違和感は、私自身の記憶にこそあった。
数分前の行動を、ひとつひとつ巻き戻すように思い返す。
「確か、そうアプリをインストールした!」
そしてインストールが完了した鑑定アプリたるものをすぐ立ち上げた。
「そんで…なんだっけ?…あーチュートリアルか!」
その言葉を発した瞬間、胸の奥にざらりとした感覚が走る。
チュートリアルとは 説明書のようなものだ。ゲームやアプリなら誰もが目にしたことがあるだろう。
リセマラのせいで煙たがられている、あの導入部分だ。
私は機械に弱い方ではないし、むしろ説明書はちゃんと読む性分だ。
だが、あの時の私は違った。
焦りと不安に追い立てられて、私はチュートリアルの文をただ連打し、流し見していた。
「だ、だって!どうせ写真や動画を読み込ませるだけでしょ?それ以外に何があるの?」
誰にキレてるのか分からないが、
そんな苛立ちもあって、気付けば説明をすべて飛ばしてしまったのだ。
――だが、あの時。
確かに目にした。ほんの一瞬。
『とある文章』を。
「……なんだっけ?」
思い出そうとしても、ぼやけて掴めない。
流し見していたせいで、記憶は靄に覆われている。
私に速読の才能なんてない。にもかかわらず、どうしてその一文だけが引っかかっているのだろう。
「確かめなきゃ…」
チュートリアルを見直すには、設定から呼び出すしかない。
だが、その機能がついていないアプリも多い。
生憎このアプリは後者だった。クソッ!
つまり、一度削除し、再インストールするしかなかった。
「……面倒くさ!..まあ、やるけどさ‼︎」
私はアプリを削除し、再びインストールする。
そして立ち上げた瞬間、例のチュートリアルが始まった。
「今度は、絶対に見逃さないんだから!」
画面に表示される文字を、私は息を詰めて凝視した。
ひとつ、またひとつと説明が流れていく。
そして――
その途中で、見てしまった。
違和感の正体となる、一文を。
理解した瞬間、背筋を氷のような寒気が貫いた。
心臓が跳ね、視界が震える。
そこに書かれていたのは――
続く
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