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#闇バイト
るしゅ
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土橋真二郎
215
倉庫の中は静まり返っていた。
誰も動かない。
誰も喋らない。
モニターには、
【次はあなたですか?】
赤い文字だけが映っている。
俺は海斗の顔が頭から離れなかった。
あれは脅されて言わされたのか。
それとも……。
考えたくなかった。
画面が切り替わる。
【これより教育を開始します】
教育。
その言葉を見ただけで胃が痛くなる。
次の瞬間。
映像が流れ始めた。
暗い部屋。
机と椅子。
一人の男が座っていた。
昨日、この部屋で「辞める」と言った男だった。
男はうつむいている。
顔色が悪い。
眠っていないのが一目で分かった。
画面の外から声が聞こえる。
男の声ではない。
機械で変えられたような、不自然な声だった。
「質問します」
男はゆっくり顔を上げる。
「参加者はルールを破ってもいいですか?」
男は首を横に振る。
「……いいえ」
「途中で辞めてもいいですか?」
「……いいえ」
「参加者の情報を調べてもいいですか?」
男は少しだけ黙った。
そして。
「……いいえ」
その瞬間。
映像が途切れた。
たった数十秒。
それだけだった。
でも。
倉庫の空気は凍りついていた。
誰も息をしていないみたいだった。
俺は拳を握る。
これが教育?
ただ質問してるだけじゃないか。
そう思った。
その時。
最後の映像が流れた。
さっきの男だった。
カメラの前で。
震えながら笑っている。
「皆さん」
男はぎこちなく笑う。
「ルールは守った方がいいですよ」
「本当に」
「後悔しますから」
映像終了。
画面が真っ黒になる。
俺は寒気が止まらなかった。
あの笑顔。
笑っているようで。
まるで泣いているみたいだった。
モニターに新しい文字が表示される。
【教育終了】
【本日の案件を開始します】
その下に。
参加者全員の番号が並んだ。
17。
21。
34。
42。
55。
61。
73。
七人。
そして。
一人ずつ番号の横に文字が増えていく。
【配送】
【見張り】
【回収】
俺は自分の番号を見る。
参加者番号17。
表示された文字は。
【受取】
受取?
何を。
そう思った瞬間。
スマホが震えた。
新しい指示。
【本日18時】
【駅前コインロッカー317番】
【中身を受け取り、自宅で保管してください】
自宅?
今までそんな指示はなかった。
荷物を届けるだけだった。
今回は違う。
持ち帰れ?
胸騒ぎがした。
どうしても。
嫌な予感しかしなかった。
その時。
倉庫の出口へ向かう途中で。
一人の参加者と肩がぶつかった。
「すみません」
反射的に謝る。
相手は小柄な女の子だった。
帽子を深くかぶっていて顔はよく見えない。
でも。
すれ違う瞬間。
小さな紙切れを俺の手に握らせた。
「……!」
驚いて振り返る。
もう女の子はいなかった。
俺は誰にも見られないように拳を握る。
手の中の紙。
そこには震えた字で。
たった一言だけ書かれていた。
**『警察に行くな』**
俺の鼓動が。
一気に速くなった。
(第十六話へ続く)
コメント
1件
第15話、震えました。 「教育」の静かな怖さが本当に刺さりました。質問に答えさせるだけなのに、あの後の映像で一気に空気が変わる感じ…。男の人が泣いてるみたいな笑顔、ずっと頭から離れないです。 それにしても「受取」って…自宅に持ち帰れって、何を受け取るんだろう。嫌な予感しかしない。 最後の「警察に行くな」のメモ、あれを握らせた女の子も気になります。 次が気になって仕方ないです。続き、楽しみにしてます。