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引越しから1週間たちようやく学校に慣れてきたころ、教室ではホームルームが行われていた。
「それでは、最後に先生から」
「今から部活の入部届用紙を配ります、これから体験入部等を1ヶ月設けます。それも踏まえた上で入部届を出してください、別に必ず入部しろというわけではないです」
めぐみは心の中でため息をついた。
放課後、教室に残った4人(めぐみ、海斗、愛菜、誠)は、部活のことで盛り上がっていた。
「俺何やろっかな」
「私は家庭科部!」
「俺も家庭科部!笑」
「は?、来るなし笑」
「うそうそ、おれはバスケ部かな笑笑」
「めぐみは?」
「んー、」
(入る気なんてない、だって私は….)
そう、彼女は部活に入らなくてもいい、いや、入る時間がないほどの事をしているのだから….
悩んだ末に出した答えは
「私は、、じ、柔道部かな….笑」
「は?!」
「めぐみ、柔道できるの?」
「え、まあ、うん、少しね笑」
全員ありえないという目でめぐみを見つめる。
めぐみは引きつった笑みを浮かべたのだった。
校庭の横を通りながら帰っていた4人。
スタ、スタ、スタ
「にしても、あー松田だりぃ」
「ほんとよね、いきなり漢字テストとかナメすぎ」
「あいつは何考えてるかわかんねーよ笑笑」
(はぁ、部活か….)
と、その時柔道着を着た男子2名が近寄ってきた。
「ねぇ、君たち柔道部に入らないか?」
「男子も女子も部員大歓迎!」
「ちょうどいいじゃんめぐみ!」
「あー、そうだよお前やって来いよ」
「え、いや、でも….」
本当は入るつもりなんてない、でも入ると言ってしまった。どうしよう….
「じゃあ体験でもいいからおいでよ」
「大丈夫、簡単なやつしかやらないから!」
ここまで言われた以上断るのも無理がある。
それ以前に3人が自分を見つめてくるから尚更だ。
「分かりました、じゃあやります」
「ほんと、ありがとう!!」
「じゃあ案内するから一緒に柔剣道場に行こう」
「じゃあめぐみ、私たち先に帰ってるね!」
「頑張れよー笑」
「う、うん、、、アハ」
翌日
移動教室で教室に向かっていた海斗と誠は3年生の教室の前を通った。すると、昨日勧誘に来ていた先輩たちと目が合った。直後、慌てたように飛び出してきたかと思えばこんなことを口にしたのだ。
「おい、お前ら昨日あの勝原ってやつと一緒だったヤツらだな!」
「は、はい、そうっすけど」
「どうしました?」
「あ、あの子なにもんだよ!」
「は、え?」
なにもんも何も無い、彼女は自分たちの同級生だ。
「いや、同級生っすけど」
「そうじゃねぇよ、あの子なにかスポーツやってるって言ってなかったか?」
「え、いや、聞いたことないっすけど」
「何かあったんですか?」
「ここまで慌ててるってことはなんかあったんすよね?」
すると先輩はおそるおそる話し始めた。
「昨日お前たちと別れてから勝原には基礎練習をやってもらったんだ」
「そうっすか」
「でもあの子、俺たちがいつも息切れしながらやっている基礎練を疲れた表情一切見せずにやってのけやがったんだよ」
「マジっすか、すごいっすね」
すると先輩はさらに衝撃的なことを口にした。
「それだけじゃねぇんだ」
「え?」
「あの子はその後にやった実践練習で全日本4位のこいつを1本背負いで投げ飛ばしやがったんだよ!」
「は、はい?」
信じられなかった。だってあのめぐみが、いつもにこやかにしているごく普通の女子であるめぐみが、男子を一本背負い?ましてや全日本4位の人間を?
海斗と誠は信じられないまま教室に向かっていった。
その日の夜、塾の帰りだった誠はいつもの道とは違う道から帰っていた。しばらく歩いていると
ドン、ドン
どこかから何かを打っているような音が聞こえるのだ。本当に小さい音だったが周りが静かだったこともあり、はっきりと聞こえた。どこかで祭りでもやっているのかと思っていたが歩いていくごとに音は大きくなっている。
バン、バン
そしてその音が、何かを打っていると言うよりも叩いているようなかわいた音が聞こえる。
気がつくと1つの一軒家の前にいた。ブロック塀になっているが高さは自分の目くらいまで、音もこの塀の中から聞こえる。興味津々だった誠はそっと塀から顔を出した。
中は芝生になっていて、一部に砂場のような場所もある。目の前にはおおきな木も。
そしてその木の目の前で、少女が叩いている。いや、押しているのだろう。髪はハーフアップだろうか、いやいや、そんなことはどうだっていい。もっと驚きなのは少女の姿なのだ。
学校の体操着を着ているのはいいのだが、白い帯のようなものを巻いている。
(あれって、もしかして、、、)
テレビでよく見る、相撲のまわしだ。まわしをつけた少女が木を押しているのだ。
「ご飯できたわよ〜」
明かりのついた家の方から母親であろう女性の声が聞こえる。少女が家のほうへ向く。
(!!!)
少女は縁側から中へと入っていった。誠は驚きのあまり声が出なかった。その少女が家の方に向いた時に明かりで顔が見えてしまったのだ。
その少女は紛れもなく勝原めぐみなのだから。