テラーノベル
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白い天井をぼんやりと見上げながら、西畑大吾は静かに目を開けた。
そこは病院だった。
手首には点滴がつながれ、体のあちこちが鈍く痛む。
けれど、何よりも__胸の奥が温かかった。
真理亜:「……気ぃついたん?」
耳に届いたのは、懐かしくも優しい声。
視線を横にやると、椅子に座って、真理亜がこちらを見つめていた。
目の下には薄くクマができていて、髪も少し乱れている。
それでも、彼女の表情は穏やかだった。
大吾:「……なんで、ここに……」
大吾がかすれた声で尋ねると、真理亜は微笑んだ。
真理亜:「助けに行ったの。みんなで。……私も」
大吾:「……あんな録音、送ったんやな……」
真理亜:「うん。……怖かったよな。でも、送ってくれてありがとう。気づけて、よかった」
二人の間に、しばし沈黙が落ちた。
けれど、その静けさは、心地よく感じられるものだった。
大吾:「なあ、真理亜ちゃん」
真理亜:「ん?」
大吾:「……あのときのこと、覚えてへんって、言うてたやろ」
真理亜は少し俯いて__それから、ゆっくりと顔を上げた。
真理亜:「……思い出した」
その一言で、大吾の目が大きく見開かれた。
大吾:「ほんまに……?」
真理亜:「うん。……あの地下室で大吾くんを見た瞬間、全部、ぶわって戻ってきた。泣いてた君の手を引いて、家から逃げ出したこと。……怖かったけど、君の手が震えてて、私、ぎゅって握ってた」
大吾は、何かをこらえるように唇を噛んだ。
大吾:「……ずっと忘れられへんかった。そのときのことも、君の顔も。でも君は、俺のこと、もう忘れてるんやろなって……勝手に思って、苦しくなって……」
真理亜:「忘れてたんじゃない。……なくなってたの。思い出すまでに、時間がかかっただけ」
真理亜は、大吾の手をそっと握った。
その感触は、昔と変わらない。小さな手の中にあった、確かな温もり。
真理亜:「思い出した今、改めて伝えるね」
彼女は、まっすぐに大吾の瞳を見つめた。
真理亜:「助けられたのは、私の方。あのとき君を助けたことが、私の心を支えてた。……ありがとう、大吾くん」
大吾の瞳が、静かに潤んだ。
大吾:「……ありがとう、真理亜ちゃん」
少しして、病室の扉がノックされた。
丈一郎:「おーい、入ってええか〜?」
和也:「うわ〜、お見舞いチーム到着やで〜」
恭平・丈一郎・流星・和也・謙杜・駿佑の6人が、花や果物、そして何故か風船まで抱えて病室に入ってきた。
流星:「大ちゃん〜!生きとったか〜!」
恭平:「やっぱモテるな。命がけでヒロインに記憶取り戻させるとか、少女マンガか!」
大吾:「うるさいわっ!」
大吾が思わず笑いながらツッコんだそのとき__
真理亜の隣で、確かに「笑顔」が咲いた。
それは、過去と現在が繋がった証。
そして__
これから始まる、未来への第一歩だった。
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