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風が木々を揺らし、不規則な音を立てる。そのたびに拓真の心臓が跳ね上がった。亮太と共に、あの男に言われた通り森の奥に向かったのは軽率だったかもしれない。
「こんな場所に本当に‘証拠’があるのかよ。」亮太が苛立ちを隠せない声で言う。
拓真も同じことを思っていた。あの男が放った言葉——「狼男がいる場所を知りたいなら、ここに行け」——を信じるべきではなかったのだ。
しかし、言葉を口にする前に、異音が二人の耳を打った。
「今の、聞いたか?」
「風じゃないのか?」
そう答えた亮太も既に顔を青ざめている。音は深い低音の唸り声だった。そして次の瞬間、音の正体がはっきりと現れた。
木々の間から、巨大な影が姿を現したのだ。
体毛は灰色に覆われ、鋭い爪と牙が月光に照らされて光っている。人間のようだが、その顔はまさに狼そのものだった。
「……本当に狼男だ。」拓真は呆然とつぶやいた。
亮太がスマホを取り出そうとしたが、狼男の鋭い視線がそれを止めた。まるで自分の行動が読まれているかのようだ。
「逃げるぞ!」拓真が亮太の腕を引っ張る。
しかし、走り出した途端、背後からの音が明らかに迫ってきた。枝が折れる音、地面を蹴る音、低い唸り声が二人を包み込む。
その時、突然狼男が跳びかかってきた——と思った瞬間、どこからか鋭い閃光が森を照らした。
「そいつに近づくな。」
再び現れたのは、黒いスーツの男だった。手にした銃口から、まだ煙が立ち上っている。
「君たちは関わるべきじゃない。」
そう言った彼の目は、狼男のものよりもずっと鋭く、恐ろしいものだった。