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侑は両親の仕事の関係で、オーストリアのウィーンで産声を上げた。
父は世界的マエストロ、響野 弦、母はソプラノ歌手の響野 エリカ。
そんな両親の元で育った侑の周りには常に音楽が溢れ、ウィーンの自宅マンションには様々な国の演奏家が遊びに来る事もあり、侑は母国語の日本語を始め、英語、オーストリアの公用語でもあるドイツ語を話せるまでになった。
彼が七歳になる年、『小学校と中学校の義務教育は日本で受けさせたい。日本人の友人がいた方が侑のためになる』という両親の方針で、一家は東京都の日野市へ移住した。
ここで侑は、現在も連絡を取り合う仲になっている双子の兄弟と出会いを果たす。
小学校と中学校まで同じ学校だった侑と彼らは、よくつるんでいた。
彼らの家業が、日本国内最大手の楽器メーカーであり、音楽関係という事で家族ぐるみの付き合いとなる。
小学校三年生の頃、父と一緒に聴きに行った著名なトランペット奏者のソロコンサートに衝撃を受け、『僕も吹いてみたい!』と初めて父に意思を告げると、『せっかくだから挑戦してみるか?』と聞かれ、数日後には父が、双子の父に楽器購入の相談をした。
『小学三年生だと、ひょっとしたらトランペットだと楽器が長いから構えるのが大変かもしれない。トランペットに似ていて、小ぶりで丸みを帯びたコルネットの方がしっくり来るかもしれません。何なら、一度来店しませんか?』
双子の友人の父でもある楽器メーカーの社長に提案され、侑と父の弦は銀座の旗艦店まで赴き、トランペットとコルネットを手にしてみた。
コルネットは一般的なトランペットと音域が同じではあるが、音色がトランペットよりも柔らかく、コルネットの祖先は角笛やカタツムリに似た楽器のホルンと言われている。
小学校三年生の侑は、どちらかというと身体が細く身長も低めで、侑がトランペットとコルネットの両方を構える姿を見た父が、『体格的にもコルネットの方がいいな』という事で、まずはコルネットの入門用モデルを購入。
楽器購入から一週間後、父の知り合いでもあり、日本最高峰の交響楽団、JHK交響楽団のトランペット奏者に侑のレッスンを依頼し、これ以降、侑は師事する事となる。
小学校卒業時、侑の身長も伸び、体型も男性らしくなってきた事をきっかけに、トランペットに買い替えた。
これがトランペット奏者、響野侑の始まりとなった。