テラーノベル
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『次は岩本さんの好きな人のタイプをお聞きしてもいいでしょうか?』
『好きな人…、…ん…思いやりがあって、人一倍優しくて…一緒にいて一番ホッと出来る人ですね。あ、後しっかりしてるのにちょっとおっちょこなとこ。可愛いくて、守りたくなるっていうか』
「…………」
結構長いインタビューページの数行を指先でなぞりつつ、阿部は紙面に向かって盛大な溜息を吐く。何度も繰り返し、たまに斜め上から読んでみても、これは間違いなく。
「~…俺なんだよなぁ」
力なく到った解を呟き、雑誌をテーブルへ放って顔を両手で覆う。そこはまるで熱発しているかのように熱かった。足をジタバタさせても、体に篭った気恥しさは散ってくれそうにない。
そこへ家主である岩本が洗いたての髪を拭きながら通りがかり、不思議そうに問い掛ける。
「…なに一人で暴れてんの?」
なんて呑気に恥ずかしめた張本人が聞いて来るもんだから、阿部は掌をグーにして勢いよく仰ぎ見た。
「これっ!雑誌!インタビューっ!!」
「あー…まだ見てたんだ。だからそれ、阿部の事だって言ってるだろ」
「それは分かったっ!なんで文字で残るインタビューで言ったのかが分かんないの!」
「だって…つい、ポロッと出ちゃったから…。雑誌だったって気付いたの、数日経ってからだったし」
「そうだとしてもさ、この言い方じゃ照に特定の人がいるみたいじゃない。何とか止められなかったの?」
「…止めないでって、俺がマネさんに頼んだんだよ」
「は……っ?」
意想外な返答に眉間に巻いたコイルを思わず解き、素っ頓狂な声を上げて岩本を凝視する。刺さって来る眼差しを頬で受けながら隣へ腰を落とし、手にしたペットボトルを呷って続きを紡ぐ。
「俺の好きな人は阿部で。好みのタイプ聞かれた時、阿部以外思い浮かばなかったから。…自分に嘘、吐きたくないじゃん」
「…照のファン、悲しませても?」
「ファンだったら尚更、嘘聞きたくないんじゃない。俺に特定の人がいるって事も含めて、さ」
「俺達、アイドルなんだけど」
「…阿部への恋心、我慢しなきゃ駄目?」
「そうは言わないよ。我慢されたら…~俺が、ヤだし」
照れのない真剣な言葉達を聞くうちに阿部の瞳も心も和らぎ、グーはいつの間にか開いて横のスウェットパンツを引っ張っていた。
そんな可愛らしさを見逃す訳がなく、岩本は上半身を捻って唇を掠め奪う。
「…可愛い」
「嬉し…、照も可愛いよ」
ちゅ。啄んで返し、阿部が笑みの花を咲かせる。
「かわっ~…俺が??」
「駄目?って言った時の照、しょんぼりしたワンコみたいで可愛かった」
「~どこがだよ。あ、あれか、ワンコって言ってもレトリバー系の」
「あぁ、確かに照はレトリバーだな。目が優しくて可愛いよね」
「阿部が絶対譲らないマンになったー、面倒くせー」
「こぉら!可愛い認めろってのにっ」
「ぷっ…くくっ。認めてもいいけどさ、可愛い世界一は阿部だってのも認めてよ」
「~…せ、世界一ぃ!?」
「俺の中でね。悪いけど譲る気一切ない」
「も~う…二人して譲らないマンになってどうすんのさ」
「あははっ。いいじゃん、ラブラブで」
「これ、ラブラブっていう?」
「お互いが一番可愛いって思ってるんだろ?どうしようもなくラブラブじゃん」
「……~う、うん。そ…だね」
「照れた顔、さいっこうに可愛い…ん、んっ」
「わっ…!んふふっ、くしゅぐったいってば」
唇を吸い上げ、離す。ぷるん…と揺れる厚みのあるそれを舐め上げたのを皮切りに、阿部の頬へ、おでこへ、鼻先へ、岩本は次々にキスの雨を降らせていく。
こしょばゆそうに笑っていた阿部だったが、矛先が首筋へ及ぶとそうは行かない。チリ、と肌が焼ける錯覚を覚え、慌てて自分の倍はありそうな胸板を押し返す。
「ちょ…ちょっと、ストップ!もしかして…やっ、やっ…やる…の?」
「そのつもり、だったけど、…気分じゃない?」
そう小声で言いしょんぼりする岩本は、立派な心優しいレトリバーで。
阿部の胸が甘くきゅー…んって疼き、気付いたら未だ湿った髪をわしゃわしゃ撫で回していた。
「気分じゃないじゃなくて…~此処でが恥ずかしい…かも。…明るいし」
「あ…そう、だな。恥ずかしがり屋さんだもんな、阿部は。じゃ…ベッド、行く?」
「は、はい。行きましゅ…~~ヤダ、噛んじゃったぁ!」
「はあぁ~…お前さ、俺萌え死にさせる気?」
「するかっ!照いなくなったら俺、生きて行けないもん」
十中八九天然なのだが、仕留めに掛かっているとしか思えない言動の連発に辛抱堪らず、岩本は阿部の手甲へ掌を重ねてニギニギする。
「…俺もね、阿部一人残してあの世へ行きたくないからさ。可愛いのちょっとだけ自重しよっか」
「わざとやってるんじゃないのにぃ…。でも、うん。ずっと照と一緒にいたいから、頑張ってみるね」
真っ直ぐな目も、眩しい笑顔も、岩本だけに向けられている。今までも、これからも。
阿部もまた同じ想いを胸に抱き、岩本の指へ指を絡ませて引き寄せた。
160
#三角関係
霞花怜
388
かんな
2,919
うお
16
手を取り合い、見詰め合う二人は。
初めての時のような、初々しい口付けを交わした。
「……何時かさ。何時か…俺の大切な人は阿部亮平さんですって、胸を張って言うよ」
「えっ…?」
「その前に、阿部に相談するけどね」
「ふふ…頼んだよ。何時かが来たら、俺も隣に並んで記者会見するから」
「ふはっ~…前代未聞じゃん。みんな腰抜かすんじゃない?」
「でもメンバーは、案外冷静に祝福してくれそう」
「あー、だな。ふっかと舘さん、もう気付いてるし」
「……初耳、ですが?」
「だから、あのインタビュー読んで。阿部の事だよね?って言われ……あれ、阿部? 」
「あ…明日、仕事で舘さまに会うのに…っ!どんな顔して会えばいいんだよ!?」
「いっ?あっ…~な、なんかごめん!」
「ごめんじゃ済まないっ!どうすればいいか照も考えてっ」
「は?今ぁ!?」
「い・ま。会うの明日なの。舘さま勘鋭いんだから…コーヒー、淹れてくるね」
握り合った手をさっと離し、スタスタキッチンへ向かう阿部の背中を眺めながら、ちょい固くなった股間を押さえて岩本は心の中でさめざめ泣いた。
コメント
1件
いやあ、もう…冒頭のインタビュー記事を読み返してる阿部くんの姿に一気に引き込まれたよ。「俺なんだよなぁ」からの足ジタバタ、最高に可愛い(笑)岩本くんが「ついポロッと出ちゃった」って言うのも、でも実はマネージャーさんに頼んで載せてもらったってオチに「ああ、そう来たか!」って膝打った。二人で「可愛い世界一はこっち」って譲らないマンになってるところ、じんわり温かい空気が伝わってきて、すごく好きな雰囲気だった。最後の舘さまの話で阿部くんが慌ててお茶を淹れに行く流れも、日常と密やかな恋がちゃんと地続きな感じがして良かったです。続き、気になるなあ…!