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好きでもない女から触れられたくない。
自分の虐待《過去》が関係しているかもしれないが、女性から触れられるのが嫌だった。
強引に帰そうとしているのに、美和《彼女》は俺から離れず、部屋から出て行こうとしない。
本当に面倒な女。
はぁと溜め息が零れた。
「実は、この部屋には防犯カメラが設置してあります。客人を招いてパーティーなどをする時もあるので、防犯上の理由です」
「えっ?」
彼女は驚きの声を放ち、俺を掴むことを止めた。
「あなたのことが信頼できる人かどうか、初日と二日目の行動をカメラの映像で確認しました。家政婦としての仕事をしているか確認するためです。あなたはちゃんと《《仕事》》はしていました。けど、不自然な行動も映っていたんですが、覚えはありますか?」
俺がそう問いかけると彼女は
「あっ……。えっと……」
明らかに言葉に詰まった。
「勝手に寝室に入ったり、クローゼットを開けたり。仕事として依頼をしたのは、リビングとキッチン、浴室の掃除《《だけ》》だったはずですが?他の部屋には入らないようにとお願いしましたよね?」
美和《彼女》のその行動が実に不快だった。
「そ……れは……。良かれと思って、いろんなところがキレイになれば喜んでもらえるかなって」
「そんなことを勝手にする人なんて、信頼できるわけがない。弁護士に相談して何かの罪に当たらないか映像を提出してもいいんですが。これ以上大事にしたくなかったら、早くこの場から消えてください」
「ッ……!!」
彼女が何をしたかったのかわからない。
金品でも探していたか?もしくは俺の女の影を探っていた?
まぁ、そんなこともうどうでもいい。
エプロンも外さず、彼女は慌てた様子でマンションから出て行った。
…・――――…・―――
あっという間に、迅くんとのデート当日になった。
男性とデートって、何年ぶりだろう。
結婚する前に孝介と何回か食事に行ったことはあるけど。
もうこんなこと二度とないと思っていた。
あぁ、こんなに緊張したっけ?
私が泊っているホテルの前に、迅くんが迎えに来てくれる予定だ。
ソワソワしてしまい、約束の時間より少し前には外に出て待っていた。
すると――。
一台の見覚えのある車が目の前に止まった。
あっ、迅くんだ。
扉を開け、彼が車から降りた。
いつもと雰囲気が違う。
アイドルとか、俳優さんとか、芸能人みたい……。かっこ良い。
なんて思っていると
「お待たせ!さ、どうぞ」
助手席に迅くんが案内してくれた。
「あっ、はい」
あーもう、ドキドキする。顔、赤いかな。
車を走らせる。
「美月、今日可愛い」
「えっ?」
予想もしていない言葉をかけられた。
さらに頬に熱が帯びる。
「またそんな冗談っ……!」
「冗談じゃないけど。俺はいつもそう思ってる。けど、なんか今日は特別」
なによ、それ。何て返事したらいいの。
「迅くんの……。私服、初めて見たかも。いつもと雰囲気違って、カッコ良い」
ボソッと私が呟くと
「はっ?いつもカッコ良いだろ?」
何の迷いもなくそう言い切る彼。
嘘ではないから反論できない。
彼のその自信を私にも分けてほしいよ。
これからどこに行くんだろう。
<俺が考えるから>って言われて、彼に全部任せてしまったけど。