ある日、会長オフィスに鈴子が入って行くと、彼は珍しく憂鬱な表情で鈴子に尋ねた
「ゴルフ場で話していた資金提供の件だが・・・動きが見えないんだ、君はどう思う?」
鈴子は定正のデスクに熱いブラック・コーヒーを置き、落ち着いた声で答えた
「斎藤貿易さんの補佐チームが、経営管理の組織固めを進めています、適任の候補者がリストアップされ、慎重に検討されているようです、今年中には本格始動する予定だと聞きましたので、会長のあの場のご判断が後押しをしているのは間違いありません」
定正は目を丸くして鈴子をじっと見つめた
「・・・どこでその情報を?」
鈴子はニッコリ微笑んで答えた
「先週、斎藤貿易さんの秘書とゴルフに行きました」
一瞬の静寂の後、定正は声を上げて笑った
「なんと!君は素晴らしい!」
ゴルフ場の秘密の交渉・・・それが壮大な起業家のマネーゲームの誘いだという事を深く理解した鈴子が、定正の期待を超え、彼女は自ら情報を掴み、彼のビジネスを有利に導く一手を打ったのだ
さらに鈴子は丁寧にもう一つ交渉を進めた
「1時からの電話会談がキャンセルになりました・・・夕食をご自宅で召し上がるまでには十分の時間があります・・・今から私とランチをご一緒していただけませんか?もっと良いお話が私から出てくかもしれません」
鈴子はじっと定正を見つめた・・・定正も鈴子をじっと見つめていた、鈴子はもう一押しした
「ディナーがダメなら、ランチはいかがですか?」
彼から発散される大人の男の色気とエネルギーには相手を呑み込む不思議な魔力があった、自分はただの秘書ではない・・・あなたを手助けする大事な存在なのだ・・・それをわかって欲しくて目で必死で訴えた
ドキドキ・・・
―静まれ!心臓・・・―
やがて彼が瞳をキラキラさせて言った
フフッ「だんだん君に逆らえなくなってきてるのは気のせいなのかな?」
今度は断られなかった
鈴子は心の中でガッツポーズをした
・:.。.・:.。.
ランチを定正と食べた日の夜・・・鈴子は不思議な夢を見た
鈴子が幼い頃、彼女の幸せは父親の隆二の傍にあった
ハンサムで朗らかに笑う父・・・そんな父親によく鈴子は両手を広げて走り寄っては抱き着いて顔を埋めた、小さな鈴子の顔は父親の腰のあたりにしか届かない、そんな鈴子を父が軽く抱き上げてくれると一気に視界が晴れやかになる
両手を首に回して大人の男性の匂いを嗅ぐ、労働をした父の汗の匂いと入り混じって、性の目覚めには程遠い少女の本能をくすぐる・・・
―パパが大好き・・・大好き・・・―
鈴子は切ないぐらい、父に抱き着いて胸を高鳴らせていた頃と、今日定正とランチを食べていた自分とを重ねた
そして父親に抱かれている夢からいつの間にか定正と絡み合っている夢に変わっていった
鈴子の上に乗った定正が、優しく耳元で囁く・・・なぜか彼の声は父親の隆二に取り代わっていた
―お前はなんて可愛いんだ・・・愛しているよ・・・―
やがて、定正が鈴子の中に挿入ってきた、鈴子はとろけた、ハッと彼女が目を覚ましたのは、汗びっしょりで、自分の甘い呻き声を出していたからだった
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