本当の居場所

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黄side

｢さて、失恋した青ちゃんのこと、

よく知ってるのは橙くんだよね｣

｢なんで、言わないの？｣

｢………..｣

｢まぁ、僕は、問い詰めないけど

それとも言い難いことなの？｣

｢それこそ知りたい..ていうか

2人ともなんで喋んないの｣

僕の声だけが響く部屋。

橙くんも言いにくそうにしてるし

大丈夫かなこの空気感。

てか話せよ。

｢….だんまりじゃ、分からない｣

｢……じゃあ僕から話す｣

｢っ、！！｣

｢まさか失恋した本人..

まぁそれが一番かもな｣

そして青ちゃんの口からは

昔の恋人に別れを告げられて

苦しめさせていたのにも関わらず

謝られ、許してくれたこと。

それに自分を苦しめるようになり、

辛くなり、良心が傷んでしまったよう。

桃くんの事もなかなか思い出せない。

どうしたらいいか迷っていること。

僕には抱えきれない。

そう言っていた。

｢…桃くんのこと、何も、分からない｣

｢紫くんのことばっか考えて

そんでぐるぐる考えっぱなしで｣

｢仕事、なんか頭になかった

ごめんなさい、ふたりとも｣

｢…青ちゃんの昔の恋人は

生き返ったんですね、へー。｣

｢…僕が殺したあの子は、

もう帰って来ませんし｣

｢その生き返った事を喜んだ事、

ちゃんとしたんですよね。｣

｢僕も橙くんの恋人もいない

僕らが解剖してきた人達だって

もういなくなっている｣

｢..いっ、てない｣

｢、、、そうですか

まぁそこは..まぁいいです｣

｢..とにかく今は、青ちゃんは休む

僕はもうこれからいいません｣

｢あとは橙くんですね、

今日は定時でしたしたーくさん

話せますし、….。ね？｣

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ここは近くの公園で

超人気のない所。

橙くんはずっと顔を伏せるだけだった。

｢…黄｣

｢俺ちょっと言いたい事があって｣

｢うん、どうぞ。｣

｢俺｣

｢恋人殺した｣

｢….へぇ｣

｢殺してたん、話せんくてごめん

ずっとあっちからDV聞かされてきた｣

｢しんどすぎていっつも、

切ってるカッターで。｣

｢最大に刃を伸ばして、

1回向かってみたら｣

｢手に当たった時に、

姿勢崩れて俺の事見上げた時｣

｢気付いたら刺した｣

｢………………｣

そこがいちばん重要すぎて

それ以外はあんまり頭に入らなくて、

ただあの通り魔事件の犯人と

マブで裏で色々していたこと。

意味わかんないけど、

なんとなーく心境はわかった。

｢あのね、僕も言いたいことあるよ｣

これは僕がずっと言いたかった言葉。

｢僕、幸を殺した罪で、

刑務所に行こうと思う｣

ただの僕の、覚悟。

幸には悪いことをしすぎた。

顔と体の中だけ知ってるのに、

僕が何度も夜に想った人。

僕の居場所はあそこじゃない。

僕は、刑務所にいるべきなんだ。

そこじゃなきゃ、また僕は許す。

自分を軽く見て許してしまう。

そんなのはだめ。

僕にとっての戒めにならない。

目を瞑ってもらえたから

楽に歩いていけという話ではない。

もう、ご遺体を見た時に思う。

幸の、顔が。

一瞬張り詰めた顔が。

あの苦しそうな顔が。

そこでそのご遺体と重ねてしまう。

そうしたらメスを入れる手を止める。

だから、僕は幸の名前を縫った。

そうしたら、メスを入れる時間が、

少しだけ短くなるから。

そこで覚悟してのぞむ。

｢きっといける。｣

そう思って。

僕の本当の居場所は刑務所。

きっと法医学でこんなことをした、

というのは前代未聞の事件だ。

僕の名は悪い意味で有名になる。

きっと授業にも掲載される。

僕は最低野郎だけど

決意はあるから。

何年も悩んできた結論。

僕は僕に甘えない。

それだけだった。

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橙side

俺的に、この状況を

変えるのはこいつだと思ってた。

青が精神的に参って、

その時救いの手を差し伸べるのは黄。

そして笑いかける。

それから、幸せになる。

それが俺の見たプラン。

だけど黄も一応苦しんだ人だ。

大好きで売りの職業が、

たった1人の少女の件で壊され

一生背負わなくてはならない。

俺は、黄が抱えた決意が、

恐ろしく強かった。

この状況どうやって変えよ。。

とりあえず赤と紫くんは

仲良く2人で暮らしてる。

紫くんは赤の家でしか暮らせず

今は2人とも楽しそうだ。

だがやがて赤も自首しに行くと言ってた。

それはきっも紫くんが

1人で暮らせるようになったら、だろう。

対して青。今はかなりやばい。

とにかく上手くいかなくて参ってる。

桃の事も最後に惑わされた紫くん。

とにかく2人とも好きすぎて

ハーレム状態なのに超病み中。

それに黄は多分今すぐ、と言うほど

自首しようとしているんだろう。

そうなれば取り残されたのは俺ぐらい。

てか普通に犯罪者が多すぎる。

俺だってこのことを誰かに言えば

言うつもりだったし、しないなら

死ぬ気でいるほど覚悟は固まってた。

どうすれば、いいのだろう。

全部がズレ始めている。

俺だけが正そうとしていても、

みんなは歩みをとめてくれない。

ズレ始めてしまえばヒビが入り

メリーどころかバットエンド。

まぁ赤と紫くんを除いて。

とにかく今奪還すべき問題は青。

慰めでは生きられない青。

もしこの関係が、話ならば

青が間違いなく主人公なのだ。

｢…それより、橙くんも、

一緒のところ来てくれますよね？｣

｢、、当たり前やろ｣

｢2人でお巡りさんの迷惑になるの？

笑えるなぁ、2人仲良しだねーって

思われちゃうかもしれないね｣

｢しかも2人とも、法医学..w

それに殺人の罪っていうね｣

｢これいちばん面白いポイントね｣

｢…とりあえず、俺は青の家に行く｣

｢え、ほんとに？救う気？｣

｢ちげぇわ｣

｢あいつに早く桃のこと、

思い出して欲しいだけ｣

｢ほら、俺らももどかしいやん？

自分から知りに行かなあかんやろ｣

｢へー、そっか、行ってらっしゃい｣

｢あ、でも｣

｢もし思い出してたら手遅れだね｣

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青の家

｢青！お前鍵開けっぱかよ！！｣

｢…….橙くん｣

青の手元にはどこかしまっていた、

誰かとの写真があった。

｢…、それ｣

｢あ、これ、これは｣

｢僕と、桃くん｣

｢！！！｣

｢綺麗な顔立ちで、可愛くて

面白くって、僕を満足させてくれる｣

｢それにゲームが本当にうまくて、

あとね、声が印象的なんだ｣

｢僕が忘れてた時もずっと呼んでた｣

『許さない』

｢そう言ってたよ｣

｢..やっぱお前｣

｢桃くんのこと、思い出した｣

｢だいすきな人の、おもいで｣

｢おれ、だいすきだよ｣

こんなにも、苦しんでいる瀬戸際に

夢を見せない神様は最低だと思う。

俺だって見せてもらえない。

残酷なのは見せるくせに。

苦しめるくせに。

ずっと、残酷なの見せてきて。

青にも見せて、桃にも

黄にも赤にも紫くんにも

俺にも。

みんな、辛くなった。

それぞれ抱えた。

1人は誰かも分からない、

声すら知らない奴を想っていた。

1人は死に際の彼を

身をかける思いで想っていた。

1人は悶えながら苦しんで

最後まで誰かを想っていた。

分からなくたって気づける

お前は絶対死なない。

もう十分に苦しんだ青には

神様の意地悪は効かない。

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次回最終回

やっと思い出した

あの日の記憶