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「じゃあ、読んだら感想聞かせてね!」
「わかった。有り難く借りておくよ」
無事に入学できた私は目当てのサークルに入ることが出来た。
しかも…!
あの『東雲 聖』もいたのっ!!
私の周りには何故か人がよく集まるからあまり話せないけど、隙を見つけては声を掛けている。
当の本人はサークルのみんなとあまり打ち解けていないみたい…寡黙な人なのかな?
「うんっ!感想は絶対聞かせてねっ!」
人付き合いが苦手なのかも…でも、何とか仲良くなりたいな……
この時の私はお婆ちゃんとも暮らせて、目当てのサークル活動も出来て、さらには仲良くなりたい人にも近づけて幸せだったな。
あの日、お婆ちゃんが倒れたのは疲れのせいだって聞いていたのに……
「えっ…?大学にも来てない…?」
この人は聖くんの友達で聖くんと同じ学部の須藤 智也くん。
「ああ。連絡するけど返事は生きてるってだけなんだ。
あれ?長濱さんって聖と仲良かったっけ?」
須藤くんが何か言っているけど、私には何を言っているのかわからなかった。
「そう。それは悲しいね」
最近では日課になっている大学終わりのお婆ちゃんのお見舞い。
倒れた日からお婆ちゃんはすぐ疲れるようになってしまい、入退院を繰り返していた。
本人は『事故の時も脳梗塞の時も良くなったでしょ?今回もすぐに良くなるから大丈夫。聖奈は大学生活を楽しみなさい』って言うんだけど……
唯一本音で話せる相手だから・・・
大学でも…家でも…一人は嫌だよ……
「うん・・突然だったから何かあったなら言ってくれてもいいと思わない?」
「聖奈。他人とはそれぞれ歩んできた道が違うのよ。
そこに文句を言ってはダメ。
それでももし、気になるなら自分から歩み寄らないとダメよ」
「そんなの……出来ないよ」
泣き言ばかり言う私を、お婆ちゃんはいつも撫でて励ましてくれた。
実家では泣き言なんて許されなかったのに。
心配掛けてごめんね?お婆ちゃん。
そんな寂しい学校生活でも、通うのが学生の義務。
話したい相手は来てくれないし、下心が丸見えの相手しかここにはいない。
いつしかサークルへもいかなくなってしまった。
初めての共学生活でも、一年近く通えば男の子の下心なんて流石に気付けた。
もちろん女の子の裏の顔の方が遥かに複雑だから、単純な男の子は簡単にあしらえたのだけど……
聖くんのいないサークルにも、大学にも、何の魅力も感じられなくなっていた。
そんなある日。
いつものようにお婆ちゃんの家に帰宅した私の携帯がなった。
「もしもし。はい。…はい。大丈夫なんですよね?」
電話は病院からで、すぐに来てくれとのことだった。
大丈夫か聞いた私へ、病院側からは明言を避けられた。
どうやって病院に辿り着いたのか、今でも思い出せない。
私はただ、物言わぬ抜け殻となってしまったお婆ちゃんを、見つめることしか出来なかった。
それからどれほどの時間そうしていたのか。
気がつけば伯父さんが来ていて、何やら色々な所に連絡を入れていた。
私にはお婆ちゃんしか見えない。
ううん。見たくない。
「聖奈ちゃん。母さんを看取ってくれてありがとう。
本当は伝えるべきだったのだけど、母さんが余計な心配をさせちゃダメだと……
いや、これは言い訳だね」
「………」
「母さんは私が来る度に言っていたよ。『聖奈が来てくれて嬉しい』って。
父さんも死ぬ時に母さんのことだけが気掛かりにしていたから、両親に代わって礼を言わせて欲しい。
最期に、母さんに幸せを届けてくれてありがとう」
「………う、うわぁぁあん!!おばーちゃーん!!」
その後の記憶はないの。
気付いたらお婆ちゃんは骨になっていて……
そして………
私はまた一人ぼっちになっていた。
「智也とこれからランチに行くんだけど、智也の友達もいるから、誰か一緒に行かない?」
このよく喋る女の子は川崎さん。
悪い子じゃないんだけど、私の苦手なタイプ。
その川崎さんが女子に人気の高い須藤くんを見せびらかす為に、また誰か犠牲者を探していた。
こんな風に思うなんて、可愛くないのはどっちなんだろうね。
「奈々。須藤くんの友達って?テニスサークルのあの人?それとも…」
「ごめん。そんなにイケてる人じゃないの。
でも物静かで空気を読める人だし、性格は良いと思うよ。
見た目も智也には敵わないけど、可もなく不可もない感じかな」
「えー!!誰よそれ?」
何て言い方……
まぁ、須藤くんと会う時は、私は絶対誘われないから関係ないけど。
女子校育ちの私は自分の見た目の評価が大学に入るまでわからなかった。
大学に入って、やっと自分の見た目がいいってわかったけど……
嬉しいことは何もなかったなぁ。
友達()には敬遠されることも多いし。
あなた達の彼氏に興味はないよ?私オタクだし。
「東雲くんっていう人なん『私も行って良い!?』えっ!?」
聖くんだ!!
条件反射で応えたけど…まぁいっか。
「え、えぇ。良いわよ」
川崎さんはプライドが高いから、自分より見た目の評価が高い私を誘うことはないけど、そのプライドの高さからみんなの前で断ることも出来なかったみたいだね。
あれ?何か私…黒くなってる?
まぁいっか。
「まさか聖くんが商売を始めてたなんて……予想外だったけど、渡に船かな?」
元お婆ちゃんの家に帰った私は仏壇に今日の出来事を報告すると、考えを纏めた。
「と、すると。ううん。聖くんは色々勘違いしてるから……
家出を演出する方向でいけば…」
うん。しっかりと真っ黒だねっ!
でも、聖くんの優しさに付け込めれば一緒にいられそうだね!
「まさか……異世界転移してたなんて…」
嘘でしょ……
もうすぐ売りに出される元お婆ちゃんの家に帰った私は、今日知った驚愕の事実を反芻した。
「もうお婆ちゃんはいない……私に残された選択肢は人形のように生きる。
あの世へ行く。
この二つだけかと思っていたのに……」
聖くんに会えただけじゃなかった。
聖くんはやっぱり私の救世主だ。
ううん。ここまでいくと神さま?
あれ?月の神様もいるんだから聖くんが神様の可能性も?
そして、異世界には天使もいた。
ありがとう。聖くん。
世界が敵ばかりでも、もう大丈夫。
私は貴方に救われたよ。間違いなく。
これからは私が貴方を……
でも、私との出会いを忘れてることは許さないからね?
※二つの間話は、もう一人のぼっちのお話でした。