コメント
1件
「俺が年上なんだし、ちゃんとリードしてあげないと……」
付き合って数ヶ月。
最初こそお互い探り探りで過ごしていたが、今ではすっかり馴染んで、自然に手を繋いだり、キスをしたりできるようになった。
ただ、それ以上のこととなると話は別だ。
お互いに男と付き合うのは初めてだからこそ、何も知らずに進めるのは不安だったから最近こっそりと調べるようになった。
やり方を、動画や記事で確認し、イメージトレーニングをしたり、自分なりに完璧なシナリオを組み立て、どうすればスムーズに進められるか、どんな言葉をかければ照をリラックスさせられるか、何度もシミュレーションした。
早くに仕事が終わった日、今日こそはと決意して部屋に照を呼んだ。
緊張しながらも、自然な流れを装って照をソファに座らせる。
「照、ちょっとこっち来て」
「うん?」
照が素直に近づいてくる。
心の中で何度もシミュレーションした通り、まずは軽く肩に手を回して――
「……え?」
次の瞬間、視界がぐるりと反転し、ふわりとソファのクッションに沈み込む。
「ちょ、待っ……」
言葉を発する間もなく、照が覆い被さってくる。
「ふっか、今日さ、ちょっと様子変だったよね?」
至近距離で囁かれ、ドキッとする。
照の視線が真っ直ぐで、逃げられない。
「え、あ、いや、そんなこと……」
慌てて誤魔化そうとするが、照は余裕の笑みを浮かべている。
「色々調べてたんでしょ」
図星を突かれ、息を呑む。
「、それは……」
言葉が詰まる。
準備してきた知識や流れはすべて吹き飛び、代わりに頭が真っ白になった。
「無理しなくていいのに」
照の手が頬に添えられ、指先がそっと撫でるように動く。
「まぁ、ふっからしくてかわいいけど」
照が余裕そうな笑みを浮かべた。
「してもいい?」
低く甘い声が耳元に落ちる。
――ずるい。
そう思った瞬間、力が抜けた。
思い描いていた展開とはまるで違う。でも、不思議と嫌じゃない。
「……照、ずるい」
小さく呟いた声が震えていたのは、悔しさのせいか、それとも別の感情のせいか。
「俺に任せて?」
そう言うと、照は俺の手をそっと握り、指を絡める。
唇が触れた瞬間、もう何も考えられなくなった。
唇を何度も優しく吸い上げるようなキス。
深く、甘く、そして余裕たっぷりにリードされる。
「ん……っ、ひかる……」
照の舌がそっと触れるたびに、体が熱くなっていく。
「ふっか、力抜いて」
囁かれると、自然と肩の力が抜けた。
その隙を狙うように、照の舌が口内に入り込む。
「んっ……んぅ……」
逃げ場のないキスに、思考がどんどん奪われていく。
「かわいい」
息を継ぐ間に囁かれ、頬が熱くなる。
唇が離れるたび、また触れ合う。何度も、何度も。
「……ほんと、ずるい」
けれど、その抗議も甘く蕩けるキスで遮られる。
触れ合う唇が、甘く、熱を持っていた。