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「バカバカしい。オバケの何が怖いんだ。巨人化した姉ちゃんのほうがよっぽど怖いってのに」
……そりゃアナタ? お姉さまが巨人化されたら怖いに違いないですけども?
「有夏、ひとりで見て来てやるよ。オバケがいたら縄跳びのナワでふんじばってやる!」
「ちょっ、有夏!?」
「ふんじばってやーるぅぅーーー」
叫びながら有夏チャン、意外な身体能力を発揮して駆けて行った。
この人、アタシたちとは見えている世界が違うようだ。
ジャパニーズホラーの世界観で、どうやらこの人だけアメリカンナイズなホラー映画のフラグの立て方をしてくれる。
そう、霊や都市伝説をバカにし、舐めた態度をとる奴は真っ先に殺られるのが、アメリカンホラーの定石なのだ。
「あ、ありかぁぁ~~~!!!」
校舎に走っていく有夏チャンの背に、幾ヶ瀬は絶叫しながら手を伸ばす。
追いかけようと数歩進むも、ヨロヨロとその場でうずくまってしまった。
どうやら足が震えて動かないようだ。
稲川淳二先生を尊敬する幾ヶ瀬にとって、夜の校舎はホラーの聖地なのだろう。
そんな様子を録画しながら、アタシはネカフェの悪夢を思い出していた。
家出した(?)有夏チャンを追いかけた幾ヶ瀬が、ネットカフェでハッスルした一件だ。
「ヘンタイメガネの変態たる所以」って話だったっけ。
(「話」って言われても何のことだか分からないって? うん、そりゃそうだ)
あのときは、アタシも巻き込まれて大恥かいたっけな……。
それに比べたら今は周囲に人がいないから、気持ち的には楽だな。
もしも七不思議の霊がいたとしても、現実世界の人じゃないから気遣い不要だもん。
生きてる人のほうがずっと怖い。
生きてる有夏チャン、そして生きてる幾ヶ瀬のほうがずっと怖いんだ。
「うぅぅ……、番組を成功させなくちゃ……」
震える足を引きずるように這って、校舎に近付いていくYouTuber幾ヶ瀬。
ゆっくり歩いて後を追いながら、アタシは地面を這うヤツを記録し続ける。
なぁ、ヘンタイメガネよ、アンタの執念はどこからくるんだい?