キングレオ討伐から翌日…。昨日プリンと話した通りここから一週間は基本単独行動になる。キングレオ戦を通して感じたことは主に二つ。魔法の種類の少なさと、自身の機動力のなさ。魔法に関しては書店に行くと購入が可能でレベルが上がって覚えるものもあれば書店で購入して覚えるタイプのものもある。で、どちらかと言えば購入して覚えるのがメジャーらしいので魔法の問題はお金で解決できそうだが、問題は機動力の方である。というのも一応魔法の中にはバフを与える効果を持つ魔法もあるのだがそれらは私の就いてる【職業】では扱えないため、そのバフをかけて弱点を補う事は出来ず、キングレオ戦のように力技で緊急回避するしかないのだ。まぁ、本来このゲームはパーティーを組んで戦うことを推奨してるから後衛職にはそう言った要素を取り入れずに攻撃に特化させたんでしょう。なので、回避に関してはどうしようもない……と私は思っていたけど、プリンを見たところ実はそうでもなさそうな雰囲気がある。というのも彼女は現実ではそこまで運動が得意ではなく、なんなら器械体操と言われるマットや跳び箱は群を抜いて苦手らしく前転ですら真っ直ぐ転がれないくらい身体の使い方がぶきっちょな人がこっちでは新体操よろしく空中でクルクル回るし壁を蹴って八艘跳もかますしでまぁ『ゲームしてるなぁ』とはなるけれど、それでもそういった動きがこの世界で可能ということを証明してくれたわけだ。つまり、この世界での身体の動かし方を学べば私も爆発に頼る避け方をしなくても済むという話になる。が、まぁド派手な攻撃に対しては爆発回避するしかないけどそれ以外のいわゆるザコ敵たちに対してはこの身体の使い方を独学でいいから学べたらまぁソロプレイでも楽に進めるよな。
さて、目標は何となく決まったが次の問題が出てきた。モンスターの攻撃回避するにはもちろんモンスターが必要だが今の私は強くなり過ぎて東門から出た先に居るモンスター達では逃げられてしまい訓練ができない。だからといって強個体のポイズンスパイダー君に相手してもらうにしてもここは初心者登竜門のマップな為居座るのは違う。うん。私どこで練習しようか。モンスター避けと身体の使い方を学ぼうの会……。
「……ていう訳でこれらの条件揃った狩場とかってあります?」
「…あなた随分と図々しいのねぇ?」
「いーじゃないですかァ?未来の顧客からのおねがいですよォ?」
困った私はアルナさんが経営するお店にて情報収集することにした。
「あんまりリアルのことを言及するのはご法度だけど、あなたがログインしてる時間的に多分学生さんでしょ?」
「一応学生やらせてもらってますね。」
「その割には値切り方がちょっとやり慣れてる大人っぽいのよ。」
「ネトゲをやってきたからですかね?ねだったりするのは上手になりましたよ!」
「ある意味英才教育ってわけね…。」
「それより教えてくださいよぉ?東門以外のちょうどいい狩場。」
「…はぁ、まぁ教えるけど今の話聞いてる感じ自身のステータスをあげる経験値稼ぎって言うよりもスキルだったり、ゲーム的に関係の無いというか数字で現れない技術の底上げっぽいからそれに適した場所を教えてあげる。」
「ほんとですかァ!?」
「お友達のプリンちゃんも使える場所だと思うわよ。」
「ちなみにそれは何処?」
「いくつかあって今のあなたにピッタリなのは『小鬼たちの宴会場』ていう名前のダンジョンよ。名前の通りゴブリンがいっぱい出てくるししかも種類豊富だから身体の使い方知るにはベストじゃない?」
「あざます!それで、いくつかあるって言ってますけど他は?」
「もう一つはどちらかというとプリンちゃんに適してて残った一つは二人でやるのに適してる場所なので教えないわよ。知りたきゃまずは『小鬼たちの宴会場』を10分以内にクリア出来るようになってからだね。」
「こりゃ手厳しい話ですなぁ?」
「んじゃとっとと自己強化に励んで大会上位取ってジャンジャンうちにお金落としてね♪」
(多分この人こっちが本性だろうなぁ…。)
とりあえずアルナさんに教えてもらった通りの場所に来てみた。詳しい場所を聞くのを忘れてたけどどうやら位置的には西門から少しでた先にある洞窟がこの『小鬼たちの宴会場』というダンジョンらしい。人も結構行き交う西門だがこのダンジョンに向かう人は本当に数が少なく、気になりそれとなく聞いたところこのダンジョンに旨味はそれほど無いため行く人が少ないらしい。ここ行くくらいなら多少無理してでも『火竜の子供も夜泣きをする』というサブクエを達成することで行けるようになるダンジョンで戦った方がマシだとみな口を揃えて話していた。まぁ、ゴブリンとドラゴンならドラゴン倒したくなるのはそりゃそうという感想が出るが、今の私が欲しいのはゲーム的な経験値ではなく、数字に現れない技術的な経験値だ。人が滅多に来ないここならその特訓に適しているので思う存分動き回ろうと思う。
軽く準備運動をしてからダンジョンに潜る。中はシンプルなダンジョンでここも初心者にオススメされそうな場所ではある。レベル上げと言うよりはパーティーでの行動をここでは学べるいい場所だと個人的には思っており、こういった狭い場所での前衛の在り方や後衛も使う魔法を考えないとかえって前衛の邪魔になることだってある。しかしそれらを学ぶためにはモンスターの存在が必要不可欠な訳だが、ゴブリンは数が多く更に武器を使って戦闘をしてくるタイプのモンスターな為先程言ったパーティーとしてのチュートリアルを行うには適しすぎている。まだここがそういった連携のチュートリアル場とバレてないならこのうちに身体の使い方を会得して私個人でもここを周回しよう。報酬云々よりも閉所での魔法使いとしての立ち回りを考えたいからね。
「なーんて考えてたら早速お出ましか。ナイフ持ちが二匹に弓持ちが三匹の五匹の編隊組んでる奴らね。体の使い方を学ぶにちょうどいい相手ね。実は一つ考えてたことがあって私もプリン同様に格闘出来たら護身術としていいかなって…。手は基本杖持ってるから私は足技で魅せてやろうかしら?なんにせよ、その練習の為に貴方達やられてもらうから」
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