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「これは、改良じゃない。改悪だ。」
黒いスーツの男の言葉が、静寂を取り戻した。拓真と亮太は、言葉の重みを理解する間もなく、彼の手に握られたデバイスを見つめていた。狼男の正体に関わる重要な手がかりだった。
男はデバイスを指しながら続けた。
「彼らも元は人間だ。だが、ある実験によって‘改悪’された。」
「実験?」拓真は息を呑んだ。
男は頷き、デバイスを操作すると、そこに映し出されたのはラボのような施設の映像だった。無機質な白い空間で、檻に閉じ込められた人間たちが暴れる様子が映し出されている。だが、彼らの体は明らかに変化していた。毛皮が生え、爪や牙が異常に発達していく過程がスローモーションで記録されていたのだ。
「どうしてそんなことを……」亮太が震えた声で尋ねる。
男は静かに答えた。
「兵器として利用するためだ。」
拓真は思わず口を挟んだ。「誰がそんなことを?」
男は一瞬沈黙した後、低い声で言った。
「……政府の一部だ。いや、正確には政府の影で動いている組織だ。」
その言葉に、二人は目を見開いた。政府が関与しているとなると、単なる恐怖の物語では済まされない。
「俺たちはどうすればいいんだ?」拓真が問いかけると、男は深く息を吸い込み、森の奥を指差した。
「君たちはここから離れろ。この件に関わるほど、君たちの人生は改悪される。」
その瞬間、再び森の奥から低い唸り声が響いた。
男が振り向くよりも早く、数匹の影が現れる。今度は一匹ではない。複数の狼男たちが、地面を蹴り、歯をむき出しにして突進してきた。
「くそっ!」男がデバイスを地面に投げつけ、武器を構えた。
「逃げろ!」
拓真と亮太は迷う暇もなく走り出した。銃声と唸り声が、まるで改悪された世界の幕開けを告げているかのようだった。