『俺はあなたを、救いたかっただけなんですよ?』
『…逃げたい、ですか?ご冗談を』
『さぁ、楽しいゲームを始めましょう』
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クビにかけているヘッドフォンからあの音楽が流れた。通話に出て話を聞くと、どうやら怜夜様が回収をお願いしたいらしい。
面倒ですけど、行きますかね。
多分このあとあの方の考えですと、地獄に帰るんでしたっけ?
『…怜夜様は、気付いてるのでしょうか?』
あの方の⬛︎⬛︎⬛︎だと言うことを。そして、あの方と己が出会うことを。
『まぁ、俺には関係ないですね。あちらにいるのですから』
唯一⬛︎⬛︎⬛︎に干渉されない空間に。
………ふぅ、仕事行きますか。
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『はい、仕事はやりましたよ』
怜夜様に言われただけの仕事を。なんも処理はしてませんが、別にいいでしょう。
指示の範囲外ですから。
「お〜!ミデンありがとー」
「………俺帰る」
「え、俺カラオケいこーと思ったんにぃ」
『怜夜様?遊ばないでくださいね?Maître様に怒られますよ』
遊んでいったらあの方が「来ない!」と機嫌を損ねてしまうので早めに戻しておかなくては。
「えーー、あいつに俺を止める権利なんてないから」
『……そうですか』
Maître様の【⬛︎⬛︎】に勝てるとは思いませんがね。
「…かえるかなぁ、ひさびさに」
『地獄での自宅、汚れてないといいですけど』
まぁあの方がいるので生活できる程度に汚れてそうですね。
「そーやねぇ」
『それじゃあ、俺は帰ります。さようなら』
そろそろ空間の歪みが生まれるみたいですし。
「ばいばーい」
目の前に手をかざし、空間を裂く。奥に見える機械的な部屋へと入る。
さようなら世界。…俺を忘れないでくださいね。そして、今度こそ怜夜様を生かしてあげてください。
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「………あ、おかえり」
『はい』
「あ〜!かえってきたぁ!どーだった?蒼羽って」
『…そう、ですね。ピエロ様より扱いずらいです。ハッキリ言うと、面倒です』
「…俺面倒?」
『いえ、楽しいぐらいですよ』
「………そ」
「あ!怜夜帰ってきてる!!」
ちらりと画面を見ればちょうど怜夜様が扉を開けた時だった。
そのままの状態で固まる。ヒラヒラと揺れるコートとマフラーの裾だけが時が動いていることを表す。
…どうやら会話を聞いているとMaître様によって消去された彼岸の記憶は存在していないようだ。不完全な消去だから記憶とかだけは残るのに不思議ですね。
物思いに耽っているといつの間にか会話が終わったようで⬛︎⬛︎様が空間を裂くのが見えた。
「…⬛︎⬛︎帰ってくんね、僕あのセカイにピエロ連れて行ってくる〜〜!」
「は?勝手に……おい!」
二人はそのまま消えて行った。
足音的に…どうやら⬛︎⬛︎様が帰ってきたみたいですね。
『……あ、おかえりなさい。⬛︎⬛︎様』
「おん、ただいま〜」
あの地獄の空間に長くいてなおヘラヘラと笑っている。さすが、と言ったところでしょうかね。
『どうでした、怜夜様の様子は』
「んー、多分彼岸のデータを消してたきその記憶がすっかり受け継がれてないね」
あれ、Maître様の調整が違いましたかね…俺に回る時もあるからなんとしてもMaître様にやらせないと…
『…それはMaître様にいっておかなければ、ですね』
「…うん、そうだね」
『じゃあ俺から言っておきますよ』
「よろしく〜」
『……あの』
「…何?」
『ピエロさんとマリオネットさんに能力と姿をあげたのは何故だったんですか…?』
純粋な疑問。駒にするなら他の⬛︎⬛︎を引っ張ってきても良かったはずですし。
なにより、赤の他人をそばに作るのはリスクが大きいんですよねぇ。
「…それは」
「面白そうな夢を見たかったから」
“おもしそう”、ね。
『…そうですか、ありがとうございます』
「うん、ばいばーい」
『はい、さようなら』
もう俺や怜夜さま達と会うことが無いように。
「…そこはうそでもまた、って言えよー」
『………⬛︎⬛︎様、また会いましょう』
「…ふふ、うんそうやね」
別れの挨拶を交わしたところで背を向けてデータの保管場所へと向かう。
『…はぁ』
『また、ですか。……面倒ですね』
貴方の言う、面白いは俺たちにとっても楽しいですが……
俺はもっと”可笑しい”舞台が好きですよ。だから、この管理はもっといいように使わせてもらいますね。
シナリオの改変は貴方しか行えませんが、シナリオ内の反乱は俺でも起こせるんですから。
カチリと隠れるように設置された一つのボタンを押す。静かにそれがでてくる。
『…ふふ』
『俺の音で、あれらを管理させてあげますよ』
『そのかわり……』
『おかしな”ガラクタの最高傑作”を作り上げましょう?』
『さぁ、皆様。最高のゲームを楽しんでくださいね?』
コメント
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なんか私の好きそうなやつッッッ←
dreamer No.2 ミデン 夢の保持者でも管理者でもない。⬛︎⬛︎によって造られた個体。"_____の夢"の核であることが判明している。この世界では異端だが、造られた物であるのに力が強いためよく使える駒。 零であるためになら動く。だからこそ注意はしなければならないが裏切ることはないと言い切っていい。 1番存在が確かで、⬛︎⬛︎⬛︎に近い。 ______________Zéro