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「デート」

「デートだな」

「お忍び」

「デート」




黒い髪も、見窄らしくないが、別に高級感をかもしだしていない服も、何だか見ていると、前世の遥輝を彷彿とさせる。リースと、遥輝って似ていないはずなのに、どうしてこうも、前世の姿が重なるんだろうってくらい、遥輝が浮かんでくるのだ。中身が、遥輝だから! なんて、これは理由にならないし。

私の髪も、黒に染めたけど、前世はこんな長くなかったし。でも、外ハネって所はちょっと似ているかも知れない。リースは目の色を変えていないが、私は、あの瞳の色は目立つから、という理由で、変えている。




「エトワール」

「ひゃっ」

「わ、悪かった。いきなり、手を繋ぐのは……そうだな、驚くよな……」




と、リースは、申し訳なさそうに言う。


私は、別に大丈夫だから、とリースに伝え、全力で首と両手を横に振った。本当か? と、怪しげな目で見てくるので、そこまで、神経質にならなくて良いから、と私はリースの背中を叩いた。

私自身、緊張というか、デート前夜は修学旅行前の子供くらい眠れなかったし、今も、初恋人デートというこの状況というか、全てにドキドキして、神経を張詰めている。だから、どっちが、神経を張っているんだ、と言われたら、どっちも、と答えるだろう。それくらい、お互いが緊張している。

リースはもっと、スマートというか、こういうの緊張しないし、なれていると思っていたけれど、私に合わせて(こんな所あわせてもしょうが無いのだが)神経質になってしまったのかも知れない。そう思うと、本当に申し訳ないけど。




「で、デートだから、楽しまなきゃ!」

「そうだな。プランも立てた」




と、リースは、顔色を変えて、私の方を見た。清々しいほど輝く笑顔で言われてしまい、私は言葉を失ってしまった。だって、矢っ張りすっごく格好いいから。


推しの顔だけど、そこに遥輝らしさがプラスされて、本来のリースでは出せない魅力を醸し出しているのだ。




(眼服……)




リースは、この日の為に、デートのプランを立ててくれたという。スマホがないから、連絡の取りようがなかったし、全部リースにお任せ! って感じにしていたから、どんなプランかは分からない。まあ、リースのことだし、全て完璧にしてしまうんだろうなって言うのは予想がついていた。


私には勿体ない完璧彼氏。

でも、私だって、運動が出来ないだけで、リースよりも頭が良かったし、顔は普通だったかも知れないけど……いや、コミュニケーション能力が皆無だからから、社会的に活躍できるかっていわれたら……そうじゃないんだけど。




「どうした?エトワール」

「え、ああ、嫌なんでもないの。えっと、でも、気になることがあって……」

「気になること?」




リースは、首を傾げた。

完全に、その場ののりで、気になることがある、と言ってしまったが、別にそこまで気にしなくてもいい問題だ。でも、前のリース、遥輝とは違うって思っているから、何というか聞きたかった。

立ち止まっていてもあれだから、と言うことで、リースが立ててくれたプランに沿って、歩きながら話すことにする。




「それで、気になることって何だ?もしかして、敵の話か」

「て、敵の話って……違う。そうじゃなくて……えっと、何て言えば良いんだろう。リースってさ……リースってさ、というか、遥輝ってこんな性格かなあと思って。あ、悪い意味じゃなくて、始めてここでリースとして出会った時、完全にリース!って、違和感なかったというか、若干俺様が入っているというか、上からめせんな感じが凄くリースっぽくて」

「つまり、朝霧遥輝だったときと、今の俺とでは違うと言いたいのか?」

「そ、そう!」




少しだけ、ムッとしたような表情で、リースが私を見た。聞かなきゃ良かったかなあ、何て思ったけど、ここまでいってしまったんだから、戻れない、と私はリースを見た。彼のルビーの瞳が私を捉えた後、スッと逸らされた。

矢っ張り言いたくなかったんじゃないかと。




(というか、敵って……よっぽど神経張詰めてるんだなあ)




日常単語で、敵、何て言葉出てこないだろう。リースもリースで追い詰められていると、私は感じていた。彼が、戦場では指揮を執っているわけだし、皇太子としての責務やら、責任やらが伴ってきているとしたら。彼の仕事量は、私が想像する以上だろう。

忙しいのに、デートの時間を作ってくれたことに感謝しつつ、そんなデートをぶち壊してはいけないなっていう感情にも駆られる。

リースは暫く黙っていた後、答えが出た、と言わんばかりに口を開いた。



「その方が……お前の想像するリース像の方がやりやすかったから……というか」

「うん」

「まあ、言ってしまえば、俺はバレなかったんだ。リース・グリューエンに転生したとき。確かに、右も左も分からなくて、慌てていた。だが、俺の補佐官の男が、俺の知り合いだったんだ」

「補佐官って……え、ルーメンさん!?リース、ゲームの世界に知り合いがいたの?」

「違う……というか、お前は気づいていなかったのか」




と、リースは呆れたように言った。


初耳だった。ルーメンさんが、転生者だったなんて。全然そんな風に思わなかったし、寧ろ、モブだとも思っていた……マニュアル通りに動く、リースの片腕みたいな。

でも、ルーメンさんも転生者だと。

私が、リースに、あり得ないという目で見れば、リースは補足をするように続けた。




「……俺の親友と言えば、誰か分かるか?」

「えっと、灯華さん……だよね。確か、日比谷灯華……さん。だったよね」

「そうだ」




と、リースは、コクリと頷いた。


私は、人のこと、フルネームで覚える癖があったから、大体は、言えるんだけど、まさか、そんなことってあり得るんだ、と深く感心していた。だから、リースとルーメンさんの関係というか、雰囲気に見覚えがあったんだと。




「って、いうことは、ルーメンさんは私が転生者ってこと知ってるんだよね!?私、今まで気づかずそれでずっと話していたってこと!?」

「まあ、そうなるな。俺の、愚痴も惚気も聞いて貰っていたしな」

「は、恥ずかしすぎる。惚気ないで」

「惚気てなんぼだろ。エトワールが可愛いという話は、何度しても飽きない」

「……」




恥ずかしすぎて、何も返せなかった。それを悠々と語るものだから、もっと何も言えなくて、私は俯くことしか出来ない。

本当に、ルーメンさんが灯華さんで、遥輝の親友だったら……いや、実際そうなんだけど、そうだからこそ、それもあって恥ずかしかった。私は、ルーメンさんの事、ずっとモブAとして関わってきたのに。あっちは知っていて、私は知らなかったと言うことなのだ。因みに、この様子だと、リュシオルは全て知ってそうだけど……




(複雑というか、私だけ除け者!)




もっと早く教えてくれても良いじゃないか、と叫びたかったが、こんなこと知って何になる、とか言われそうだった。まあ、言われれば黙っているけれど。そうじゃなくても、驚きの連続だった。惚気るのだけは、やめて欲しいけど。




「ああ、それで、話がそれたな」

「もう、お腹いっぱいだよ……ルーメンさん、そうだったんだ……まあ、仲が良いように見えたし」

「そうだな。俺の親友だからな。彼奴も転生してくれたから、助かってる」

「灯華さんも……というか、リースは、ゲームを立ち上げたら転生したとか言ってたよね。灯華さんはどうだったんだろう」

「さあな。聞いたが、忘れた」




と、リースは興味なさげに言った。そこは、重要だろう、と突っ込みたかったが、リースが、本当にどうでも良いことだ、と言うのでそれ以上は突っ込まなかった。親友のことなのに、それでいいのかとは思ったけれど、リースが良いというのなら、それでいいのだろう。




「俺が、リース・グリューエンらしかった、という話だったな」

「あ、うん。そう……ああ、でも話したくなかったら別に」

「話したくないわけじゃない。ただ、ここにいない人のことだから、どうしようと思っただけだ」

「ここにいない?リースの憧れの人を模倣したとか?」




そう私が言えば、鋭いな、とでも言うように、リースは、フッと微笑んだ。まあ、見ていれば、そんな感じするよね、とは思ったけど。

それから、リースはピタリと足を止めて、空を見た。黙々とした白い雲が悠々と漂う空。この間までは、災厄で曇天だったから、青空がこんなに美しいって思えるのは久しぶりだった。平和の証拠とも言う。




「憧れの人がいたんだ……エトワールとのデートで、他の人の話をして悪いと思っているが聞いてくれるか?」




そう言って、リースは振返った。ルビーの瞳が私を見つめていた。


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