「欲しい?」
穿いていたデニムの前をおもむろに広げてアンダーウエアをずらし、へたりと座り込んでこちらを見上げる彼の鼻先に硬くなったそれをつきつけると、俺の膨れ上がった欲望を凝視した彼の喉が小さくコクリと鳴った。かと思えば次の瞬間、湿った息を吐きながら躊躇いもせず唇を寄せてくる。ほんと、どうしようもないインランだ。
俺は腰を逸らし、ひょいと彼の唇をかわして、少しキツめの調子で言った。
「誰がくわえて良いって言ったの。ちゃんと答えて。欲しいの?」
「あ…」
逃げた俺の欲望を追うように、切ない声を上げながら顔を上げた彼の、潤んだ瞳が俺を見つめてくる。眉が下がって、少し戸惑うように目線を泳がせたあと、彼は吐息混じりに答えた。
「ほ、しい…欲しい。これ、ちょうだ…んっ」
と、彼が言い終わる前に、その赤くぷっくりした果物みたいな唇へ先端を押し付けてやると、一瞬驚いたように見開かれた瞳はすぐさまうっとりと蕩けて、そのはちみつを垂らしたガラス玉みたいな艷やかな黒目に俺の欲望しか映さなくなった。
彼は俺の硬くなったそれを、まるで壊れものを触るように小さな両手でそっと包み込むと、すぐさま大きく開けた口いっぱいに頬ばった。途端に温かくてぬるりとした感触に包まれ、俺は思わず息を詰めた。
本当に、おいしそうに舐めるんだ。こんなに夢中に、こんなに嬉しそうに舐められたら、悪い気なんてするはずがなかった。
彼の容姿が整っているということは、もはや周知の事実だった。その顔が今、歪むことも構わないで俺の欲望にむしゃぶりついている。荒くなった息をふーふーと鼻から出しながら、忙しなく動き回る舌と唇。細い指先もひどく落ち着きがない。待ちわび過ぎて、余裕がないみたいに。お腹が空いてたまらない時に、ようやく食べ物にありつけた獣みたいな彼を見下ろすのは、何だかとても扇情的な眺めだった。もっとも、獣というには彼は随分と可愛すぎるのだけれど。
「おいしい?」
「ん…っ」
「これ、好き?」
「んんっ、…すき! これ、っんぅ、らいすきっ」
口を休めることなく、だらだらよだれを垂らしながら頷く姿に堪らなくなってくる。思えばどうして俺たちは今、こんなことをしているのか。頭の中が熱くて思考もままならなかった。
「それなら、もっと奥までくわえて」
「んんぅ…」
小さな頭を両手で押さえて腰を使うと、苦しそうに眉を寄せた彼の瞳から涙が一筋こぼれ落ちた。彼の涙の粒は、この淫らな行為には似つかわしくないくらい、いつだって無条件で嘘みたいにきれいだった。ひどく倒錯的で、くらくらする。
「は、あ…イク、イクよ」
「ぅん…っ」
一気に駆け上がって弾けた熱を全て彼の口内へ注ぐと、きゅっと目を閉じて一生懸命受け止めてくれる。まだ硬度を保ったままの欲望をゆっくりと引き抜くと、彼はうっとり目を細めて、一滴も零さないように口の端を指先で拭いながら俺の熱を嚥下した。
「…阿部ちゃん、次は? どうして欲しいのか言ってみて?」
優しく顎をすくってこちらを向かせると、欲望の残滓を飲み込んだ喉が上下に波打つ。赤い舌を出して唇を舐めながら、満足そうな眼差しで彼はちいさく微笑んだ。
「…もっと、全部欲しい」
と、ねだる彼の妖艶な表情。痛いくらいの熱が再び集まってくるのを感じる。
ああ、胸の奥でゆらゆらと燃えるこの感情は、果たして愛情なのか、欲情なのか。
自分でもわからなくて、けれど考えるのも面倒で、俺はただ彼の細い肩を抱き締めてその小さな唇に噛みつく。嬉しそうに吐息を漏らす姿はどうしようもないくらい淫らなのに、同時にありえないくらい可愛くて愛らしい。
支配したくてたまらないのに、その実、完全に支配されている俺は、ただ彼の望みを全て叶えてあげようと夜通し熱を吐き出し続けるのだった。
コメント
6件
すごい文章✨ ありがとうございました。本当に文章お上手ですね。感動しました。
みちるさんのフォロー欄から飛んできました!! 言い回しどうやって思いついてるの!?ってくらい素敵で綺麗ですごすぎる😍一気に全部のお話読んじゃいました✨ フォロー失礼致します!!!🙇🏻♀️
はじめまして😊言い回しが本当に綺麗で大好きです🥺また作品楽しみにしてます。 フォロー失礼いたします!