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『ようこそ、レイ』
上がりかまちで、伯母のけい子さんが笑顔でレイさんを出迎えた。
ふたりの会話は、当然ながら英語だ。
伯父さんが長年シンガポールの駐在員だったから、この家はみんな英語がペラペラだったりする。
私が少し話せるのも、みんなに英会話を教えてもらったおかげだ。
とはいえ、今この家には私と伯母さん、伯父さんの三人しか住んでいない。
伯母さんの息子、良哉(りょうや)くんと拓海(たくみ)くんが、現在一人暮ら中だからだ。
良哉くんは四年前から新潟で仕事をしていて、拓海くんは二年前から大阪の大学に通っている。
今はその空き部屋を、外国人旅行者に貸しているというわけだ。
『レイ。
シェア・ビーには載せていなかったけど、レイは長期滞在だし、外食ばかりじゃ大変でしょう。
もしよければ、食事は私たちと一緒にどう?』
けい子さんはいつも、ゲストの滞在日数に合わせて食事の有無を尋ねる。
数泊しかしない人は、ほぼ行きたい飲食店があるからだ。
レイさんは目を細めて微笑んだ。
『ありがとうございます。助かります』
『なら、もし外で食べる日があれば連絡してね。
あとは宿泊のルール。
これに書いてあるから、目を通しておいて』
けい子さんは注意書きを渡し、もう一度微笑んだ。
『じゃあ、今日からよろしくね。
主人はあまり家にはいないから、わからないことがあったら、私か澪に聞いて』