テラーノベル
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夜は静かだった。
特別な日じゃない。
事件も、喧嘩も、何もない。
ただの、いつもの夜。
それがもう、昔のすちには想像できなかった時間。
布団に入って、天井を見る。
隣にはみことの気配。
音はないのに、いるってわかる距離。
それだけで、胸の奥が落ち着く。
でも今日は、少しだけ違った。
考えてしまう。
(“必要”って、なんだろ)
ずっと引っかかっていた言葉。
役に立つこと?
迷惑をかけないこと?
守られる価値があること?
違う気がしてるのに、答えがまだぼんやりしてる。
「……みこと」
「起きてる」
間髪入れず返ってくる声。
それだけで少し笑いそうになる。
「ひとつ、聞いていい」
「どした」
すちは、布団を握る。
少しだけ怖い質問。
「俺さ」
喉が詰まる。
「……なんで、ここにいていいの」
部屋が静かになる。
否定されるとは思ってない。
でも、“理由”を聞くのは、まだ怖い。
みことは、少し考えてから言った。
「理由いる?」
「……」
「俺が楽だから」
予想外すぎて、すちは瞬きする。
「え」
「すちいると、落ち着く」
さらっと。
本当にそれだけ、みたいに。
「話さなくても平気だし
同じ部屋にいるだけで、なんか大丈夫になるし」
言葉は飾らない。
「だからいてほしい」
すちの胸が、じんわり熱くなる。
(役に立ってる、とかじゃなくて)
(いてほしい、って)
存在そのものへの言葉。
初めて聞いた種類の肯定。
「……俺、なんもしてないのに」
「してる」
即答。
「生きてる」
呼吸が止まりそうになる。
みことは続ける。
「それで十分」
すちの視界がにじむ。
涙が落ちる音が、自分でも聞こえた気がした。
「……ずるい」
「なにが」
「そんな答え、ずるい」
嗚咽が混じる。
でも苦しくない。
ほどけていく涙。
みことが、少しだけ近づく。
強く抱きしめたりはしない。
ただ、額が触れる距離。
「なあ、すち」
「……」
「“必要”ってさ」
静かな声。
「条件じゃなくて
感覚なんだと思う」
胸の奥に、言葉が落ちていく。
「いないと、ちょっと寂しい
それだけで、もう十分」
すちは、ゆっくり目を閉じる。
やっとわかった。
“必要とされる”って
役割でも、義務でもなくて。
誰かの世界に、自然に存在してること。
それだけなんだ。
「みこと」
「ん」
「……俺も」
少し照れる。
でも逃げない。
「いないと、やだ」
沈黙。
そして、優しい笑い声。
「知ってた」
部屋は暗い。
でも、怖くない夜。
すちは、小さく息を吐く。
(ああ)
(俺、ここにいるな)
初めて、自分で自分の存在を肯定できた瞬間だった。
外の世界はまだ怖い日もある。
不安が消えるわけじゃない。
でももう、ひとりじゃないと知っている。
帰る場所がある。
呼べば返事がある。
隣に体温がある。
それだけで、世界は前よりずっと優しい。
すちは眠りに落ちる直前、
小さく思った。
(“必要とされる”って)
(だれかがいる、見てくれてる、ってことだったんだ)
(’’ありがとう’’)
物語はここで終わる。
でも二人の日常は、続いていく。
静かに、
やさしく、
ちゃんと、生きながら。
番外編なんわになるかなぁ…w
コメント
36件
めっちゃくちゃ好き
ぬおおおおおおおおおおお!!!!(?) うん、ありがとうございますッッッ(?) やっぱり僕りゅ~せ~くんのかくしょうせつだいすきです!!(*´∇`*)