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第67話:社会のしくみ
午前の授業。
水色のシャツに濃いグレーのパンツを履いたまひろは、机の上の学習端末を前に背筋を伸ばしていた。
教壇には緑のスーツに黒縁メガネの教師が立ち、淡い緑色のパネルを指差して説明を始める。
「今日は“大和国の社会制度”について学びます」
画面には三つの項目が映し出される
イ・法律による安心
「地震・津波常備法」「火事法」「未来防犯法」。
教師はゆっくり読み上げる。
「すべては安心のために。法律を守ることで国民は平和を実感できるのです」
ロ・配給と協賛
次の画面にはスーパーの映像。
緑の制服を着たレジ係が映り、商品に「協賛ラベル」が貼られている。
「協賛品を選ぶと、市民ランクが加点されます。これが“安心の食卓”を支える仕組みです」
ハ・娯楽と教育
画面に人気キョウテイの動画が流れる。
ラベンダー色のブラウスを着た女性エンターテイマーが、料理を紹介しながら明るく言う。
「今日も見てくれて協賛ありがとう!」
コメント欄には「協賛ありがとう!」「安心だね!」の文字が並ぶ。
教室にざわめきが広がり、まひろは小声で隣の席の友達に言った。
「ぼくのお母さんも、動画を見るたびに“協賛ありがとう”って口にするんだ」
友達はうなずき、真面目な顔で答えた。
「うちもだよ。言わないとコメント数が減るってニュースでやってたから」
教師は穏やかな笑みを浮かべ、まとめに入った。
「法律・配給・娯楽。すべてが安心のために結びついている。これが大和国の社会制度です」
その頃、暗い部屋で緑のフーディを羽織ったゼイドがモニターを見つめていた。
市民が唱和する「協賛ありがとう」のコメント数が、グラフとして並んでいる。
ゼイドは低く呟く。
「安心の制度、協賛の声……。本当は支配の数値なのに、市民は自ら声を揃えて差し出す。制度が文化になった時、縛りは消えて安心に化ける」
画面の中では、笑顔の子どもたちが「協賛ありがとう」と唱え、授業を終えていた。