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カランカランカラン……
俺は、扉を開けた瞬間のドアベルと、その内装に驚いて足を止めた。
(ここ、探偵事務所で合ってるんだよな……?)
レトロな雰囲気を醸し出す内装と外観、部屋中に漂うコーヒーの香り。壁には様々な風景写真が飾られており、部屋の真ん中にはオシャレなローテーブルとふかふかそうなソファーが設置してある。
事務所というよりも喫茶店に近く、間違えて1階のカフェに入ってしまったのかと錯覚する。
奥にある「所長」と書かれた札がある大きな机と椅子。その椅子に腰掛け、コーヒー片手に本を読んでいた俺と同い年くらいに見える男性。きっと彼が探偵なのだろう。
「おや、いらっしゃい!」
俺の来訪に気づいた彼は、笑顔を浮かべこちらへ向かって来る。
「……あの、ここって探偵事務所で合ってるんですよね?」
「おん! あー、この内装やな? ごめんなぁ、これ俺の趣味やねん」
よく言われるのか、俺が内装のことを口にする前に回答が返ってきた。というか彼、関西人なんだ。
「どうぞ、ここ座って?」
所長さんが指さしたのはふかふかそうなソファー。案内されるがまま、俺はソファーに腰を下ろす。
「コーヒー飲める?」
「あ、はい!」
「シロップとかいる?」
「じゃあ、ミルク多めにください」
「あいよ。カフェラテやな」
テキパキとした手つきでコーヒーを入れ、出してくれた。コーヒーの上にはラテアートまで施されている。
「ありがとうございます」
「いーえ。こちらこそ来てくれてありがとうな!」
優しさに溢れた人だな、と思いつつ俺はコーヒーを一口飲む。
「あ、美味しい」
「やろ? 俺が毎朝挽いとるんやで〜」
「毎朝ですか、それはすごい……!」
世間話を少ししてから、俺の正面に腰掛けた所長さんが俺に向き直る。
「そろそろ、本題入ろか? 長話もあかんでな。改めて、ようこそ、向井探偵事務所へ!俺は所長兼探偵の、みんなの万能調味料こと塩麹よりも向井康二です!以後、お見知り置きを!」
言いながら、彼は丁寧に名刺を渡してくれた。
「今日はどういうご依頼で?」
その言葉が発された途端、彼の纏う空気が少し変わったような、そんな気がした。
「そう、ですね……これは、最近始まったことじゃないんですけど」
俺はそう前置きをして、俺の身に起こった話を恐る恐る話し出した。
俺が外出したら、必ず体のどこかか持ち物に傷が入ってるんです。
会社に着いた時に、自分のカバンの底からペンが落ちてきたことがきっかけでカバンの傷に気づきました。
最初は少し縫い合わせるくらいで直る程度だったんですけど、次第に傷が大きくなっていって。カバンだけじゃなくて、自転車のタイヤとか、手とか足にも傷ができるようになったんです……
1番新しいのだと、この手の甲の絆創膏ですね。
いつできたか分からないから、気づいた時にはかなり腫れ上がってることが多くて、困ってるんです。警察に相談しようと思っても、なんて言ったらいいか分からなくて……探偵さんなら、どうにかしてくれるかなって思って、今回伺いました。
正直、原因不明の切り傷事件なんて、解決できないんじゃないかと思っている。
でもこの時はまだ、この小さな切り傷事件があんなに大きくなるなんて、想像もしていなかった……
「なるほど、なんとなく状況はわかった」
コーヒーを一口飲み、所長の向井さんは一言呟いた。
「この切り傷が対象を誰にしてるかで色々変わってくるからなぁ……」
向井さんはそう言って立ち上がり、机の周りをぐるぐると歩き回る。かと思えば、部屋の隅のラックにかかってあった上着を手に取り、所長机の横にあるカバンを持った。
「聞き込みいこか!阿部くんも一緒に来てくれへん?」
「え、あ、はい!」
さっさと歩いていってしまう向井さんにつられるがまま、俺も荷物と上着を持って探偵事務所を後にした。
コメント
1件
おお、これはいい導入ですね! 探偵事務所の内装が喫茶店みたいで、向井さんの人柄も関西弁のゆるいノリも魅力的です。でも「原因不明の切り傷」という謎には不気味な空気が漂っていて、そのギャップが効いてますね。カバンから始まって体にまで傷が出てくる…これ、何か意図的なものなのか偶然なのか、続きがすごく気になります。向井さんがすぐに聞き込みに出ようとするテンポの良さも好きです。
べに💜🎮
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#佐久間担
yuka🌃🪽💎
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