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帰りの電車に揺られ、夕日が落ちてゆくのを眺める。周りにいる人は、俺と同じ高校生やサラリーマンの人がほとんどだ。それにしても、転校生の世話って…。何をすれば良いのだろう。そもそもそんな大切なこと俺がやって大丈夫なのだろうか。
最寄りの駅に着き、預けていた自転車を押しながらいつもの道を通る。そうか。来週から夏休みなのか。去年の夏休みは父親がいたからそれほどバイト三昧という訳ではなかった。でもこれといって思い出はない。友達とどこか行ったわけでもなく、彼女がいた訳でもないからほとんどどこにも行っていない。強いていえば、父さんと祖父母の家に行ったくらいだ。今年もきっと、何もないだろうな。
そして夏休みに入り、バイト先へ向かっていた時のこと。近道をしようと、細い裏道を通っていたら1人の少女が向かってきた。同い年くらいの、小柄で、ストレートの長い髪をなびかせている。白色のワンピースに、大きな麦わら帽子を深く被っていて、顔はよく見ることが出来ない。手には大きなキャリーケースを持っていて、この狭い道ではとても運びづらそうだ。
「君、大丈夫?」
「…え?」
と、上がった顔はなんというか、とても可愛らしかった。小さな顔に、ぱっちりとした瞳。思わず
「可愛い…」
と言ってしまった。
慌てて彼女を見ると透き通るような白い頬が、ほんのりとピンクに染っていた。
「あ、いや!ごめん!」
咄嗟に謝ると、彼女はふるふると首を振った。
「それ、手伝おうか?」
と、聞くとさっきと同様、首を振るだけだった。
すると、彼女はぺこりと会釈をし、そのまま行ってしまった。
「また会いたいな…。」
と、そう思った。