テラーノベル
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ショートホームルームが終わり、放課後になる。今日はクラス委員の集まりはなく、真っ直ぐ帰れそう。南ちゃんと絵美ちゃんと。 勿論、一緒に登下校してくれるのは嬉しいんだけど。私は……。
「おい! 誰が帰って良いと言った?」
その声と共に長谷川くんが間に入ってきて、私に学生鞄を押し付けてくる。
「えっ?」
「お前は荷物持ちだろ? 逃げられるとでも思っていたのか?」
まさか放課後までと思っていなかった私は、ただポカーンとしてしまったが。
「あ。うん。そうだよね。ごめんね、南ちゃん、絵美ちゃん。しばらく長谷川くんの手伝いすることになってて。また一緒に通ってね」
そう言い、早々に教室から出て行ってしまった長谷川くんに追いつこうと駆け出す。すると。
[うわぁー。媚びてる]
[男子だから? あざと〜]
その声に思わず足を止め、振り返ってしまう。
「良い子ぶっている」はその通りだから聞き流しているけど、「男子に媚び売っている」と思われるのは、嫌悪感を抱いている。
だからこそ、そんなつもりはないと言いたくて二人の元に戻るが、はっとなる。
だめ。二人はそれを口にしていない。そんなこと急に言ったら変だよ。
だけど我慢出来ない自分も居て、唇が小さく震えてしまった。
「こいつらに構ってる時間ねーから!」
長谷川くんはそう叫び、私は持っていた彼の鞄ごと引っ張られて行く。
階段を共に降りて行き靴箱に着いたら、少し冷静になっていて思わず一言呟いていた。
「……ありがとう」と。
「は? お前、命令されて礼言うのか? バカか?」
靴箱をバンっと閉め私を見ずに歩き出す姿に、逆にほっとしてしまう。長谷川くんが私を無理矢理連れ出してくれなかったら、感情のまま言い放っていたかもしれない。それに。
……正直なところ、最近一緒の登下校も少し負担だった。だからどんな理由でも、一緒に帰らなくて良い理由が出来たことはありがたかったりする。その為、不意に出た言葉だろう。
そんな自分に気付いた時、私は心の奥で溜息を吐く。また考えてしまった。それなら離れたら良いのに。でも私はそれをしない。だって一人になるのは怖いから。
浅ましい。
その言葉が、私にはピッタリだと思う。
長谷川くんがそんな気持ちを知ったら、きっと軽蔑するだろう。良い子ぶってるくせにお前の本性はそれかと、罵ってくるだろう。
そう言われたら、私は何も言い返せない。だって、事実なのだから。
「ありがとう」の言葉の意味を悟られなくて、ほっとしてしまった、さもしい私だから。よって、私は真っ直ぐな彼から距離を取り、その足元を見ながらただ付いて行く。
気付けば周囲は住宅街で、高校生だけでなく小中学生も下校していた。
聞こえてくる声は、みんな明るく、キラキラと輝いていて私とは大違いだ。
勿論、悩みは誰でもあると思う。悩みのない人間なんていない。
だけど、人の心が聞こえてしまって悩んでいるのなんて世界中で私ぐらいだろう。
どうして、こんな力あるのだろうか?
神様か悪魔か分からないけど、私にこんな人生を与えるなんてあんまりだよ。
ぶつけようのない怒りの感情に気付いた私は、そっと心に蓋をする。そんなこと考えても、この力は失くならない。
何度願っても消えなかったこの力は、一生私を縛りつけてくるだろうから。
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かかお