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comi
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ばたっちゅ
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coco🌹🫶
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第七章 交わる運命
第六話 満月前夜④
ジオの腕の中で、サフィアンはぐったりしたまま動かなかった。
「……サフィ」
震える声。
返事はない。
額から流れた血が、頬を伝って床へ落ちていく。
「っ……」
ジオの呼吸が乱れる。
その様子を見て、クロードが静かに近付いた。
しゃがみ込み、サフィアンの傷を確認した瞬間、僅かに眉を寄せる。
「……深いな」
ラスタも隣へ来る。
「気絶しとるだけやったらええけど……」
床へ散った血を見て、表情を曇らせた。
その言葉に、ジオの顔色が変わる。
「嫌だ……」
掠れた声。
「サフィ……」
震える指が、そっとサフィアンの頬へ触れる。
冷たい。
その感覚が、胸を締め付けた。
ーー失いたくない。
この人だけは、絶対に……!
次の瞬間、ジオの黒い瞳の奥に、強い光が灯った。
淡い光が、手のひらから溢れ出す。
柔らかく、静かで、どこか月明かりに似た輝き。
それはゆっくりとサフィアンの傷口を包み込んでいく。
「……!?」
ラスタが目を見開いた。
「ちょ、えっ……」
裂けていた傷が、少しずつ閉じていく。
流れていた血が止まり、傷口が癒えていく。
まるで、夜空から落ちた月光に包まれるように。
クロードが息を呑む。
銀色の瞳が見開かれる。
「……月属性?」
低い呟き。
「本当に……存在していたのか」
伝承でしか知らない力。
失われたとされる、月の魔力。
その光が今、目の前にある。
けれど、ジオはそんな二人を見る余裕もなかった。
ただ必死に、ただ一人だけを見ていた。
「お願い……」
掠れる声。
「起きて……」
淡い光が、最後にふわりと瞬く。
すると、小さくサフィアンの指先が動いた。
「ん……」
ジオがはっと顔を上げる。
ゆっくりと、青い瞳が開く。
焦点の定まらない視線が最初に映したのは、泣きそうな顔の、ジオだった。
「……ジ…オ……」
掠れた声。
「無事……だったか……」
その瞬間、張り詰めていたものが一気に崩れる。
「っ……!」
ジオは強く、サフィアンへ抱きついた。
「サフィ……!」
声が震えている。
「良かった……!」
サフィアンはまだ状況を理解しきれていない顔で瞬きをした。
それから、ゆっくり腕を動かす。
そして安心させるように、そっとジオの背を抱き寄せた。
「……心配しすぎ……」
弱々しく笑う。
けれどその声を聞いた瞬間、ジオはさらに強く、サフィアンを抱きしめた。
その様子を、クロードとラスタはただ黙って見つめていた。
さっきまで、部屋中を覆うほどの瘴気を纏い、影を操り、教会の人間を退けた存在。
それなのに。
今目の前にいる青年は、ただ一人の大切な人が傷付いたことを、心から恐れていた。
そしてその青年を、何の迷いもなく受け止める男がいる。
ラスタが小さく息を吐く。
「……なんやこれ」
混乱したように笑う。
「全然、想像と違うんやけど……」
部屋の中は、 重たい沈黙が落ちていた。
壊れた扉。
砕け散った家具。
床へ残る黒い染み。
濃く漂う瘴気の残滓。
その中心で、ジオはサフィアンへ縋るように座り込んでいた。
クロードは静かにその様子を見つめ、 ラスタは困ったように頭を掻く。
「……とりあえず」
最初に口を開いたのは、 ラスタだった。
「俺ら、 敵ちゃうで?」
明るく言おうとしている。
けれど今の空気では、 その声も少しだけ震えていた。
ジオは何も答えなかった。
黒い大きな瞳が、 警戒するように二人を見る。
その背後では、 影がまだ不安定に揺れていた。
完全には、 落ち着いていない。
サフィアンがゆっくり身体を起こす。
まだ少しふらつきながらも、 ジオを安心させるように肩へ手を置いた。
「……大丈夫だ」
掠れた声。
「この二人、 さっき助けてくれたんだろ?」
ジオの指先が、 ぎゅっとサフィアンの服を掴む。
まだ怖い。
何が起きたのか、 自分でも理解できていない。
ただ、サフィアンが無事だったことだけが、 今のジオには全てだった。
その時、クロードが静かに口を開く。
「……お前は」
銀色の瞳が、 真っ直ぐジオを見る。
「……月蝕の子なのか」
空気が張り詰めた。
ジオの身体が、 ぴくりと強張る。
黒髪、黒眼。
闇を引き寄せる力。
目の前の存在は、 禁書『月蝕記』に記されたものと一致していた。
ジオは答えない。
ただ無意識に、 サフィアンへ身を寄せる。
その反応を見て、 ラスタが慌てて口を挟んだ。
「いやいや待って!」
「今それ聞くタイミングちゃうやろ!」
クロードが僅かに眉を寄せる。
「だが――」
「だが、ちゃうねん!」
ラスタは周囲を見る。
壊れた部屋。
漂う瘴気。
そして、未だ怯えたようにサフィアンを抱えるジオ。
「まず、 ここどうするん!?」
その瞬間だった。
廊下の向こうから、 慌ただしい足音が響く。
「おい!! 今の音、二階だ!!」
「瘴気反応があったぞ!」
「騎士団呼べ!!」
宿屋の主人らしき声。
客達のざわめき。
一気に現実が押し寄せる。
ラスタが顔を引きつらせた。
「……うわぁ……完全に大事になっとるやん」
サフィアンが低く言った。
「……一旦、 ここを離れた方がいいな」
クロードも静かに頷く。
「騎士団が来る」
その言葉に、ジオの肩が僅かに震える。
“騎士団”
その存在に、 また警戒が強くなる。
サフィアンはすぐに気付き、 そっと肩へ手を置いた。
「大丈夫」
低い声。
「オレがいる」
その言葉にジオは小さく息を飲む。
けれどまだ震える指は、 サフィアンの服を離さなかった。
ラスタは床へ散った荷物を拾い始める。
「……あとでちゃんと弁償せなあかんなぁ」
「そこか」
クロードが呆れたように言う。
「いや大事やろ」
そう言いながら、 ラスタは急いで荷物をまとめる。
ジオも立ち上がる。
けれど、身体がまだ思うように動かない。
ふらりと揺れた瞬間。
クロードが咄嗟に腕を支えた。
「……!」
ジオの身体が強張る。
クロードはすぐに手を離した。
「悪い」
短く言う。
そして
「無理をするな」
それだけ告げた。
ジオは僅かに目を見開く。
その言葉の意味を、 まだ測れない。
敵なのか、味方なのか。
分からない。
ただ少なくとも今、この二人は自分を傷付けるためにいるわけではない。
そんな感覚だけが残った。
外の足音が近付いてくる。
「こっちだ!!」
「二階だぞ!!」
ラスタが急かすように手を振る。
「急ぐで!」
サフィアンへ肩を貸す。
ジオは荷物を抱える。
そして四人は、騒然とする宿屋を抜け、 夜の帝都へ足を踏み出した。
コメント
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ああっ、ジオが月属性の力を覚醒させたシーン、すごく熱かったです…!「お願い…起きて…」って震える声で言うところ、もう胸がぎゅっとなりました。それまで闇と影を操る存在だったのに、サフィアンの前ではただの「失いたくない」って思う一人の青年なんだなって。そしてラスタの「なんやこれ…全然想像と違うんやけど」に、思わず笑っちゃいました。その気持ち、分かるよラスタ…!