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仙崎ひとみ/九龍
#異世界
公爵邸の豪華なキッチン・夜)
エルナ
(……はぁ。王宮に戻れなんて、今さら言われても困るのに)
エルナ
(……また、前世みたいに冷たい牢屋に閉じ込められるのかな……)
(トクン、と胸が痛む。エルナは無意識に自分の腕をさする)
(背後で扉が開く音)
アルフレッド
「……こんな時間に何をしている」
エルナ
「公爵様!? す、すみません、ちょっと落ち着かなくて……何か夜食でも作ろうかと」
アルフレッド
「…………。」
(アルフレッドが無言で近づき、エルナの手から包丁を取り上げる)
エルナ
「えっ?」
アルフレッド
「座っていろ。……今日は、私が作る」
エルナ
「……はい!?」
エルナ
(『氷の死神』と恐れられる公爵様が……料理!? 地球がひっくり返るんじゃ……)
(アルフレッドが、不慣れな手つきでパンを焼き、チーズを乗せる)
アルフレッド
「……火加減はこれでいいのか? ……くそ、魔法の方がよほど簡単だ」
エルナ
(……ぷっ。あんなに真剣な顔して、チーズを見つめてる……)
エルナ
「ふふ、公爵様。チーズが焦げちゃいますよ?」
アルフレッド
「……黙っていろ。……ほら、できたぞ」
(差し出されたのは、少し形が崩れた『とろとろチーズのホットサンド』)
アルフレッド
「毒見は不要だ。……私が、お前のために作ったのだから」
エルナ
「……いただきます」
(パクッ、と一口食べる。チーズの温かさが心に染み渡る)
エルナ
「……美味しい。すごく、温かいです……」
(エルナの目から、一粒の涙がこぼれる)
アルフレッド
(……ッ!?)
(アルフレッドが慌てて、指先でエルナの涙を拭う)
アルフレッド
「……泣くな。あんな男の言葉に、価値などない。……お前の居場所は、ここだ」
アルフレッド
「いいか。お前が作る料理も、お前自身も……すべて私が守ってやる」
エルナ
「……公爵様……」
エルナ
(……あれ。心臓の音が、さっきからうるさすぎる……)
(その時、キッチンの影から「パシャッ」という音が……!?)
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