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第1話 「目覚めの刻」
🚀 シーン1:目覚め
然(ぜん)は、冷たいコンクリートの床で目を覚ました。
頭が痛み、意識はまだぼんやりとしている。
視界がぼやける中、左腕に刻まれた碧色の模様が目に入った。
「……なんだ、これ……?」
ぼんやりと指でなぞる。その瞬間、頭の奥から言葉が浮かび上がる。
——碧族。
「よう、やっと目が覚めたか?」
軽い口調の声が響く。振り向くと、壁にもたれかかった青年がいた。
明るい青い瞳と無造作なくせ毛の黒髪、ラフな黒のジャケットにグレーのパーカー——ナヴィスだった。
「お前、助かったんだぞ。まぁ、皮肉な意味でだけどな」
ナヴィスはニヤリと笑いながら、然の肩を軽く叩く。
「……どういうことだ?」
「ま、簡単に言うと“保護”ってやつさ。お前はもう、普通の人間じゃない」
然は眉をひそめた。「……どういう意味だよ?」
ナヴィスは軽くため息をついて、指を一本立てる。
「いいか、落ち着いて聞けよ?
碧族ってのは、寿命を対価にフラクタルを操る存在だ。
お前の腕の模様、それが碧族になった証拠さ」
然はハッとしたように腕を見る。
「フラクタル……? 異能力みたいなもんか?」
「だいたい合ってる。が、それだけじゃない」
ナヴィスは然の腕に視線を向けた。
「碧族は、“ライフカード”を持ってる。つまり、寿命を数値化して管理できるんだ。
碧族はフラクタルを使うたびに寿命を消費する。逆に、他人を碧族にすれば寿命が増える」
「……つまり、俺はもう普通の人間じゃないってことか」
「そういうこった。ついでに、お前の名前も“然”じゃなくなるぜ?」
「……は?」
「碧族になった奴には、コードネームがつく。で、お前の名前は——」
ナヴィスは満足そうに頷いた。
「ゼイン。うん、悪くねぇな」
然は思わず顔をしかめた。
「勝手に決めるな。俺は然だ」
「いや、もうゼインだって」
ナヴィスは軽く肩をすくめると、ニヤリと笑う。
「まぁ、嫌なら好きに名乗れ。でも、お前が碧族である限り、そう呼ばれることに変わりはねぇよ?」
然は口を開きかけたが、その瞬間——
🚀 シーン2:逃亡の始まり
「侵入者発見!ヴェール・バインド部隊、制圧準備——」
警報音が鳴り響き、部屋中の赤いランプが点滅する。
「うわ、マジか。こんな時に来やがったか」
ナヴィスは舌打ちしながら壁の端末に手をかざし、ドアのロックを解除する。
「とりあえず、お前がどう思おうと関係ねぇ。今は逃げるぞ!」
「……クソッ、わかったよ!」
然は自分の腕を握りしめ、深く息を吸う。
まだ何も理解できていないが、生き延びるためには走るしかない。
ナヴィスと共に夜の街へ飛び出した然の瞳には、今までと違う“世界の色”が映っていた。
——この新たな命は、救いか、それとも呪いか?