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夜。
歯磨きも終わり、寝る準備も済ませた二人。
ベッドに入ると、部屋の明かりは間接照明だけになった。
静かな夜。
海斗は布団にもぐり込み、ふぅ、と息をつく。
その隣では。
凛花は横向きになってスマホを見ていた。
海斗:……。
凛花:……。
スマホをスクロール。
海斗:凛花。
凛花:んー?
視線はスマホのまま。
海斗:寝ないの?
凛花:もうちょっと。
海斗:さっきも聞いた。
凛花:あと五分。
海斗:十分前も五分だった。
凛花:時間って不思議だね。
海斗:不思議じゃない。
凛花:えへへ。
海斗:笑ってごまかした。
凛花:ばれた。
またスマホを見始める。
海斗は少しだけ頬を膨らませた。
海斗:……。
凛花:……。
海斗:凛花。
凛花:んー。
海斗:構って。
凛花:あとちょっと。
海斗:またそれ。
凛花:もう少しで見終わるから。
海斗:何見てるの?
凛花:猫がひたすら転ぶ動画。
海斗:……。
凛花:可愛い。
海斗:俺より?
凛花:え?
海斗:猫と俺。
凛花:何その質問。
海斗:答えて。
凛花:猫。
海斗:即答。
凛花:だって猫だよ?
海斗:傷ついた。
凛花:大丈夫。
海斗:何が。
凛花:海斗も可愛い。
海斗:慰めになってない。
凛花はくすっと笑う。
それでもスマホから目を離さない。
海斗:……。
凛花:……。
海斗:ねえ。
凛花:んー?
海斗:ほんとに構って。
凛花:あと三分。
海斗:減った。
凛花:成長した。
海斗:じゃあ俺も成長するか。
凛花:?
海斗はゆっくり凛花の方へ寝返りを打った。
凛花はまだ気づかない。
海斗:凛花。
凛花:んー。
海斗:最後にもう一回だけ聞く。
凛花:なあに?
海斗:スマホ置く?
凛花:置くかな……
一瞬考える。
凛花:……い。
海斗:そう。
凛花:あとちょっとだけ―
海斗:却下。
凛花:え?
スマホを持っていない方の手首を軽く掴まれる。
凛花:ちょ、何?
海斗:構ってくれないので。
凛花:そんな理由!?
海斗:十分です。
凛花:スマホ落ちる落ちる!
海斗:じゃあ置いて。
凛花:ずるい。
海斗:置いて。
凛花:……。
凛花はしぶしぶスマホをサイドテーブルへ置いた。
凛花:はい。
海斗:ありがとう。
凛花:これで満足?
海斗:いや。
凛花:え?
海斗はにこっと笑った。
その笑顔を見た瞬間。
凛花:……やだ。
海斗:なにが?
凛花:その笑顔見たことある。
海斗:そう?
凛花:絶対ろくなことしない顔。
海斗:よく覚えてる。
凛花:ほら!
海斗はそっと凛花の腰を引き寄せる。
凛花:ちょ、近い近い。
凛花、逃げようと、避ける。
海斗:逃げないで。
逃げようとする凛花をさらに引き寄せる。
凛花:逃げる。
海斗:却下。
凛花:また!?
海斗:今日は構ってもらえなかったから。
凛花:ごめんつて。
海斗:反省してる?
凛花:してる。
海斗:ほんとに?
凛花:……。
海斗:その間は何。
凛花:ちょっとだけ。
海斗:じゃあ罪。
海斗がゆっくり凛花のお腹へ手を伸ばす。
凛花:待って。
海斗:ん?
凛花:その手も見覚えある。
海斗:あるね。
凛花:やめよう?
海斗:やだ。
凛花:お願い。
海斗:やだ。
凛花:お願い。
海斗:聞こえません。
凛花:横暴!
海斗:スマホ優先罪。
凛花:そんな罪ない!
海斗:今できた。
凛花:また独裁国家!
海斗:そうです。
凛花:全然成長してない。
海斗:してるよ。
凛花:どこが!
海斗:前より手際がいい。
凛花:それ成長しなくていい!
海斗は凛花を後ろから抱き寄せる。
逃げ道はない。
凛花:やだ、待っ……
海斗:それ。
指先でお腹をくすぐる。
凛花:きゃっ、あはは!
海斗:構ってくれた?
凛花:それとこれとは、あははっ、別っ!
海斗:別じゃない。
さらに脇腹をくすぐる。
凛花:あっ、あはははっ!!
海斗:スマホと俺。
凛花:比べるものじゃ、あははっ!
海斗:どっち見る?
凛花:海斗!海斗だから!
海斗:早いな。
凛花:お願い、くすぐらないでっ、あははっ!
海斗:まだ笑う元気ある。
凛花:ないないっ!
海斗は少しだけくすぐる手を速くした。
凛花:やっ、あはははっ!無理っ……!
海斗:ちゃんと構ってくれる?
凛花:構うっ!
海斗:スマホばっかり見ない?
凛花:見ないっ、見ないからぁ!
海斗:ほんと?
凛花:ほんとっ……あはっ、降参っ!
海斗:よし。
ぴたりと手が止まる。
凛花:はぁ……もう……。
海斗:勝ち。
凛花:ずるい……。
海斗:構ってもらえた。
凛花:くすぐりで?
海斗:結果オーライ。
凛花:良くない。
海斗はくすっと笑う。
そして今度は優しく頭を撫でた。
海斗:今日はいっぱいスマホ見たから。
凛花:うん。
海斗:今は俺の時間。
凛花は少し照れながら笑う。
凛花:……分かりました。
海斗:いい返事。
凛花:でも一つだけ。
海斗:ん?
凛花:明日仕返しする。
海斗:受けて立つ。
凛花:覚悟して。
海斗:その前に。
凛花:?
海斗はそっと凛花ほ額にキスをした。
海斗:おやすみ。
耳元で囁く。
凛花は一瞬固まり、耳まで真っ赤になる。
凛花:……それは反則。
海斗:お互い様。
凛花:くすぐるよりずるい。
海斗:効果あった?
凛花:……あった。
海斗:よかった。
凛花は小さく笑うと、今度は自分から海斗の腕にくっついた。
スマホはサイドテーブルの上で静かなまま。
部屋には二人の穏やかな笑い声だけが残り、そのまま寄り添って眠りについた。
コメント
1件
ああーもう、尊すぎてにやけた……😭💕 海斗くんの「構ってくれないので」が完全に拗ねた子どもで可愛すぎるし、くすぐりで黙らせるとこも、最後の額へのキスも、ずるいよな(褒めてる)。凛花ちゃんが「明日仕返しする」って言いながら恥ずかしそうに寄り添うの、完全に甘やかされてるやつじゃん。スマホ放置して二人で寝るラスト、ほんと好き。おかゆさんの描くバランス、天才すぎます……🥀