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冬の長期休暇に入る前
会社全体で呑み会があった。
そこでの幹事は、新入社員という事で
山下くんと新名さんだった。
山下くんの乾杯で、皆盛大に乾杯した。
そして山下くんは、キャリーケースを持っていた。
どうやら途中で、実家に帰るらしい。
ま、どうでもいいんだが。
私は目の前に並べられたサラダと、お肉をお皿に取り分けた。
周りは皆呑んで盛り上がっているが
私は食べる専門である。
そして、途中から席もローテーションとなった。
「音ちゃん呑んでるー?」
「はい」
そう横から話しかけてきたのは、4つ上の大山先輩だった。
そして上司から、佐倉さんこっち来てと呼ばれ
私は上司の隣に座った。
「俺が音ちゃんの隣がいい〜!」
「いや俺!」
なんて声も聞こえたが無視。
そう言えば、山下くんの姿が見当たらない。
もう実家に帰ったのかな。
「佐倉さんは、芸能人で言うと誰がタイプ?」
そう上司が私に言ってきた。
「芸能人ですか?」
「そう。あ、これセクハラじゃないよね?」
「…えっと」
私は、前からかっこいいと思っていた俳優の名前を言った。
良かった、通じた。
なんせ10歳離れてる上司だったので、話通じるかなと。
そのうち、周りの先輩達がその俳優のモノマネをしてきた。
「写真撮ろ写真!」
と、誰かが言ってきたので、私は渋々カメラに向かってピースをした。
「佐倉さん、ありがとね。こんなおじさん達に囲まれてねえ」
と上司が言ってきたので、私はその場を退散した。
はぁ、疲れた。
みんな酔すぎだし、ついていけない。
社会人ってこうなのか。
お酒を呑んで来なかった私には、知らない世界だった。
少し外の風を吸おうと思い、お店の外に出た。
すると、キャリーケースを持った山下くんが外の喫煙スペースでタバコを吸っていた。
「げ、」
いた、ここに。
私の変な声に気づいたのか、山下くんがこっちを見た。
「呑んでんの?」
と、一言言ってきた。
そこには、いつもと違ったような、落ち着いた山下くんがいた。
「少しね」
「そ」
「…家に帰るの?」
「そう、もう行かないと」
「気をつけて」
山下くんは何も言わず、ただタバコを吸っていた。
ってか
「臭い」
「お前がそこにいるからだろ」
「…」
私も、そろそろお開きにして家に帰ろうかな。
皆二次会行く気満々だし。
「じゃ、俺行くけど。楽しんでな」
「ばいばい」
「お前も一緒に来る?」
そう言って山下くんはくすくす笑った。
「行かないし!」
「ふ。じゃあな」
そう言って山下くんは、皆に挨拶をし
お店を後にした。
山下くんの実家は自営業らしい。
ゆくゆくはその会社を継ぐために、この会社に入ったとか。
心底どうでもよかった。
上から目線で見てくるし、未だに電話来るしで。
相変わらず、私は山下くんが嫌いだった。