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るしゅ
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第4話 見てしまった瞬間
ホールの空気は壊れていた。
誰もが、さっきの“鏡”のことを頭から追い出せない。
陽菜
「今の……何……?」
圭吾
「見間違いだろ……そうだろ?」
玲奈
「……全員が同じ見間違いをするとは思えないわ」
湊
「じゃあ何なんだよ……!」
沈黙。
答えは出ない。
紫苑は手の中の鍵を握りしめた。
まだ、ほんのり温かい。
紫苑
「……これ、何かあると思う」
拓真
「鍵なんて山ほどあるだろ普通」
紫苑
「でも、この屋敷で“普通”って通用するか?」
誰も否定できなかった。
その時。
小さな音がした。
カタン……
全員が振り向く。
音のした方向。
廊下の奥。
暗闇の中で、何かが動いた気がした。
真白
「……今、何か」
美月
「……見た」
湊
「誰かいるのか!?」
返事はない。
ただ、静かな廊下が続いている。
蓮
「……確認するべきだ」
拓真
「またかよ……」
蓮
「放置する方が危険だ」
その言葉には、妙な説得力があった。
結局、数人で様子を見に行くことになる。
紫苑、湊、蓮、圭吾。
廊下はやけに長く感じた。
さっきまでこんなに長かったか?
空気が重い。
足音が響く。
コツ……コツ……
その時。
圭吾
「……あれ」
少し先。
右側の部屋の扉が、わずかに開いていた。
紫苑
「……さっき閉まってなかったか?」
湊
「……閉まってた」
誰も触っていない。
なのに、開いている。
蓮が静かに近づく。
そして、扉に手をかける。
蓮
「開けるぞ」
ギィ……
ゆっくり開く。
中は暗い。
だが——
誰かがいる。
背中が見える。
部屋の中央で、しゃがみ込んでいる人影。
圭吾
「……誰だ?」
その人物が、ゆっくり振り向いた。
——奏だった。
奏
「あ、なんだ。みんなか」
一気に緊張が抜ける。
湊
「脅かすなよ……何してんだよ」
奏
「いや、なんか落ちててさ」
床を指さす。
そこには、小さな箱があった。
紫苑
「箱?」
奏
「開けてみようと思って——」
その瞬間。
蓮の表情が、わずかに変わった。
蓮
「触るな」
奏
「え?」
一瞬、遅かった。
カチッ。
小さな音。
次の瞬間。
奏の体が、ビクンと跳ねた。
奏
「……あ、れ」
紫苑
「!?」
奏の首元。
細い糸のようなものが、張られていた。
気づいた時にはもう遅い。
糸が、ゆっくりと——
食い込んでいく。
奏
「まっ……て……」
手で外そうとする。
だが、指が震えてうまく動かない。
圭吾
「やめろ!動くな!」
奏
「たす……け……」
声が、途切れる。
糸がさらに締まる。
紫苑
「くそっ!!」
駆け寄ろうとする。
だが、蓮が腕を掴んだ。
蓮
「行くな」
紫苑
「離せ!!」
蓮
「もう間に合わない」
その言葉と同時に——
ブツン
糸が外れる。
奏の体が崩れ落ちる。
ドサッ。
静寂。
誰も動けない。
紫苑
「……嘘だろ」
ゆっくり近づく。
奏は、もう動かなかった。
目は開いたまま。
苦しそうな表情のまま。
喉元には、深く食い込んだ赤い線。
圭吾
「……罠、だ」
湊
「こんなの……仕掛けたの誰だよ……」
誰も答えない。
ただ一人。
蓮だけが、箱を見ていた。
蓮
「……単純なワイヤートラップだ」
圭吾
「分かるのか?」
蓮
「見れば分かる」
淡々とした声。
感情がない。
紫苑は違和感を覚える。
——なんでそんなに冷静なんだ。
その時。
紫苑は気づく。
奏の手。
何かを握っている。
震える手で開く。
中には——
また、鍵。
これで二つ目。
湊
「……やっぱり、死ぬと手に入るのか」
紫苑
「……」
その瞬間。
後ろの暗闇で、何かが動いた。
紫苑は反射的に振り向く。
誰もいない。
でも、確かに。
“誰かが見ていた”。
第4話終