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汗かいてないかな、格好で浮かれてるって思われないかな、花束なんて重たかったかな。心配事は次から次へと溢れてきて、息苦しくなり渡してすぐ出ようなんて言ってしまった。慌ててこの会を終わらせたくなく散歩を申し出ると、店は個室だったからいいものの、外を歩くとなると身バレの心配をする様に周囲を見回す。でもまあいいかと笑って了承してくれた。
「ちなみになんで花束なの?あと、来る時カバンしか持ってなかったよね。どうやって隠してたの?」
どきり、と大きく心臓が一拍跳ねる。やっぱり不審がられたか。
「あー、なんかロマンチックじゃない?花ってだけで。それに前若井が言ってたけど、涼ちゃんはステージに咲く1輪の花だからね。あと隠してたんじゃなくてデザートに悩んでる間に店員さんに持ってきてもらった」
実は勢いで告白できるかななんて思っていたが、結局流れていってそんなムードではなくなった、なんて言えるはずもなく適当な言い訳を並べる。懐かしいねえと微笑む君をみて、あぁ、涼ちゃんはやっぱりこの笑顔だなと愛おしくなる。もどかしさもありつつ久しぶりにゆっくり散歩なんて出来て楽しくて時間を忘れそうだった。
ふと、公園で砂が舞う様子が見えた。まるで夏の花のようで、その花が散るころを思って夢を見る。それをあたかも会話の一つとして綺麗だと言うかのように口から自然に言葉が出てくる。
「好きだ」
「……え?あ、ナポリタンの話?」
なんで花からナポリタンになってんだよ。立ち止まって、涼ちゃんの方を向く。
「ううん。涼ちゃんのことが好き。大好き。俺もどうしようも無いって思うくらい頭の中は涼ちゃんなの。わざわざ2人でなのも、花束も、全部全部好きだからだよ」
きょとんとした目が、大きく見開かれる。ごめんね、俺は意地悪だから。涼ちゃんに近付きたい人がいても、想いを伝えないと気が済まない。
「涼ちゃんには近付きたい人がいるって言ってたよね。分かってるんだけど…。キモいよね、メンバーで男なのに好きだなんて。ごめん。俺なんか口走ってた。だから、その…」
俯いてしまい、君の顔は見えないが息を飲んだのが分かった。唇が震える。目頭も熱くなってきて、これだけは伝えておこうと覚悟を決めた刹那だった。
「っ好きだよ!!」
今後も気にせず接してほしい。そう言ったつもりだったが、君の叫びに似た言葉に遮られた。反射的に顔をばっと上げると、今にも泣き出しそうな涼ちゃんが。
「…僕も元貴が好き…!っえと、だいぶ前から。いつからかは覚えてないけど。あぁ、あとそれに、その例の人は元貴だよ。僕の方こそキモいよね、気付いてくれればいいのになって隠しながら相談して…」
と、テンパりながら答え合わせをする様に事実を連ねる。嘘、だろ。じゃあ気づけてなかったのは俺だったのか。
「…ほんと?」
「ほんと。元貴の事大好き。あ、わ、若井がそんな事ない訳じゃないよ!?ただベクトルが違うってだけで…」
何か言っているが、気にせず抱きしめた。この前とは違う、通じ会えたハグを。なんだ、涼ちゃんの心臓の方が早いくらいじゃん。もっと近くで聴きたくて、胸に顔を埋める。暖かい。そのうち優しく2つの腕で背中を包み込まれた。
涼ちゃんの笑顔が好き。匂いが好き。人一倍気配り屋さんなのに、自分のことになると疎いのも好き。
伝えたい事は沢山ある。でもこの雰囲気を変えたくなくて、あ、俺また変えたくないなんて言ってる。矛盾だなあ。少しずつ学んでゆけばいいか。自分で結論を出し、暫くこのままにしていた。
が、一つ大事なことを忘れていた。ここまで来たなら、愛を込めて今、特別な関係になりたいから。少し背の高い君は、胸から顔を離し上を向けば涙目でん?と反応してくれる。
「一応聞くけど、俺と付き合って…なんて言ったら引く?」
「え…!引かないし、むしろいいの?ミセスがあるし、若井もなんて言うか…」
「若井には恋愛相談してたから大丈夫」
何そのドヤ顔!?てか若井も知ってるってこと!?と君は笑いながらつっこむ。頬に涙が伝い、美しくて見とれていると、気付けば拭うようにキスをしていた。
「えへ、ちょっとしょっぱい」
かぁぁ、とみるみる赤くなる。表情豊かで可愛い。あれ、口に出てた?ふふ、涼ちゃんもっと真っ赤だよ。
「元貴ぃ…もう〜、僕でよければだよぉ」
大粒の涙が溢れだし、きつく抱きしめられる。
涼ちゃんの涙で、こんなに枯れて欲しくないと思ったのは初めてだ。幸せを滲んできた視界で噛み締めた。
◻︎◻︎◻︎
読んで下さりありがとうございます!
やっとくっつく事ができた2人。暖かく見守って頂きありがとうございました。これにて一旦完結です。
Folktaleは大好きな曲なので、沢山聞く分ちゃんとイメージしたものに出来上がったかなぁと感じました。この後は番外編みたいな短編も上げれたらいいなと思っています。感想お待ちしてます!
次も是非読んで頂けると嬉しいです。