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昔、俺たち───ぺいんととしにがみは孤児院で暮らしていた。俺としにがみはどちらもいい環境で育ってはおらず、俺は家庭内暴力によって親は捕まり施設へと入った。しにがみは捨て子として施設に入った。
しにがみと初めて出会ったのは、俺が施設に入った頃。しにがみは生まれてから少しして施設に入ったため、年齢的には俺が上でも実際先輩のようなものだった。
『…ね、1人で寂しくないの?』
声をかけてくれたのは、しにがみの方からだった。相手はどう思って俺に声をかけてくれたのかはわからないけれど、みんなの輪から外れているのは誰が見ても目立つ人だったと思う。
───でも、俺はその時全然人を信じられなくて。…それもそうだ。親からは無数の暴力を受け、外にも出たことがないし、人間と話すというのは、親みたいに殴られ蹴られるものだとその時は思っていたから。
だからこそ、みんなが怖くて1人でいいって思ってた。
『…う、ん。1人でいいの。痛いから……。』
施設に入ったばかりの頃だったから、まだ体は傷だらけで絆創膏だらけだった。そのせいか俺は余計施設では除け者扱いされた。まぁ、当時は別になんてことなかったけれど。
───それでも、そのバカは俺に話し続けた。
『僕は痛いことしないよ。ぜーったいね!約束する。ほら、小指。』
しにがみから差し出された、細くて小さな小指。俺は当時よくわからなくて、怖くて、怯えていた。目の前の子は、嘘をつかないのか。父のように出ていかないとか言いながら出ていくのか、母のように愛してると言いながら大嫌いと言うのか…。 全てに疑惑をかけていたと思う。
それでも、俺は小指を差し出した。別に信じたいとか思ったわけじゃない。もしそれで言うことを聞かなかったら、嫌われると思ったから。
『ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本のーます!ゆーびきった!!』
相手は力強く指切りをして、俺に満面の笑みを向けた。正直、その時にはもうそいつが輝いて見えた。でも当時のしにがみはすごいくらい強引で…
『ほら立って!友達紹介するから!!』
『えっ、えっ…?!あっ、ちょっ、と…。』
無理に引っ張られた手は、痛くなかった。そして、後ろ姿が大きく見えたのは錯覚のせいだろうか。
『ほら!僕の友達!』
そうして連れてこられたのは外で、目の前にはしにがみよりも少し高い白髪の男の子が立っていた。一目見れば優しそうな雰囲気を持っていて、俺と違ってイケメンだった。
『よろしく。』
予想通り、そのしにがみの友達は爽やか系イケメンで、優しそうな雰囲気を醸し出していた。
『…よ、ろしく…?』
ぎこちなくなりながらも、俺は挨拶を返した。
『…っあ、なんか呼びにくいな…。』
ふとそう言ったのはしにがみで、俺としにがみの友達は確かに、と頷いた。
その時はみんなに名前はついていなくて今みたいな”ぺいんと”とか、”しにがみ”みたいなあだ名も名前もなかった。
だから、その時に子供の俺たちなりに頑張って名前を考えた。
俺───ぺいんとは、当時の名前は”ぺいん”。しにがみは、”しに”。しにがみの友達は、”ノア”。そうして俺たちは、3人で日々を過ごしていた。
───そうして、一ヶ月が経った頃。新しい子が入ってきたのだ。
ちなみに言って仕舞えば、その頃の俺はもう2人とは完全に仲良くなっていて、お互いにタメだったし、ふざけ合っていた。ただ、まだ人と関わるのは全然ダメだったけれど。
『…よろしく。』
全身怪我だらけで、体は細身の新しい子は、男の子だった。それに、その子は今まで出会った施設の子よりも断然除け者扱いされていた。
なぜならって言われれば、理由は明白。全身傷だらけで、絆創膏を貼ることも拒む。むしろ体調不良のことも言わないし。
…でも、1番は多分、頭にレジ袋を被っていたことだ。
人一倍変人で、誰からも好かれようとしなくて、誰とも喋ることを拒む。…単に言って仕舞えば、その子は1人行動ばっかりをしていた。
───でも、俺たちにはそんなの関係なかった。
『ねぇねぇ、レジ袋なんで被ってるの?』
しにがみはいつものように明るく質問をする。それに俺たちも興味津々にその子に何度も問いただせば、相手は諦めて質疑応答を始めた。
『…顔、誰にも見られないでしょ。だから安心する。』
『! 僕と一緒だ!俺も…片目隠してるから。』
その子と共通点があることを示すために、俺は右目を完全に隠している髪を指さすと、相手は少し口元が緩んだ。
『俺もフードかぶってなきゃ安心できないんだよねー』
そうして、ノアさんは喋ると、相手は少し視線を俺たちに向けるために上げる。
チャンスだ、と思った俺は咄嗟に聞いた。
『名前は?』
そうして、数秒して返ってきた返事は、少し予想していたものだった。
『・・・───ない。』