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銀の刃と獣の爪が何度もぶつかり、火花が散った。夜の森は、金属音と唸り声で満たされる。
〔クソっ……!〕
健は息を荒げながら男を押し返すが、銀の匂いが鼻をつき、頭の奥がじりじりと焼けるように痛む。
視界が赤く染まり、耳鳴りが増していく。
(……やばい、あかん。抑えきれん)
「健!」
紗羅の声が届く……
はずなのに、健の耳には遠く、掠れた音にしか聞こえなかった。
次の瞬間、健の動きが変わった。
狩人への攻撃が止まり、代わりにゆっくりと振り返る。
その金色の瞳が、まっすぐに紗羅を射抜いた。
『……紗羅……』
低く湿った声。
口元からは獣の牙がのぞき、呼吸が荒くなっていく。
狩人が短く叫んだ。
〔離れろ!今のアイツは……〕
だが、紗羅は後退しなかった。
「やめて、健……!私だよ!」
健の爪が、ほんの数センチのところで止まった。
その間に、狩人が再び銀の刃を振り上げ……
〔……やめろ!〕
健が咆哮し、狩人を弾き飛ばした。
しかしその反動で、自分の中の獣が完全に暴れだす感覚が走る。
(……もう、もたへん……)
健はその場に膝をつき、苦しげに頭を抱えた。
月の光がさらに強く降り注ぎ、影が揺れる……。