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ない、と答えた男の子は、俺たちと少し似ているんじゃないかと思った。
『じゃあ名前考えなきゃですね!あっ、僕はしにです!』
しにはそう言いながら、自己紹介をする。
『俺はノア!よろしくね。』
そうして、ノアさんも笑顔で自己紹介をする。そして、俺もこいつらに救われた時のように、自己紹介をした。
『俺はぺいん。仲良くしようね!!』
満面の笑みを、思いっきり彼に見せると相手は口を開けたまんまぽかんとしていた。
そうして、質問の答えしか返さなかった相手の言葉は、ふと一人歩きのように喋った。
『───名前、考えてほしい。』
初めて聞いたその子の意見に、俺たちは必死に名前を考えた。そうしてその時考えたのは、”トラ”という名前。…動物のトラの発音じゃなくて、今のトラゾーの発音の”トラ”ね。
そうして、トラは立ち上がって、少し口端を上げて喋った。
『俺はトラ。……よろしく、お願いしたいな。』
痛々しい手首を隠すように礼儀正しく言うトラに、俺たちは満面の笑みで”もちろん”と答えた。
───でも、こういう日常がいつまでも続くわけではなくて。
……………
『───それでは、みんな別れの挨拶をしましょう。』
ふと施設の人が言ったのは、施設の子が出ていくというため、別れの挨拶を言えとのこと。そうして出ていくことになったのは、ノアさんだった。
……………
「…その人は、施設の勝手な判断で出て行かされて…。だから、その施設の悪事を暴くとともにその人に、再会したいと思ってまして。」
そうして、ぺいんとさんは当時の話を終えた。
………いや、違うか。
「そっか。じゃあ───久々だね。ぺいん、しに。」
昔の名でそういうと、相手は固まる。…あれ?なんか反応悪くない?そう思っていると、2人の目には徐々に涙がたまる。
「えっ…えっ?えっ?!嘘?!?!」
「はぁぁぁぁぁぁぁ?!?!まさか…あんた…」
2人が驚いた顔をして、こちらを永遠と見続ける。そうして俺は、涙を流しながら答えた。
「へへっ、また会えて嬉しいよ。ノアは。」
お茶碗をひっくり返すほど、俺たちはドタバタとしながら抱き合った。似ているとは思っていた。もちろん、名前を聞いた時も。でも、俺はてっきり当時の名前のままいるだろうと思ってあまり確信を持てなかった。
…でも、聞けばよかったかな。少しでも疑った時に。
───2人の笑顔が、昔と一緒すぎてめちゃくちゃ疑いまくってた。…それに、トラもいるんだ…。
…いや、トラじゃないよね。
「ぺいんと、しにがみくん。…よく頑張ったね。」
俺が一言そういうと、2人はまたしても号泣してしまった。…だからと言って、俺が泣いていないとは一言も言っていないけれど。