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「おい、お前、彼女を狙ってるのか? それとも俺が彼女に惚れているのを知って、わざと言ってるのか? 女にだらしがないお前が言うと、彼女に手を出しそうに聞こえるぞ?」
「まさか。高村さんは、あくまでも部下。彼女はまだ入社して一年半くらいだったかな? 仕事は早いし丁寧だし、周囲に気遣いできる優秀な部下だよ。あ、そうそう、試作品の検査と梱包、彼女がやってくれたんだよ」
純がビールを一口飲んだ後、タコわさびをつまむ。
「…………そうだったのか」
急ぎの案件にも関わらず、送られてきた試作品は、丁寧に梱包されていて、気遣いを感じた事を思い出す。
あの試作品を検査、梱包したのが奈美なのかと思うと、豪の胸の奥が熱くなっていく。
ここで彼は思いつき、ビジネスバッグからシステム手帳を取り出した。
ペンを握り、メモパッドに豪のフルネーム、プライベートの携帯番号とメールアドレスを書き、純に手渡す。
「これ、彼女に渡してくれるか?」
手に取ったメモをチラリと見ながら、純が瞠目した。
「豪……。お前、高村さんにプライベートの連絡先を教えるって事は…………本気なのか?」
豪は小さく首肯する。
ったく、しょうがねぇな、と言いつつ、純は財布を取り出し、札入れにしまい込む。
豪の連絡先が書かれたメモを、貴重品扱いにしてくれるようだ。
「間違って捨てんじゃねぇぞ?」
「わかってるよ。中学時代からの親友の頼みだ。気が向いたら、高村さんに渡しておいてやるよ」
「気が向いたらって、何だよそれ」
居酒屋の賑わいを耳にしながら、豪と純は酒を飲み続けた。
その時。
豪のスマホ画面が光り出すと、確認をした瞬間、顔を顰めた。
——メッセージ受信:岡崎 優子
奈美と出会う前に別れた元カノだ。
念のため、内容を確認してみる。
『豪。会って話したい事があるので連絡下さい』
(ってか、今更……何なんだよ)
「優ちゃんか。この前飲みに行った時に、別れたって言ってたよな?」
豪の表情に目敏く気付いた純は、メッセージの相手が誰か、すぐに分かったらしい。
「ああ。別れてから三ヶ月以上過ぎてる」
豪の元カノ、岡崎優子とは三年間、恋人関係だっだ女。
純にも紹介した事もあるが、優子に好きな男ができたと言い、豪の元から去っていった。