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「なるほど!さすが阿部先生、めっちゃわかりやすい!」
「優太くんの応用力がいいんだよ。」
とある家の中で阿部は中学二年生の少年に勉強を教えていた。
阿部亮平。表の職業は家庭教師である。
「今日は本当にありがとうございました!うちの子がお世話になって」
「いえいえ、俺の仕事ですし。優太くんは容量がいいので、きっとまだまだ成長しますよ。」
最後に阿部は誰もが惚れる笑顔で家をあとにした。
その後ろで、少年の母は顔を赤くして固まっていた。
仕事帰り、スーツ姿のまま向かった先は
「いらっしゃいませー!って、あべちゃーん!」
佐久間が働くペットショップ。
佐久間は嬉しそうに二匹の子猫を抱えたまま阿部に近づく。
「佐久間、その子たちは?」
阿部は週に2、3回の頻度でここへ来ているが、佐久間が抱えている子猫は初めて見た。
「この子達ねぇ、昨日生まれたの。お母さん猫いっぱい頑張ったもんねぇ。」
佐久間は、猫と話す時や猫について話す時はいつもよりも落ち着いたテンションの猫なで声で話す。
阿部はいつものハイテンションではない佐久間も当たり前に好きだった。
阿部と佐久間が初めて出会った場所もここだった。阿部の教え子がここのペットショップを阿部におすすめし、それがきっかけでふたりは出会った。
ふたりが出会って思ったことは、”共通点がない”ということだ。
それが、ふたりを結びつけた。
阿部の話を素直に興味深く真剣に聞いてくれる佐久間。
佐久間と一緒にふざけながら誰よりも自分を理解してくれる阿部。
お互いがお互いをリスペクトし合える関係。
そんなふたりは”交際中”である。
「あべちゃん!なんか食べてこうぜ!」
「いいね!体力回復しとかないとだし!」
それはもちろん、二人だけの秘密。
とあるザリガニ店。
「やっば…!」
「所詮噂だと思ってたのに….」
都市部から少し離れたザリガニ店というあまり人が来ないような店だが、何故か大量の人だかりができている。
しかも幅広い年代の女性がそのほとんどを占めている。
人だかりの目線の先には、
「……」
真剣な顔でザリガニ釣りをする目黒蓮。
さすが顔面国宝と言ったとこだろうか?
目黒がこの店にアルバイトで来た途端、景気がバク上がりだ。
「目黒くん。集中してるところごめんね。」
ザリガニ釣りに精神を注いでいた目黒に店長が話しかける。
「…あ、はい。何でしょう?」
一拍遅れて目黒が反応する。
「今日ここに写真を撮りに来る子がいてね。その子の相手をして欲しいんだ。」
「はい。わかりました。」
店長の話によると、あと少ししたらカメラを持った青年が裏口から入ってくるようだ。
目黒は裏口に移動し、その青年を待つことにした。
しばらくすると、確かにカメラを持った青年が来た。
が、その青年は…
「えぇ!?めめやん!!!」
向井康二だった。
向井康二。
フリーカメラマン。
「こーじ?なんでここに?」
目黒も困惑していた。あまり表情に感情が出ない目黒の顔に困惑が出るほどだ。
「俺は、ザニガニの写真撮ろー思っただけやけど…」
困惑しながらも自分の事情を説明する向井に
「うん?もっかい言って?」
思わず目黒が聞き返す。
「だから、ザニガニの写真…」
きょとん、と向井がもう一度言う。
「ザニガニ?え、こーじ、今ザニガニって言った?」
さくらぶ
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目黒がまさか、と問い返す。
「へ?だってここ”ザニガニ店”やん?」
向井はザリガニをザニガニだと思っていたようだ。
「ザ”リ”ガニ、な。」
と目黒が指摘すると…
「うぇ!?そーなん!?」
めちゃくちゃ驚いたようだ。
そんな向井に
(ザニガニって…なんか可愛いな…)
目黒は心の中でそんなことを思っていた。
とあるスーパーマーケット。
「そっかぁ。お宅の娘さんももう受験生かぁ…俺にもあったな、そんな時期」
「あはは!ありがとうございます!山田さんが応援してくれてるから頑張れてますよ!」
「あ、谷さん!久しぶりですね!実家に戻ってきたんですか?」
「えー?俺に会いに来た?そんなこと言われたら照れちゃいますよー 笑」
ひとつのレジからは、絶えない客と絶えない会話が聞こえてくる。
「ありがとうございました!!」
深澤辰哉。
スーパーのレジの店員。
深澤の社交的な性格と持ち前のコミュニケーション、キラキラ輝くオーラ。
誰にでも振りまいてくれる笑顔を見るために、ここに通う客もいるほどの人気。
そこに、常連さんがやって来る。
「あ!岩本さーん、お疲れ様です。」
「どうも」
「今日の救助活動、どうでしたか?」
「まあ、そこそこですかね」
岩本照。
消防士。持ち前の体力で人助けをしている。この街ではヒーローだと有名だ。
「まぁたプロテインだ 笑」
深澤が呆れるように笑う。
「岩本さん、本当に筋トレ好きなんだから」
「体力づくりが大事な仕事なんで」
ふたりは苗字呼び、敬語を使う。
深澤は他の客と変わらぬ態度。
岩本は少し無愛想な態度。
お互いがただの店員と客としての態度で接する。
これが、岩本と深澤の暗黙の了解。
だが、
(ふっかの手、相変わらず綺麗だな)
岩本はお釣りとレシートを渡される時に深澤の手と少し触れて、そう感じる。
(照、戦いのために体力つけてんだろーな)
深澤も岩本の買った商品を見て、そんなことを思う。
お互いのことを思っているのは、表でも裏でも変わらない。
Royal cafe
カランカランッ
カフェに客が来たようだ。
宮舘が疑問に思いながら、扉の方をむく。
「お客様、申し訳ありませんが本日は営業していなくて。」
申し訳なさそうに告げる宮舘。
だが、来訪者の姿を見て固まる。
「…やってねーんだ。じゃあいい。」
渡辺が、そこにいた。
だが営業していないと聞くと即座に帰ろうとする。
「待って! 」
宮舘が咄嗟に止める。
「やってねぇんだったら来る意味ねぇだろ。」
渡辺が不満そうに言う。
「同じメンバー特典。コーヒーならだすよ。」
宮舘はそんな渡辺を何とか引き止めた。
「……」
少し不機嫌そうに、コーヒーを待つ渡辺。
渡辺翔太。
今話題の美容アンバサダー。
自分の美にこだわり、自分磨きを怠らない。そのおかげで肌は陶器のように美しい。
「お待たせ致しました。」
宮舘がコーヒーを運んでくる。
「…おう。」
ぎこちなく受け取る。
気まずい時間が流れる。
「……はぁ..」
渡辺がひとつため息を吐き、初めてしっかりと宮舘の顔を見る。
「お前さ、何で俺のこと置いていったんだよ….」
渡辺が絞り出すように、苦しそうな、泣きそうな顔で宮舘に問う。
「え…?」
だが、宮舘は戸惑うだけ。
「とぼけんなよ。俺は、あの日のことを忘れてない…!」
それとは対照的に怒りを顔に滲ませる。
「お前はあの日!俺のことを….!!」
拳を握りしめる渡辺。
「いや、もういい。」
ふっ、と渡辺の拳が緩む。
そして、くるっと背中を向け、外へ出ていってしまった。
「……」
一人取り残された宮舘。
机には、一切手の付いていないコーヒーだけが湯気を出したまま残されていた。
(渡辺視点)
「…クソッ」
何で、あんな顔すんだよ…!
意味わかんねえ!!
俺と涼太は何をするにも一緒だった。
産まれた病院も幼稚園も、習い事だって全部一緒だった。
周りの大人だっていつも一緒だって俺らのことをもてはやした。
俺は、涼太のことがずっと好きだった。
ずっと一緒だったのに….!!!
「何で、置いてったんだよ…りょーたぁ…」
ポツポツと雨が降り始める。
雨が降ってるおかげで俺が泣いているのには誰も気づかない。
こんな歳になっても、子供みたいに泣きじゃくる俺。
すんげー惨めだ。