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4 - 第3話:ふれる影

2025年06月06日

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第3話:ふれる影
放課後の空気は、夕焼けに薄く染まっていた。

ユイはカーディガンの袖を伸ばしながら、静かな廊下を歩く。制服のスカートの裾がふわりと揺れ、肩にかかる黒髪が背中にすべる。


その日、彼女は何度も振り返っていた。

誰かが後ろに立っているような――そんな感覚。


「……気のせい、だよね」


昇降口の下駄箱で靴を履き替えるとき、何かがポケットの中で軽く揺れた。

ユイはハッとして、財布を取り出す。


“まるいもの”は、今日もそこにいた。

見た瞬間、彼女の息が止まる。


模様は、人の手のひら――しかも、小さな子どものもののようだった。


「手……?」


そのとき、ふっと、左肩に“ぬるい空気”が触れた。

まるで、誰かがそっと手を置いたように。


慌てて振り向く。けれど、廊下には誰もいない。

ただ、遠くのガラス窓に映る自分の影の隣に、もう一つの影が重なっていた。


それは――小さな子どもが立っているような形だった。


「……だれ?」


けれど声は返ってこない。影はユイが動けばすぐに消えた。

心臓がドクドクと鳴るまま、彼女は早足で校門を出た。


帰り道、駅の近くの自販機の前で、誰かが落とした白いハンカチを見つける。

かわいいクマの刺繍がついた、それはまるで子どもが持っていたもののようだった。


「……ここにいたの?」


ユイはそれを拾い上げて空を見た。

夕暮れの光の中、影はもう一つにはならなかった。


家に帰って財布を開くと、“まるいもの”はやっぱりそこにある。

けれど、模様は――もう消えていた。


その夜、ユイは夢の中で、小さな手が自分の手をそっと握るのを感じた。

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