テラーノベル
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サイコパスがいます。
怪我が多々あります。
Snow Manは緊張した面持ちでdominatorに指定された場所へ向かう。
「ここが、戦いの場所…?」
佐久間が不思議そうにつぶやく。
指定された場所は、少し小さいグラウンドだった。
「ここで大人数戦える気がしないんだけど…」
佐久間だけでなく他メンバーも疑問に思い、阿部が代表してそう口にする。
すると、
「来てくれてありがとうね」
「…!!」
頭上から声がした。
「dominator!!」
佐久間が叫ぶ。
「おい!降りてこいよ!」
見下されているのが不満なのか、渡辺も叫ぶ。
「はは、これは失礼」
真白を中心に降りてくる五人。
「で、対戦相手は決まっとるん?」
久尾雨が向井がいることを確認し、問いかける。
「もちろん。仕掛けられたのはこっちだし、いろいろ決めてもいいでしょ?」
阿部が少し強気に言う。
「ふーん…ま、そりゃそうだよね」
颯馬が笑顔で応答する。
「で、俺の相手は誰?」
「俺です。お願いします。」
颯馬の問に目黒が丁寧に頭を下げて挨拶をする。
「丁寧な子だなぁ。うん、よろしくね目黒くん。」
同じく颯馬も丁寧に礼をする。
「チッ、敵どうしなのに気持ちわりぃ」
そんなふたりをイライラした様子で見ていた歩夢が舌打ちをして毒を吐く。
「君の相手は俺だ。」
宮舘が前に出る。
ペアとなっている渡辺は、宮舘と違い前に出ようとせずに
「ぜってー負けねぇ」
とだけ言う。
「こっちのセリフだっての」
歩夢は生意気な渡辺に殺意を込めた視線を向ける。
「俺は?」
卓が興味ありげに聞く。
「俺と」
「俺だよ。」
佐久間と阿部が同時に前に出る。
「やったー!楽しくなりそうだ!」
笑顔の卓を見て、自然と阿部と佐久間の口角も上がる。
(こいつとなら楽しめそうだ)
「俺、まじでなんも聞いてないんだけど?」
一人、玲王は今日が初対面。
何が何だか分からないと言った顔でこちらを見る。
「はーい、俺が相手するよ」
深澤がゆるーく手を振りながら、余裕の笑みを浮かべる。
その笑顔を見て、
(こいつ…!!)
玲王は凍りつく。
(こいつ、とんでもなく強いだろ…!?)
深澤の能力の強さ、オーラを感じ取ったのか、玲王は冷たい汗を流す。
「ちょっとちょっと、そんな緊張しないでよ」
そんな玲王に深澤はへらへらしながら声をかける。
真白と岩本を除く全員、同じSnow Manでさえもそんな深澤を見て凍りつく。
(やっぱり、この子は面白いな)
さくらぶ
5,964
(今日のふっか、調子いいじゃん)
真白と岩本はそんなことを考えていた。
真白は好奇心。岩本は長年の信頼。
「じゃあ、俺は君とだよね?Snow Manのボスくん?」
真白が岩本の方を向く。
「当たり前だ」
岩本も真白を見つめ返す。
お互いのチームのトップ。
そこだけは空気感が違う。
「ってことは」
そんな二人の空気を気にせずに久尾雨は、ただひとりをうっとりと見つめる。
「こーじ♡」
「…っ!」
その怪しげな光を放つ瞳に見つめられ、息を飲む向井。
まだ、前に出れない。目黒の背中に隠れたまま動けない。
だが、
(俺は、もう逃げないって決めたやん)
心の中でつぶやき、大きく深呼吸。
すっ、と顔を上げて、初めて久尾雨と顔を合わせる。
「やったるわ」
はっきりと宣戦布告をした。
「で、ルールも決めていいよね?」
深澤が全員にそう聞く。
「ルール?」
Snow Manもそれは聞かされていなかったため、少し困惑気味に聞き返す。
「ルールその1、お互い殺さないこと。
ルールその2、どちらかが降参って言ったらその場で攻撃を止めること。
ルールその3、早めに決着が着いたら他メンバーと協力していいこと。
これでどう?」
深澤が提示したルール。
お互い異論は無いが、、
「ん~、ルール3は別にいいんやけど、他ふたつが邪魔な気すんなぁ」
久尾雨のみが不満な声を漏らした。
「俺はこーじを殺したいしなぁ…それに降参って言わせながら攻撃して痛みつけるんが楽しいやん?」
久尾雨だけは、他と違って感覚がズレている。
「ルールなんだから、今回は守れよ」
颯馬が久尾雨に少し圧をかけるように忠告する。
「しゃあないな。なら、殺すくらい痛みつけたるで♡」
不満そうに返事した後に、すぐに笑顔で向井を見つめる。
その笑顔に、向井は顔を下げない。
真剣な表情で久尾雨と向き合っている。
「さて、じゃあ始めようか!!」
真白が大きな声で腕を広げると、小さいグラウンドはゆらゆら揺れ始める。
「なんだ!?」
「う、わあ!!!」
揺れたかと思うと空間が塗り替えられていく。
そして、
「楽しいショーの始まりだ!!」
身体は宙を舞い、それぞれがバラバラに飛ばされる。
ついに、戦いの火蓋が切れた。
(深澤VS玲王)
「…..っ!」
深澤は高いところから落とされたが見事に着地を決め、周りを見渡す。
(空間の塗り替え。こーじと似たような能力だけどこっちは結構大幅な塗り替えがいけるのか…)
冷静に状況を分析しながら
「さて、やろっか」
後ろを振り返る。
「っ!」
後ろから不意打ちを狙おうとしていた玲王はバレていたことに焦り、すぐに距離をとる。
「まあまあ、なかなかこんな機会ないしさ、ちょっと楽しもうよ?」
深澤は控えめな笑顔を浮かべながら、少しずつ玲王との距離を縮めていく。
(冷静になれ。こいつの能力がなんであろうと関係ない。)
玲王は必死に自分を落ち着かせる。
(こんなの初めてだ。なんだ、こいつの異質さは!?)
先程から感じている深澤の異質さ。
とてつもない能力を持っていることは分かる。
だが、
(俺の能力は、相手の動きを止める。たとえ格上の相手でも能力が使えなくなれば終わりだよ)
薄い笑顔を浮かべ、能力を発動させる。
「…ん…」
(身体が動かない。動きを止める能力か。たしかに面倒ではあるよなー)
深澤は動きが止まっても冷静に思考を続ける。
(まあ、問題ないけどね)
勝ちを確信した笑みを浮かべている玲王を見て、笑いが隠しきれない深澤。
「なに、笑ってんだよ」
そんな深澤に気づいた玲王。
「いやー?別に?いい能力持ってんじゃんって思っただけー」
動きが止まっても調子が変わらない深澤に恐怖すら覚える。
「…!!!」
思いっきり殴りにかかる玲王。
だが、
「うわっ!」
玲王の周りを一気に囲む蝶の群れ。
「一体、どこから!?」
必死に振り払いながら、深澤を見る。
「……まさか…」
この異質さの正体、なぜ深澤がこんなに調子が変わらないのか。
その答えに気づいてしまった玲王。
もし、深澤の能力が式神だとしたら…?
玲王の能力は相手の動きを止めることだが、式神使いは身体を動かす能力の作動の合図がいらないとしたら…?
顔を真っ青にして、その場に立ち尽くす。
「あ、もしかしてバレた?じゃあ、いいか」
深澤はそんな様子を見て満面の笑みを浮かべる。
そして、
「俺の能力は式神。で、こいつが俺の切り札。」
姿を現したのは、少し尖り、メタリックな翼を持ち、普通の烏の15倍以上もある大烏。
「そんな…なんで、大烏がここに…」
両手を床について崩れる玲王。
「どうする?」
深澤は笑顔を消し、上から見下ろす。
「っ!」
玲王は気づく。
深澤のルールその2。降参後は攻撃はしない。
(このルールは、俺への救済措置…)
それに気づいてしまった玲王は、頭を下げ、
「降参、します…」
そう言うしかできなかった。
「賢いね。…ま、それしか選択肢はないけど」
深澤はそう言い残し、その場を大烏と共に去っていった。
(阿部、佐久間VS卓)
「どわっ!」
「えぅっ!?」
急に知らない場所に落とされ、上手く着地ができずに二人尻もちをついたあべさく。
「慣れないうちはそうなるよねー!」
そんなふたりを見て笑いながら手を差し伸べてくれる卓。
二人は感謝を述べてから立ち上がる。
「じゃあ、戦う?」
卓はそう言って、戦闘態勢に入る。
「おお!やろーぜ!」
佐久間もノリノリに答える。
「負けないからね」
阿部もノリノリで挑発をする。
「行くぞ!」
「あっはは!!何今の!?最っ高じゃん!」
「そっちこそ!!」
笑いは絶えない。
こんなにハイテンションな戦いは初めてだ。
だが、
(まずい、こっちが押されてる)
今の戦況は圧倒的に卓が優位にいる。
向こうは、能力のおかげもあり、どんなに早く駆け回っていても疲労が来ない。
だが、佐久間はまだしも、阿部は体力の限界が近づいていた。
「じゃあさ!こんなのはどう?」
卓がすっ、と片手を上げ佐久間に向けると、
「avolare(アボラレ)!!」
と技名を叫ぶ。
「…っ!佐久間!!」
阿部が真っ先に技名からこの能力がどんなものなのか察し、佐久間に叫ぶが
「え?」
その前に、佐久間は
飛んだ。
「佐久間あああ!!!!」
阿部は思いっきり叫ぶ。
だが、佐久間の姿はもう見えない。
(まずい…!!佐久間がいなくなったら俺は何も出来ない。)
卓の能力により、佐久間がいなくなったことで、一気に戦況が変わる。
もうほとんど体力の残っていない阿部は、圧倒的不利。
「さて、阿部くん。戦えてすんごい楽しかったよ。ありがとう」
笑顔で卓が近づいてくる。
(まずい!!みんな、ごめん…)
負けると確信し、心の中でメンバーに謝る。
卓が手を挙げた、が、
「おい、何やってんだよ」
後ろから声が聞こえてきた。
「え?歩夢?!」
卓が驚いたように声を出す。
阿部も焦りが増加する。
(嘘…翔太と舘さんは…?)
ここに歩夢がいるということは、ふたりは…
「こいつも痛めつけてやろーぜ」
歩夢は阿部を見下すように見る。
阿部は、歩夢の目に違和感を覚える。
(この感じ、なんだろ?)
「痛めつけるって…」
卓は戸惑いながら歩夢を宥める。
阿部はただ歩夢の目を見つめる。
(そうか、そういうことなんだ…!)
そして、気づいた。
次の行動は早い。
阿部は予め用意した紐を出し、歩夢に差し出す。
「いいよ。これで縛んなよ」
「え?」
卓が驚いて阿部を見る。
歩夢は口角を上げる。
「分かってんじゃん」
とだけ言い、紐を手に取り
「….え?」
卓に巻き付ける。
卓は困惑しながら歩夢を見る。
だが、そこにいたのは歩夢ではない。
「佐久間くん…?!」
まだ歩夢の茶髪が残っている佐久間だった。
そのうち、ピンク髪に戻り、完全に佐久間に戻った。
「あはは、びっくりだよね」
阿部は微笑みながら、同情するように言う。
「俺の能力!protean(プロティアン)!変幻自在のカメレオンだ!!」
佐久間は胸を張って言う。
「でも!佐久間くんは確かに飛んでって!!」
卓の言うように、佐久間は確かに飛ばされたはず。
「あー、それはね。…これ!」
佐久間は足元に落ちていた大きめの石を見せる。
「石に変身することで、飛ばされる距離を最低限に収めたのか…!」
阿部も佐久間の発想に驚き、感心する。
「あー!!負けちゃったなぁ!悔しいーー!」
阿部に紐を解いて貰った卓は叫びながら敗退者用の場所に向かった。
「あべちゃんさ、よく気づいたね!」
佐久間は感心しながら阿部を褒める。
「だって、佐久間の目だったもん。佐久間の真っ直ぐな目、俺の大好きな目。そりゃ気づくよ」
阿部はにっこりと笑って、少し堂々と言う。
「そっか」
佐久間も嬉しそうに目を細めて笑う。
佐久間は小走り気味に、阿部はゆっくりと歩く。
離れない、適度な距離を保ったまま。
(宮舘、渡辺VS歩夢)
「うわあああ!!!」
「うおっ!」
渡辺は叫びながら、宮舘は少し驚きながら宙を舞っていた。
そして着地の瞬間、宮舘は綺麗に決まっていたが、渡辺がその上から落ちてきたため、
「うぐっ!」
「いってー!」
宮舘もバランスを崩してしまった。
立ち上がろうとした時、お互いがものすごく近くにいるのに気づき、渡辺が急いで離れる。
「あ…」
宮舘は少し切なそうに顔を下に向ける。
そのまま、何も会話をしない。
すると、
「はあ、めんどくせーな」
歩夢が頭を掻きながらこっちに向かってきた。
そして、一気に距離を詰めてくる。
「…っ!!」
咄嗟に判断できなかった渡辺の代わりに、
「congelare!!」
宮舘が急いで渡辺の前に氷の壁を作る。
「チッ」
ここで渡辺を仕留めておきたかった歩夢は小さく舌打ちをして後ろに下がる。
「なんで、守るんだよ…」
渡辺は宮舘を睨みつける。
「危なかったから。ペアなんだから助け合わないと」
宮舘は静かに答える。
「そうかよ…」
渡辺は拳を握りしめる。
その顔は、どこか苦しそうだった。
が、すぐに戦闘態勢に入り、
「Rosae・Volant(ロサエ・ウォラント)」
と唱えると、
「クソ、小細工しやがって」
バラの花びらが舞い上がる。
歩夢からは視界が見にくくなる。
そのまま、渡辺は
「garnet(ガーネット)」
と唱える。
すると、舞っていたバラの花びらがガーネットに変化し、歩夢を襲う。
「うぜー能力だな」
毒でガーネットをすべて溶かした歩夢は、渡辺を睨みつける。
「あ?お前もだろーが」
渡辺も負けじと睨み返す。
治安が悪すぎる戦闘に、宮舘は戸惑いつつ渡辺のサポートに回る。
一緒に戦おうとしても、きっと渡辺に拒否される、もしくは渡辺に味方なのに攻撃されてしまう可能性がある。
「ったく、全部阿部のせいだ」
戸惑っている宮舘に気づいて小声で呟く渡辺。
そのまま怒りに任せて、全ての力を使うように大量のバラを生み出す。
「…!?」
あまりのバラの量に歩夢と宮舘は目を見張る。
それを見て、宮舘は焦る。
「ダメだ!!翔太!!!」
急いで渡辺を止めようとするが、
「うるせぇ!!どいつもこいつも!俺に近づくな!!!」
ほぼ絶叫に近いそれは、ガーネットの雨となって味方敵問わずにこの空間全体に降り注ぐ。
「imber(インベル)!!!」
「おい!!嘘だろ!?」
歩夢は急いで避難する。
「くっそ!負けだよ!負けたから止めろよ!!」
歩夢が叫ぶが渡辺には届かない。
「翔太!!」
宮舘はガーネットの雨に傷つきながらも必死に渡辺の方へ向かう。
(翔太の能力の暴走、止め方なら知ってる)
ガーネットが少し擦るだけで服の上から血が滲む。
それでも宮舘は歩みを止めない。
そして、渡辺の元へ辿り着く。
宮舘は静かに渡辺の後ろから、
「翔太…」
渡辺の耳を塞ぐ。
「…っ」
すると、渡辺は一気に力が抜けたように倒れ込む。
そんな渡辺を抱き抱える宮舘。
「負けって認めたよね」
そして歩夢の方に向き直る。
「クソ…!」
歩夢もそれを認めており、しぶしぶ敗退者用の場所に向かった。
「翔太…」
「……」
宮舘が声をかけても、気絶しているため声は届かない。
「ねぇ、置いていったって、どういうことなの?」
あの時言われた言葉。
『お前さ、何で俺のこと置いていったんだよ….』
『とぼけんなよ。俺は、あの日のことを忘れてない…!』
『お前はあの日!俺のことを….!!』
「俺には、分からないよ…」
苦しそうな表情で、宮舘は眠る渡辺の頬を指でなぞる。
(岩本VS真白)
「…」
岩本は、どこにも飛ばされずに真白と最初のグラウンドに残っていた。
岩本と真白、初めてのボス同士の対決。
「みんな、飛ばされたかな?」
真白がゆっくりと息を吐き、改めて岩本に向き直ると、
「なんかさ、賭けてみない?」
と、提案する。
「賭ける?何を?」
岩本は警戒しながら賭けの内容を聞く。
「お互いが興味を持ってて、絶対負けたくないって思えるもの…もう、わかってるんじゃない?」
勝った先に得たものを想像してニヤニヤする真白。
その様子によりイライラが高まる岩本。
「何を賭けんだって聞いてんだよ」
余裕が無さそうに問う岩本に、一層笑みを浮かべて
「ふっか、だったっけな?あの子を賭けよう」
と、内容を提示した。
「……は?」
目を丸くする岩本。
「俺が負けたら、あの子には今後手を出さないし、肩の傷だって謝罪するよ」
笑顔で続ける真白。
「でも、俺が勝ったら…」
一息置いて、焦る岩本の顔を見て笑いながら
「あの子を頂戴。俺があの子を好きにする…なんてどう?」
勝ちを確信し笑う。
「お前…!」
一方で、岩本は焦っていた。
いつもの余裕などなく、賭け皿に深澤が乗ったことで、絶対に負けられない。
「勝てばいいだけだ。」
冷静さを何とか取り戻しながら、相手に飲まれぬように強気な発言をする。
「始めよう」
真白の声を合図に、深澤を賭けた戦いが始まる。
「俺の能力は書き換えだよ」
「…」
すっ、と岩本の頬からなんの前触れもなく血が滲む。
「例えば、俺が宣戦布告した日。なんでふっかくんが俺の腕の中にいたと思う?」
「……」
次は、左腕。
「あれはね、俺が書き換えたから。元から俺の腕の中にはふっかくんがいたってことにしたの。」
さらに右足に傷が入る。
「今の攻撃もそう。俺の攻撃が当たったことになってるよ。ふっかくんはこれに気づけるかなぁ…」
「お前…」
余裕そうに岩本の攻撃を避け続ける真白に
「あいつのこと、ふっかって呼ぶな」
深澤のことを愛称で呼ぶことにイラつきを覚えていた。
「えぇ?なんでよ?」
へらへらと笑いながら、またもや攻撃を避ける真白。
「ふっかって呼んでいいのは、メンバーだけだ。あいつのことをなんも知らないやつに、愛称で呼ぶ資格なんかない」
確かな怒りを込めて
「flamma(フランマ)」
と、ついに能力を使う。
あれだけ使わないと決めていた能力。
「おっと…」
真白は少し目を開き
「炎か。嫌な能力と当たっちゃったな」
と、少し顔を歪める。
「本気、出さないとかなぁ」
そして、今までの笑顔を捨て、真剣な表情で戦闘態勢に入る。
「!」
「…っく…!」
本気を出した二人はほぼ互角。
どちらが先に体力が尽きるか、それがこの戦いの勝敗に大きく関わるが、
(こいつ、しぶといな)
お互い、全く体力の限界など来ない。
勝負が全く終わらない。二人もそれを理解しているが、負ける気などない。
「しぶといなー!いい加減降参しなよ!?」
真白が耐えきれずに叫ぶ。
「そっちの方こそ…」
岩本も少し息を上げながら言う。
すると、急に周りが暗くなる。
「…え?」
ふたりは疑問に思い、同時に空を見上げると、
「なっ!?」
真白は硬直し、
「いひ、まじか」
岩本は突然の出来事に笑ってしまう。
そこには、大烏がいた。
ということは、
「照!!」
当然深澤もいるわけで
「式神使いだったのか」
真白は深澤に目を向け、驚いた、ともう一度大烏に目を向ける。
「大烏…噂では聞いた事あったけど、初めて見た…」
少し興奮気味に呟く。
「はぁー。嫌だなぁ、勝てるわけないじゃんか」
そして、両手を顔の前に掲げ
「降参だ。こんな形で負けるなんてなぁ」
負けを認めた。
「でも、そっちも強かったよ」
岩本は真白に敵としての褒め言葉を発する。
「そっちもね。いやぁ、この戦いがこんな呆気なく終わるなんてな…ボスとして気改めないとかな?」
悔しそうに笑いながら、真白は敗退者用の場所に移動する。
「お前さ、何してんだよ」
次に岩本は深澤に向き直る。
「何って、ルールその3!他メンと協力してよし!だから助けに来てあげたんじゃん?」
深澤は当然と言った顔で、顔の前に指を三本立てた手を掲げ、岩本に告げる。
「ほんっと、お前っていうのは…!」
頭を抱える岩本。
(こっちはふっかを賭けてたってたのに、本人が来るなんて…)
「え?ちょ、なに?どういうことよ??」
だが、深澤にはその発言の意味と岩本の行動の意味が分からずにあたふたとする。
「とりあえず、他の奴らのサポートに動くぞ。」
岩本はすっ、と任務の顔に切り替える。
「ふっか、動けるな?」
「了解、リーダー」
岩本の問いに笑顔で答える深澤。
ふたりは、共にグラウンドを駆け抜けていく。
(俺の隣はふっかだけだし、ふっかにとっても俺だけだろ?)
岩本は静かに、確信したように心の中でつぶやく。
(目黒VS颯馬)
「少し離れた場所に飛ばされたみたいだね」
「そう、ですね」
目黒と颯馬はあまり遠くまでは飛ばされず、急に振り落とされるということもなかった。
それには理由があり、
「戦う前に怪我しちゃったら本気出せないもんね」
颯馬が風の能力で目黒の身体を支えていたようだ。
「ありがとうございます」
お互い敵でありながらも感謝やリスペクトを忘れない。
「多分、他の所ではもう始まってると思うしさ、俺らも始めようか」
颯馬はゆっくりと準備運動を始め、そう発言する。
「そうですね。俺も準備はできてます」
目黒も準備ができているようだ。
「それならよかった」
颯馬はにこやかに微笑み、
「始めようか」
その合図で戦闘が始まる。
目黒はこの戦いを早く終わらせないといけない。
目黒はあの日、dominatorの他四人と会った時、向井が久尾雨との過去を話してくれた時から決めていた。
俺がこーじを守る、と。
「…くっそ…」
目黒が小さく呟く。
早く戦闘を終わらせたいのに、さすが副ボスなだけあり、攻撃が通らない。
「目黒くんは植物男子なんだね。おもしろい、初めて見たかも」
颯馬は興味深そうに目黒の能力を観察している。
余裕のある颯馬に焦りが増す目黒。
(早く、早くこーじのところに行きたいのに…!!)
今、周りがどうなっているのかが分からない。
向井は果たして無事なのだろうか、久尾雨に殺されそうになっていないか、怖くて攻撃もできずに怯えているのではないか。
考えるのは向井のことばかり。
「風と植物、相性はいいんだけどね。いざ戦うってなったらなかなか決着がつかないもんだ」
颯馬が笑いながらのんびりと言う。
二人の能力の相性がよいせいで、戦闘となると強さが互角になる。
そのため、決着がつかないのだ。
(早く終わらせるにはどうすればいいんだ)
目黒は必死に考える。
(俺の攻撃じゃ風ですぐに散っちゃう。相手の動きも読めないし、地中からの攻撃はムズいよな)
(そうだ。そうやってひとりで考えることが大事なんだ。チームの司令塔に頼らない、メンバーに頼らない。それが強くなるコツなんだ。)
颯馬は、目黒が考えている時に攻撃をしない。
dominatorの目的は最強を決めることだが、颯馬はそれを利用して、若手を育てることも目的のひとつであった。
目黒は真剣に考える。
そして、
(わかんねぇけど、やるしかねぇ)
ひとつの策が浮かんだ。
「次はどんな攻撃をしてくれるんだい?」
颯馬も楽しそうに目黒を見る。
目黒は覚悟を決めた瞳で、
「Hedera!」
と叫ぶ。
すると、地中が揺れる。
「!」
急いで目黒から距離をとる颯馬。
だが、
(予想通り!)
目黒は、その瞬間を狙っていた。
「forium shower(フォリウムシャワー)!!」
瞬間、颯馬の位置に葉の雨が降り注ぐ。
「…っ!」
颯馬は振り払うために能力を使おうと、両腕を広げる。
(来たっ!!)
目黒は口の端を上げて、手を上に上げる。
すると、地中からツタが一気に生え、颯馬の両腕を塞ぐ。
「ははっ!なるほどね!!」
完全に行動できなくなった状態で颯馬は笑う。
そんな颯馬に目黒は近づいて、
「俺のことを、強くさせてくれてありがとうございます。」
頭を下げる。
目黒は颯馬の目的に気づいていた。
「お礼なんていいよ。俺も目黒くんと戦えて楽しかった。こちらこそありがとう」
颯馬は爽やかな笑顔を浮かべる。
そして、
「あいつのところに行くんでしょ?手伝ってあげるよ」
解かれた右腕を上げて風を巻き起こす。
「…!ありがとうございます!」
そして、目黒は風に乗って向井の元へ向かった。
「間に合うといいね」
目黒の背中を見て、颯馬は呟いた。
(向井VS久尾雨)
「どういう、つもりなん?」
向井は警戒心をむき出しに久尾雨に声をかける。
「ん?こーじ、今なんか言うたん?」
久尾雨は向井に笑顔で向き直る。
「どういうつもりやって聞いてるん!」
今度は久尾雨にしっかり聞こえるように大きな声を出す。
「そんな大声出さなくてもちゃーんとこーじの声は聞こえてんで」
笑いながら片耳を塞ぐフリをする久尾雨。
(ホンマに、何考えてるかわからんやつや)
向井は久尾雨の顔を見る。
その笑顔にはなんの感情があるかが分からない。
ただ
「はぁ~♡これから久々にこーじと一緒にやれるわけや…こーじの苦しむ顔、いっぱい見せてや♡」
狂気じみた感情だけは伝わってきた。
「はぁ、はぁ、はぁっ!」
向井は息を荒らげながら久尾雨から距離を取る。
「こーじ?どうしたん?そんなもんやっけ?」
久尾雨に一切攻撃が通らない。
久尾雨は向井の能力、癖、動き方、全て覚えている。
それに、
「ぅあっ…!!」
向井の右腕に痛みが走る。
「もっと足掻いてくれんと、こっちも面白くないでー?」
久尾雨の能力は見えない針。
阿部のような能力や、深澤みたいな鋭い観察力を持ち合わせていない向井には当然見えるわけがない。
一方的に痛めつけられる向井。
(とにかく、とにかく今は距離を取らな!!)
傷つけられた箇所を押えながらとにかく逃げる。
逃げる途中にいくつも罠を仕掛けたが、久尾雨は向井の能力の発動条件が指鳴らしであることも知っているため、全く引っかからない。
「逃げてるだけじゃ、攻撃は当たらんよ?」
「ぐあぁっ!!」
向井の右足に多数の針が刺さったようだ。
立ってられずにその場で崩れる向井。
久尾雨はゆっくりと向井に近づく。
そして、
「はぁ♡安心してや?殺しはせんから。でもな、ちょーっと痛いかもしらんなぁ?こーじはどこまで耐えれるんやろ?♡」
興奮した様子で久尾雨は攻撃を続ける。
「…ぅ゛!!ぁあ゛あ゛!!!」
向井の身体のあちらこちらに針が刺さる。
その痛みは今までの攻撃と比べ物にならない。
(痛い…痛い痛い痛い…怖い、怖い怖い怖い怖い怖い…!!!このまんま死んでまう…)
痛みのせいか、出血のせいかは分からないが、朦朧とする意識の中、向井は
「…め…め……たす、け…て…..」
そう呟いた。
「こーじ!!!!!」
颯馬の風に乗り、目黒はようやく向井の元へたどり着いた、が…
「……っ!!」
そこには、血だらけの向井と、そんな向井を愛おしそうに見つめる久尾雨がいた。
ぐったりと、本当に死んでしまっているのではないかと、糸の切れたマリオネットのように全く動かない向井。
あまりの惨状に声も出ない目黒。
遅かった。
目黒は怒りと悔しさで冷静さを失う。
「うあああ!!!」
感情のままに久尾雨に殴りかかる。
「はぁ、邪魔もんが入ってきたなぁ」
久尾雨は目黒に気づいて、一気に冷たい表情になる。
「てめぇ!こーじのことを!!!」
「うるさいなぁ!耳元で叫ばんといてや」
目黒の攻撃を軽々と避ける。
目黒は、針が刺さりながらも動く足を止めない。
たとえ血まみれになろうと、絶対に止まらない。
「……..め、….め….?」
ふたりがぶつかる衝撃で、気絶していた向井は目を覚ます。
(あー。そういう事か…。俺はまた、守られる側なんや…)
身体が痛い。
血液の生々しい感覚が気持ち悪い。
だが、向井は
(そんなん嫌や!俺が、俺がやらなあかんのに!!)
最後の力を振り絞る。
パチンッ
それは、とても小さな指鳴らし。
ゴゴゴゴ…
「?」
地面が揺れている。
最初は小さい揺れ。だが、その揺れはだんだんと大きくなっていき…
「なんや!?」
目黒と久尾雨の間に大きく壁を作る。
「はーん。そんなもんか」
久尾雨はその壁がただの目黒と距離を取るためのものだと思い、すぐに壁を壊そうとする。
「久尾雨くん…ダメやでぇ…?」
向井が声を振り絞る。
「…っ!?」
久尾雨が壁に触れた瞬間、壁が崩れる。
「久尾雨くんみたいな、強い人…が、、触れたらな…俺は、弱い…から、、すぐに..崩れてまうで?」
向井が血まみれの笑顔で久尾雨を見る。
「なるほどな…でも、こんな小細工、意味無いやろ」
久尾雨は降り注ぐ壁の欠片を避ける。
「知っとるで。だから、、俺は…誰かに頼るんや…」
ゆっくりと瞼を閉じて、苦しそうに、でも、誇らしそうに言う。
「なぁ?…めめ」
「はっ!」
久尾雨は咄嗟に上を向く。
「おせーよ」
目黒は確かな怒りを込めて言い放つ。
「spina(スピーナ)」
その一言で、目黒の手から茨が放たれる。
手だけではない、地上からも生えてくる。
「ぅぐっ!」
茨が強めに久尾雨を縛り付けることで、久尾雨の皮膚に茨のトゲが深々と突き刺さる。
「こーじ!!」
目黒は久尾雨を縛り付けて固定した後、すぐに向井の元へ向かう。
向井は呼吸をするのも辛いようだ。
最後に能力も使ったせいで、より負担が大きい。
「こーじ、よく頑張ったな。もう大丈夫だから」
目黒は再生能力のある植物を生成し、向井の傷を癒す。
「め、め….」
「こーじ、喋んなくていいよ」
「聞いて、や…俺、久尾雨くん、、から、逃げなかったで?…最後まで、ちゃんと…戦え…た……」
「うん、わかってる。わかってるよ。こーじの勝ちだよ。」
目黒は向井を抱き抱える。
久尾雨の方を見てみると、
「…いない」
おそらく敗退者用の場所へ向かったんだろう。
「こーじ、行こうか。」
目黒は眠る向井を大事そうに抱えて、最初の場所へと向かった。
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