ。
『あ…死体、どうするん?』
「………知らない」
『えー!知っとってよぉ』
「…川にでも捨てとけ」
『おっけぇ!…あ、あいつに頼むわ』
シャランッ 耳につけている中華風のイヤリングが揺れ鈴の音がなる。
《ザ…ザザ……怜夜様?」
『うん、俺やで〜。あんな、お掃除頼みたいねん』
《はぁ……条件付きならいいですよ」
『え、なに?』
《………くだ…い」
『なんて???聞こえへんよ…?』
《彼に物語を任してください」
『彼…って、あぁ⬛︎⬛︎⬛︎ね』
《……分かってます?」
『分かってる分かってる〜』
《はぁ、わかりました。やっときますね」
『…ミデン、お願いね』
《はい」
『よーし、おっけぇ!』
「はぁ」
『なんかさっきからため息つかれてばっかなんやけど』
「主が悪い」
『んぇぇぇ…』
「はい、仕事はやりましたよ」
『お〜!ミデンありがとー』
「………俺帰る」
『え、俺カラオケいこーと思ったんにぃ』
「怜夜様?遊ばないでくださいね?Maître様に怒られますよ」
『えーー、あいつに俺を止める権利なんてないから』
「……そうですか」
『…かえるかなぁ、ひさびさに』
「地獄での自宅、汚れてないといいですけど」
『そーやねぇ』
「それじゃあ、俺は帰ります。さようなら」
『ばいばーい』
ミデンは手をかざし、手先の空間を切り裂く。切り裂いた奥に見える機械的な部屋は冷たく、どこか恐怖を覚える。
…まぁ、あそこに俺は関わらないしなんでもええんやけどね。
『てか、蒼羽帰っとるやんけ!?えー、嘘であれよ……』
『ええか、かーえろ』
…………さ、地獄へ帰ろう。
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『えーんま!』
「は?」
『え??』
「いや、気安く呼ぶなよ…」
『はいはい、閻魔様。今帰りましたよ』
「お前は放浪してる時間が長い、裁かれても知らないぞ?」
『…できないくせに』
「………とりあえず、月一では帰るんだぞ。人間界に逃げたこと、おおめに見てるんだ」
『はいはーい』
「はぁ、縛りをつけてもいいんだぞ?」
『っ、いえ、気をつけます』
「あぁそれでいい」
「ほら、早く帰れ。私も忙しいんだ」
『…はい』
裁判室の隣にある閻魔の部屋を出る。
そのまま宮殿を出て、家の方角へと飛び立った。
『……うるさいんよ、俺に口出さんでや』
少し閻魔にイラつきながら、飛行を続ける。……もう少ししたら家だ。あの、大嫌いな家。
もう何年も帰っていない。
そんなことを考えているともう着いたようだ。
自宅の扉を開ける。埃っぽくなっている室内は薄暗く廃墟のようだ。
「…おー!やっと帰ってきた?」
知らない声。誰、誰なの。俺の家やで?なんでおるん。鍵もかけとった、全部閉めてた。
…あの名前を忘れさせてくれないこの家の記憶を、更新せんでほしい。
『は、?誰やねん……俺の家なんやけど』
「んー?僕は…ただの人間だよ」
『そんなわけないやろ?ただの人間が、ここにおれるはずないんやけど』
「…彼岸と似てる、そういえばいい?」
『彼岸?…だれだよ、それ』
「あれ、データを消したきわからんの?」
「あはは、まぁいいや」
「……僕は顔を見にきただけやき、帰るわ」
『おい、話しきけや…!!』
「あは、ばいばーい」
ばいばい、そう呟くと同時にミデンがやるように空間が切り裂かれた。
…あれは確か、空間の保持者しかできないんじゃ…?
『!…それ、』
「今は何も言わん。……それじゃあね」
『………』
そのまま本当に何もせず帰っていった。
……なんなん、あいつ…。
『…はぁ、ここにくるといいことが一つもないわ』
大きくため息をこぼす。
…もう、やだ。あの暴走はもう感じたくないのに。
……いや、今は天使様がいらっしゃるから、大丈夫。大丈夫。大丈夫。
あの、弱い僕はもう居ないから。
そう、だよな?
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???side
「……あ、おかえりなさい。⬛︎⬛︎様」
『おん、ただいま〜』
「どうでした、怜夜様の様子は」
『んー、多分彼岸のデータを消してたきその記憶がすっかり受け継がれてないね』
「…それはMaître様にいっておかなければ、ですね」
『…うん、そうだね』
「じゃあ俺から言っておきますよ」
『よろしく〜』
「……あの」
『…何?』
「ピエロさんとマリオネットさんに能力と姿をあげたのは何故だったんですか…?」
『…それは』
“面白そうな夢を見たかったから”
「…そうですか、ありがとうございます」
『うん、ばいばーい』
「はい、さようなら」
『…そこはうそでもまた、って言えよー』
「………⬛︎⬛︎様、また会いましょう」
『…ふふ、うんそうやね』
『次の夢の時にも優秀であればずっとずぅっと会えるよ』
『…彼の最高傑作くん?』
コメント
1件
dreamerNo.1 怜夜 1の夢の保持者。1の夢以降の保持者でもある。極めて稀な例。 …不特定多数の夢の保持が可能な観点から見ると、彼の存在が壱に留まらない可能性が高い。 どこまでの⬛︎⬛︎が確認、管理場所が不明な一人。 まぁ、その辺りの詳しい話は後で管理者に聞けば問題ないはずだ。 彼の見る夢の先は⬛︎⬛︎⬛︎だけ知っているとの情報あり。 _______________Zéro