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5 - 第4話:やさしい嘘

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2025年06月07日

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第4話:やさしい嘘
昼休みの教室。

ユイは窓際の席で、頬杖をついて空を見上げていた。

瞳の奥に疲れの色をにじませながら、ストレートの黒髪を指先でゆるく巻いている。

制服のリボンは少し曲がっていたが、直す気にはなれなかった。


「ユイちゃん、これ……昨日、貸したやつ。ありがと」


隣の席の澄音(すみね)が、そっとプリントを差し出した。

ユイはうなずいて受け取る。

でも澄音の目は、どこか伏せがちで、声も少しだけかすれていた。


そのとき、財布を取り出そうとした拍子に、“まるいもの”が音もなく転がり出た。

澄音が気づく前にユイは慌てて拾い、そっと光にかざした。


そこには、ハートの形――しかし中央には細かなヒビが走っていた。


「……なに、これ」


瞬間、教室の空気がやけに静かに感じた。

遠くで誰かが笑っているのに、音だけが薄い。


放課後。帰り道の公園、ユイは一人ベンチに座っていた。

澄音と一緒に帰る予定だったのに、「今日は寄り道してくから」と笑って言われた。


(嘘だって、わかってるよ)


澄音の声は、あの日“ユイが泣いた理由”を知っている声だった。

でも、問い詰めても仕方がない。

彼女はきっと、ユイのために“気づかないふり”をしてくれている。


「……やさしい嘘って、ずるいよね」


ユイは“まるいもの”を取り出して見る。

ヒビの入ったハートは、いつのまにか小さく輝く光に変わっていた。


その瞬間、スマホに澄音からの通知が届く。

「なんか元気なかったね、ごめん。今度ジュースおごる」


画面を見つめながら、ユイはほっと息をついた。

胸の奥に、ちいさな光が灯った気がした。

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