寵愛狼男

ロシア軍がEU軍を壊滅させ、領土の一部を支配下に置く中、遠くアメリカでは政府が緊急会議を開いていた。アメリカ政府の最高指導者であるダグラス大統領は、テレビ会議で部下たちと情報を共有している。

「ロシアがEUを屈服させた。許されざる事態だ。」大統領は冷徹な口調で言った。

「ライカントロピー計画が進行中だ。ロシアが手に入れた薬は、兵器の開発を加速させる恐れがある。我々はそれを許さない。」

ジャクソン・リード、アメリカ陸軍の指揮官は無線で続ける。

「大統領、薬を手に入れなければ軍事均衡が完全に崩壊します。ロシアがその力を持つことになれば、世界の覇権は揺るぎます。」

「その通りだ。」大統領は頷いた。「だが、ロシアに介入するのは危険だ。EU敗北後、ロシアは余裕を持っている。そこで……」

大統領は一時的に言葉を止め、スクリーン上に表示された地図を指差す。

「アメリカは、ロシアと直接するのではなく、欧州の別戦線で行う。シベリアを制圧し、計画の核心を突くのだ。」

アメリカの軍は、すでにシベリアに向けて兵力を送り出していた。ジャクソン・リード将軍は、その指揮を執り、部隊を統率していた。シベリアは広大で、制圧が難しいが、アメリカはあらゆる手段を使って突入を試みた。

「シベリアを制圧し計画の施設を占拠する。全軍、準備を整えろ。」ジャクソンの命令により、アメリカ軍の特殊部隊が深夜、ロシアの最前線基地に突入を果たす。

だが、ロシア軍も黙っているわけではなかった。アメリカが進軍する中、ロシアのアレクセイ将軍はすぐさま対応策を講じていた。

「アメリカ軍が進攻したか。だが、俺たちにはこれがある。」ザイツェフ将軍は冷徹な笑みを浮かべると、部隊に指示を出した。

「アメリカ軍がここに来る前に、全力で迎え撃て。」

一方、拓真と亮太はアメリカ軍の動きに気づき、再びその力を使う準備をしていた。

「アメリカが動き出したな。」拓真が沈黙を破る。

「シベリアを抑えられれば、ライカントロピー計画は阻止できるかもしれない。」

「でも、アメリカも簡単に倒せる相手じゃない。」亮太が冷や汗をかきながら言う。「あいつら、全力で来るぞ。」

「その通りだ。だから、俺たちもその隙をつかないと。」拓真は地図を見ながら、次の行動を考えていた。「アメリカの後ろに潜んでいる中国と、ロシアも動きが出てくる。状況を読みながら、あの薬を手に入れる。」

アメリカ軍はシベリアの中心部に向けて着実に進軍していたが、ロシア軍の反攻が激しさを増していった。

「シベリアの奥地に設置された施設を破壊するんだ！」ジャクソン将軍は兵士たちに指示を飛ばしながら、施設への突入を試みる。

だが、ロシア軍の特殊部隊はそれを見越していた。戦闘機がアメリカの進軍を妨害し、地上部隊は激しい抵抗を見せる。ロシア軍の機動力と精度は、想像以上のもので、アメリカ軍は一時的に後退を余儀なくされる。