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水の魔女セレン(瑟伦)
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入国審査を終えたばかりの私たちを待っていたのは、歓迎の調べではなく、胸を突くような轟音だった。
ドカーン!!
空気が大きく揺れ、熱風が頬をかすめた。街の喧騒は、一瞬で耳を突くような叫び声に変わった。
村人「爆弾だ! またあの『笑う人形』が……!」
駆け出す警察官の後を追い、人だかりを割り込むと、そこには信じられない光景があった。
カレン「セレン、見ないで!下がって」
隣でカレンが私の視界を遮ろうとした。
しかし、ほんの少しの隙間から、目に入ってしまった。
小さな少女が、無邪気にこちらへ歩いてくる。その腕には精巧なピエロの人形。
少女の笑顔は、あまりに愛らしかった。
少女「パパ! 見て、これ!」
父親は微笑み返す。
少女「今日がお誕生日だから、特別なんだって!」
その瞬間、空気が凍りついたように感じた。
人形の胸元で、カチリ、と小さな音。
何かが、静かに世界を変えた。
水の魔女「逃げて!」
絶叫と共に、光と衝撃が私たちを包んだ。
私は地面に倒れ、強い衝撃に体を揺さぶられた。
カレン「セ……セレン、大丈夫か!」
彼は私を守るように駆け寄る。
水の魔女「大丈夫、すぐ元に戻る……」
私はそう呟きながら、再生の力を感じた。体は元に戻りつつある。しかし、胸に残る重い痛みが、心を締め付ける。
目を開けると、周りは病院の白い世界。鼻をつく消毒液の匂い。
カレン「気がついたか」
私は自分の足を見る。傷は癒え、肌も元通りになっていた。
水の魔女「あの親子は……?」
カレンは静かに拳を握りしめた。
「無事だった。君の叫びが聞こえたおかげで、みんな逃げられたんだ」
数日後、退院した私のもとに一通の手紙が届く。
『あの日、あなたの叫びがなかったら、私たちはここにいません。
あなたのおかげで、今日も手をつないで歩けています。ありがとう、魔女様』
小さな子供の絵が、手紙の端に添えられていた。
私はそれを胸に抱き、静かに涙を流した。
救えなかった命の重みは、消えることはない。
でも、まだ助けを求める誰かがいるなら――
私はまた立ち上がり、何度でもその手を握ろう。
それが、死ねない魔女として生きる私に許された、唯一の歩き方だから。