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2月に入り、とても寒くなってきた。
冬の中で1番2月が寒いのでは無いかと私は思う。
そして、相変わらず山下くんから偶に
LINEが来る。
【今週鍋パーティーでもしよう】
鍋、、。
確かに鍋の季節でもあったが。
【なんで?】
【なんでって、鍋食べたいだろ】
【別に】
【今現場で社宅にいるから来いよ】
あぁ、そう言えば山下くんは大山さんと2人で
横浜の方の現場へ常駐する事になったみたいだった。
なのでここ半年はずっと、その横浜にいるらしい。
ってことは、大山さんもいるってことかな。
【大山さんは?】
【いるよ。だから皆で鍋パーティーしようぜ】
大山さんがいるなら安心だし
それに今週は、たまたまバイトも入れていなかった。
【まあいいよ】
そう言って、私は山下くんの誘いに初めて
おっけーをした。
入社して、間もなく一年が経とうとしているが
初めて、山下くんの誘いを受けた。
まあいつも、今日呑もう、明日呑もうだの
急だったから困ったし。
てか2人は有り得ないし。
その日、私は家を夕方に出た。
向かった先は、自宅から一時間半程かかった田舎だった。
そしてまた、駅からバスに乗るという。
山下くんがバス停まで迎えに来てくれるとの事だった。
大山さんもいるのかな。
それから10分程経って現れたのは
山下くんひとりだった。
「よ」
そこには相変わらずの山下くんがいた。
ジャージだった。
「…久しぶり」
「だな」
同期だけどひとつ上の山下くん。
年上に見えないけど。
「買い出し行くか」
「うん」
鼻がとても寒かった。
特に会話は無い。
久しぶりすぎて、何話そう。
「あ、彼女さんは?元気?」
山下くんとこうして会うのも、数ヶ月?冬の会社の呑み会以来だったから、何となく聞いてみた。
「別れたよ」
「え?!」
思わず声を張った。
「なんで!?」
隣を歩く山下くんは、特に理由は言わなかった。
元々、自分の事をあまり喋るタイプではない。
彼女がいることも、私が質問して答えてくれただけだった。
「スーパーここ」
気づいたら目の前にはスーパーがあって、ここがよく行くスーパーだと言ってた。
ローカルスーパーらしい。
「なに鍋するんだっけ?」
山下くんがカートと買い物カゴを持つ。
「豆乳鍋」
私が答えた。
「いいね」
食材を探し、カゴの中に入れていった。
「そう言えば大山さんは?」
「あー、今日結婚式らしくて」
「大山さん、結婚するの?」
「いや、知り合いの」
「あー」
なんだ。知り合いのか。
「終電で帰れたら帰るらしい」
「そうなんだ」
これは、帰ってこないパターンだな。
結婚式は二次会とかあるでしょ。
ってことはこいつとふたり。。
「他なんかいる?」
ふたりで鍋か。
「あ、ヨーグルト欲しい」
さりげなく私は言った。
「好きなの取ってきて」
山下くんはやっぱり、表情を変えること無くそう言った。
そしてお酒も買った。
「お前どうせこれだろ」
と言って、アルコール度数が低いジュースのようなフルーツのお酒を数本カゴに入れ、お会計をした。
私もお金を半分出そうとした時
「いいよ」
と山下くんは静かに言った。
「え、なんで」
「今日は、お金を遣いたい気分」
そう言った。
遣いたい気分?そんな気分なんかあるんだ。
「そう、ありがとう」
よく分からなかった。
「ま、ここまで来るのにも交通費掛かったと思うし」
山下くんは、袋の中に食材を入れていく。
意外と優しんだな。
なんて感じながらも、私も袋の中に食材を入れていった。
ふたりで鍋を作った。
というかほとんど私が作った。
私達は鍋を食べた。
「これ見てる?」
そう言って、携帯を見せてきた山下くん。
「なにこれ」
「恋愛バラエティ番組」
「見てない」
それは、今流行りの恋愛バラエティ番組だと言う。
「てか、、山下くんってそんなの見るんだ」
意外だった。
恋愛系なんて見なさそうなのに。
顔的に。
「これだけね」
普段はお笑いやゲーム実況を見るという。
確かに、顔はそっち系だ。
山下くんは、顔が濃い。
焼けた肌に、眉と目が近くて、海の男って顔。
私の王子様タイプとは全然違った。
「てか、電波悪いわ」
「あら」
「お前の携帯貸して」
「いいけど」
「このアプリ取って」
私は、山下くんが言ったアプリを取り
私の携帯で、その恋愛バラエティ番組とやらを見ることにした。
続きからだったので、よく分からなかったけど
「この子可愛いわ」
なんて、山下くんは独り言を言った。
「確かに」
私も、可愛い子には興味があったので反応した。
それからよく分からない恋愛バラエティ番組をふたりで黙々と見たのであった。
「そろそろ寝るか」
気づけばもう、夜の11時になっていた。
「やば、もうこんな時間」
「泊まってけば?」
山下くんが言う。
「泊まるって、、」
「大山先輩も帰って来なさそうだし」
「…」
いやそういう問題では無い。
「着替えとか」
「下着?」
山下くんは笑って言った。
いや、それもそうなんだけど!!
「パジャマも無いし」
「何でもいいなら俺が貸すけど」
「…」
「終電もうないんじゃん?」
仕方ない、、か。
「布団1枚しか無いけど」
山下くんはそう言った。
「寒いし一緒に寝るか」
「えーー」
「いや布団ないし」
確かにこの部屋は寒かった。
「仕方無いな」
私はそう言って、色々と済ませ布団に入る事にした。
その後山下くんも布団に入ってくる。
あたしは山下くんに背を向けるように寝る。
「お前って」
「…なに?」
「誰かとこうやって寝たことあんの?」
山下くんはそう言った。
「…別に?」
「へー」
すると突然、山下くんは私に手を回し
後ろから抱きつくようにくっついてきた。
「ねえ!」
「寒いから」
「そういう問題じゃないでしょ」
「どういう問題?」
「…あのねえ」
私は振りほどこうと考えた。
だけど、よくよく考えたらどうでも良かった。
山下くんをそんな風に見れないから。
「だから彼女にも振られるたんじゃん」
さりげなく言ってあげた。
「関係ないし」
「…」
「じゃあ、子守唄歌うわ」
「はいはい」
山下くんは、私の耳元で歌を口ずさんだ。
「…」
だけどそれは、不思議と嫌ではなかった。
なんだろ、眠たくなってきた。
声のせいかな?
山下くんの歌う声は、とても優しくてなぜか心地よかった。
それから私は間もなくして寝てしまった。
そこからの意識はほとんどない。